亜細亜の街角
ミナミコメツキガニの大群は宇宙生物のようだ
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10月3日は台風23号の影響が出てくる

フィリッピン東海上で発生した台風23号は10月2日,3日,4日と低速度で北上しつつあった。この時期,太平洋高気圧は西日本に広く張り出していたたため,台風はその縁を回るように5日から西に進路を変えようとしていた。

3日の時点ではまだ八重山は台風の中心から750kmほど離れていたが,風は強く黒い雲が上空を通過していく不穏な天候であった。東京で考えると高知の室戸岬あたりに台風がある状況である。沖縄では山に遮られることがないためこれほど離れていても風の影響はもろに受けるようだ。

台風が毎年接近する沖縄では家屋の風対策が必要不可欠であり,その結果,石垣と防風林で囲まれた伝統的な平屋建ての家屋が生まれた。屋根の形状,庇までの高さも風を上手に受け流すための工夫が込められている。

今日は船浦湾方面を歩くことにする

天気は芳しくないものの滞在時間は限られているので今日は船浦湾方面を歩くことにする。10月3日の干潮時刻は12時であり,これは船浦湾で「ミナミコメツキガニ」を見るためには重要な情報である。

というのはミナミコメツキガニは採餌のため引き潮の水際を集団で移動する性質をもっているからだ。完全に水の引いた干潟や水に覆われた干潟ではこの集団移動は見ることができない。

さてさて,今日はミナミコメツキガニに出会うことができるだろうか。船浦湾の奥までは3kmほどの道のりなので08時30分に宿を出る。途中で船浦集落周辺の目に付いたものを写真にする。船浦中学校の入り口のシーサーは愛嬌がある。船浦集落には何軒かの喫茶店があるが,すでにシーズンオフのようだ。オンシーズンでも船浦に立ち寄る人はそう多くはないだろう。

船浦湾はとても広い

船浦港はかって旅客船で使用されていた。港は大きな港湾だけが残されており,現在も工事が行われている。広大な湾の奥のところは湾を横切るように海中道路が走っている。もちろん,この道路は湾を締め切っているわけではなく,一部は橋になっており,その区間で湾の奥は外海とつながっている。

船浦湾は広いので海中道路の取り付き部まで行くのにさらに15分ほどがかかる。途中には「船浦ニッパヤシ保護区」の看板はあるものの,その周辺にはニッパヤシは生えていない。近くには池があるので,ここに移植しようと考えているのかもしれない。ニッパヤシの北限は八重山であり,その意味では貴重な植物である。

海中道路に向かう護岸

ヤエヤマクマゼミであろうか

海中道路は船浦湾を横断している

海中道路は船浦湾を横断する1kmほどの道路である。湾の最奥部はマングローブなどの原生林となっており,その環境に影響しないように水深の浅いところに盛り土をして道路を通したものである。もちろん,湾を締め切るのではなく中央部は橋構造にして海水が出入りできるようになっている。これにより,海中道路で仕切られたような湾の最奥部も工事前の環境が保全されている。

海中道路から見ると海中道路に接している湾の奥側部分は干潟となり,ミナミコメツキガニが波打ち際に集結する光景を見ることができる。もっともこのことに気が付いたのは海中道路を半分ほど渡ったときであった。

海中道路から湾の陸側に下りることができる

海中道路のところどころには階段があり,干潟に下りることができる。写真の撮影時刻は10時であり,だいぶ潮が引いている。

ヤエヤマヒルギが迎えてくれる

海中道路の取り付け部から干潟に下りると若いヤエヤマヒルギが出迎えてくれる。このあたりはクツをはいたまま歩くことができる。

水の向こうにマングローブ林が広がる

干潟は水路により分断されており,向こう側にはマングローブの立派な林がある。この水路は右側から流れ込むヒナイ川によるもので,干潮になっても一筋の水路は海辺まで続いている。これがなければ歩いて対岸のマングローブ林に行くことができる。

潮が引いてきたものの川が阻んでいる

裸足になってマングローブ林に向かう

僕は島を歩くためちゃんとしたクツをはいていたので,手前の砂地のところに靴を残し,裸足でズボンのすそをまくってヒナイ川を渡りマングローブ林に向かう。ちょっと足の裏がチクチクするところもあるが,裸足で歩き回ってもまったく問題はない。

特異な根が樹木を支える

成長したヤエヤマヒルギ

ヒルギダマシ

小さなテリトリーを主張しているのはヒルギダマシである。樹木の周辺に多数の気根を干潟から伸ばしている。この気根は他のヒルギ類が入り込まないようにする役割も果たしている。

キバウミニナ

キバウミニナ(Terebralia palustris,吸腔目・キバウミニナ科)はマングローブでよく見られる巻貝であり,インド洋・太平洋の熱帯海域のマングローブに広く生息している。日本における自然生息域は西表島および小浜島と考えられている(石垣島,沖縄本島でも確認されている)。

キバウミニナはマングローブの林床となる泥干潟の上を這い回り,樹木の落葉を直接摂食する。キバウミニナは名前の通り歯舌は鋭く刃物のようであり,硬いマングローブの落葉を効率よく噛み切って摂食する。切断されたマングローブの葉から出る物質に誘引され,たくさんのキバウミニナが集まる習性もある。

キバウミニナは腐食しづらいマングローブの落ち葉を効率よく分解して海の栄養に転換する重要な役割を果たしている。日本では絶滅危惧種に指定されており,この貝を守るためにはマングローブそのものを保全する必要がある。

オヒルギの地中の根はこのようになっている

オヒルギ(右)とヤエヤマヒルギ(左)

ヤエヤマヒルギ(手前)とオヒルギ(後方)

マングローブ林には裸足では入れない

メヒルギであろう

10:30|だいぶ潮が引いてきた

オヒルギの花

オヒルギの胎生種子

干潟にこの状態で横たわっていた。赤い顎ごと親木から離れたようだ。細い先端部を近くの干潟に押し込んでおいたので,何年後かには僕のマングローブが若木となっていることだろう。

キバウミニナの殻に入ったヤドカリ

キバウミニナの大きな殻にヤドカリが入っていた。ヤドカリも自分の成長に合わせた大きさの貝殻が必要になるのであろう。オカヤドカリを除くと,このヤドカリは僕が沖縄で見た中では最大級である。

おそらくシレナシジミ

ミナミコメツキガニを探して潮が引いた干潟を歩いてみたがさっぱり見つからなかった。代わりに大きな二枚貝が見つかった。色はずいぶん薄いが「シレナシジミ」であろう。普通のシジミに比べてずいぶん大きく,手のひらは2個でいっぱいになる。最大のものは10cmになるという。ネット上には殻を開いた写真が掲載されており,それを見ると貝殻に比して身はずいぶん小さいようだ。

10:50|潮が引くとカニの一面の生活痕が現れる

干潟の上の丸い模様はミナミコメツキガニが泥の中にもぐったときにできる痕跡である。生活痕の多さからおそらく膨大なミナミコメツキガニがこのあたりに生息しているはずだ。

ミナミコメツキガニ

手にはカメラをもっているので塩水には触れたくない。足で生活痕のあたりを探ってみるといくらでもミナミコメツキカニが出てくる。掘り出されるとわずかな間は足を体に付けて防御の体勢をとるが,すぐに泥にもぐる。その素早さはまるで忍者のようだ。カニがもぐった後には丸い痕跡が残される。

ミナミコメツキガニ(ミナミコメツキガニ科・ミナミコメツキガニ属)は甲羅幅は10mmほどであり,生きているときは甲羅部分が青灰色をしている。種子島以南の南西諸島から台湾,香港,フィリピンまで分布している。

河口域に広がる軟らかい泥干潟に生息し,マングローブの海側の泥地は特に数が多い。球形の体を足で持ち上げたような高い姿勢で横ではなく前に歩く変わり者である。名前の似ているコメツキガニはスナガニの仲間であり,巣穴を作りその周囲で採餌し小さな砂団子を残す。

ミナミコメツキガニの最大の特徴は巣穴をもたず,潮の満ち引きに合わせ水際を集団で移動しながら採餌することである。この集団行動から英語名は「Soldier crab」であり,和名でも「グンタイガニ」と呼ばれることがある。

餌は砂泥中のデトリタスやプランクトンなどであり,歩きながら砂泥を鋏脚でつまんで口に運び,その中の餌をこしとって食べ,砂を球状にして足下へ捨てる動作を繰り返す。この採餌方法はスナガニの仲間と類似している。ただし,スナガニは巣穴の周辺のみで採餌するので砂団子はまとまって残される。

天敵はサギ,シギ,チドリなどの鳥類やフエダイ,オオウナギなどの魚類,アシハラガニやベニツケガニなどの大型のカニなどであり,敵が来ると一瞬で足下の砂泥の中へ潜りこむ特技で身を守っている。潮が満ちてくると近くの泥の中にもぐり,次に潮が引くまで砂泥の中で過ごす。

死んだミナミコメツキガニに群がる

引き潮の最前線に集まる

ミナミコメツキガニはたくさんいるのにその集団は見つからない。これは探し方が悪かったからのようだ。もうカニの食事時間は終わったのかなとあきらめかけていたとき,湾の中央部が少し色が変わっているのに気が付いた。

望遠レンズで確認し,ようやくミナミコメツキガニの集団であることが分かった。距離はまだ30mほどもあるので慎重に近づいてみる。しかし,3mくらいが接近限界であり,カニは砂の中にもぐってしまい,あっという間に消えてしまう。

ようやく自然な姿が撮れた

後で宿の人に聞くと,いったんもぐっても人がじっとしていると再び這い出してくるのでそこを撮影するのだと教えてくれた。しかし,その方法では大きな集団は撮影することはできない。200mmの望遠レンズを使用して集団を撮影することにする。

少し離れたところから集団の様子を観察していると足元から何匹ものカニが這い出してきた。こんなときは裸足の方がずっと具合はよい。カニを驚かせないようにして,慎重に足元を撮影する。これでようやく自然な姿のミナミコメツキガニを撮ることができた。

次の瞬間にはこうなる

しかし,ミナミコメツキガニの警戒心は強い。大きな集団の方にゆっくりと動き出すと足元の集団は痕跡だけを残して泥の中にもぐってしまう。泥にもぐるときは片側の足を使ってスクリュー状に体を回転させながら入いっていく。その間は2秒足らずである。この技が無いと天敵からは逃れられない。もっとももぐる深さは自分の身体が泥に隠れる程度なので,人間は簡単に掘り出すことができる。

そっと大群の方に近づく

泥の中からカニが湧き出してくる

狙いをつけた集団を驚かせないようにゆっくりと歩を進めると,再び少し前方にカニが湧き出してきた。泥の中から現れるというよりは湧き出すという方が適切な表現である。カニたちは小さな集団を作り,どんどん先に進んでいき,しだいに大きな集団を形成する。

みんな同じ方向に歩き出す

集団が大きくなる

人の気配を察知すると1-2秒で泥の中にもぐる

4m位のところまでしか近づけない

ようやく大きな集団から4mくらいのところまで近づくことができた。カニとは思えない姿でゆっくりと集団で移動している。動く速度はスナガニに比べるとはるかにゆっくりであり,これでは泥にすばやくもぐる以外に天敵から逃れることはできない。

ひたすら大きな集団を作る習性がある

引き潮とともにどんどん移動していく

12:10|大満足のミナミコメツキガニ観察であった

西表島ではぜひ見たいと思っていたミナミコメツキガニの大集団を見ることができて大満足の船浦湾であった。クツの置いてある干潟に戻り,川の水で砂を落とし,乾かしてから靴下とクツをはく。次の目標は大見樹(おおみじぇ)なので海中道路に上がり大原方向に歩き出す。

海中道路の下にも集団がいた

海中道路を歩いているとすぐ下の干潟にもミナミコメツキガニの大きな集団がいることに気が付いた。途中の石段を降り,再び集団を撮影する。船浦湾中央のものに比べると,こちらの集団はなんとなく警戒心が薄いように見受けられた。それは,比較的簡単に大きな集団の撮影ができたからなのかもしれない。

ここの集団は観察しやすい

こちらに向かってくるものもいる

西表島の橋にはプレートが付いている

西表島を2/3周する海岸道路はたくさんの川を横断することになる。川ごとに橋が架けられ,それぞれの橋の両側には名前を刻んだプレートが置かれている。船浦湾にかかる橋は船浦橋となっていた。プレートに刻まれたシンボルは「カンムリワシ」である。

あの岬のところまで歩くことにする

オオバイヌビワ

沖縄にはイチジクの仲間の植物がたくさんあり識別に苦労する。その中でオオバイヌビワ(Ficus septica,クワ科)は大きなつやのある葉とカボチャのような果嚢というポイントがあるので比較的分かりやすい。

オオタニワタリは着生植物

オオタニワタリはチャセンシダ属(Asplenium)を代表する着生のシダ植物である。属名となっているアスプレニウムは約700種が知られており,熱帯を中心に寒帯まで分布している。

オオタニワタリ (Asplenium antiquum Makino)は日本南部から台湾にかけて分布しており,八重山ではシマオオタニワタリあるいはヤエヤマオオタニワタリという近縁種があり,識別は困難なのでオオタニワタリで代表してもらうことにする。

着生シダは森林内の樹木の幹あるいは枝に付着して成長する。着生シダは成育場所を借りているだけで成長に必要な水と栄養素は自分で産生するので寄生植物とは異なる。

葉は茎の先端に集中して放射状に配列され,斜め上に伸びるので全体としては大きなお猪口のような形状となる。茎の側面はたくさんの根が出て黒褐色のふわふわしたスポンジ状の固まりとなる。このお猪口の中に落ち葉などを集め腐葉土にする。これを養分として着生シダは大きな塊を形成し,その鮮やかな緑の葉によりよく目立つ存在となる。

ナダラ川の河口|陸側

海中道路から歩いて行くと伊武田崎の手前にナダラ川がある。google map にはこのような小さな川の名前は記載されていないが,川に架かる橋には表示があるのでそれと分かる。こここまで来ると伊武田崎の先端がずいぶん近くに感じられる。

ナダラ川の河口|海側

オキナワキョウチクトウ

この時点では「オキナワキョウチクトウ」の毒性についての知識は持っていなかった。パッションフルーツあるいはマンゴーに似た食べられそうな果実ぶら下がっていると手に取りたくなるのは人情である。この果実は確かコタキナバルの公園で見かけたな,確かまとまった白い花を枝先に咲かせていたななどと思い出しながら触ってしまった。

正式和名はミフクラギ(Cerbera manghas,キョウチクトウ科・ミフクラギ属)といい,熱帯から亜熱帯の海岸近くの森林に分布している。園芸種のキョウチクトウと同様に食害防止のための毒性をもつので,果実をつぶしたり,葉や枝を傷つけたときに出てくる乳液は有毒である。沖縄本島の海洋博記念公園横の道路に街路樹として植えられており,果実や樹木は有毒なので持ち帰らないこという表示が出ている。

スジグロカバマダラ

スジグロカバマダラ(Danaus genutia genutia,オオカバマダラ亜属)は東洋区からオーストラリア区の熱帯,亜熱帯地域に分布している。日本では宮古諸島や八重山諸島に生息しており,一年中ごく普通に見ることができる。名前の通り翅脈に沿って黒い模様がくっきりと浮き出ているのでカバマダラと識別することができる。

オオカバマダラ亜属を代表するオオカバマダラは北米において2000kmあるいは3000kmもの渡りをしてカリフォルニア州やメキシコの越冬地に集結することで有名である。越冬地では数千万匹ものオオカバマダラが狭い範囲に集まり,枝につかまる蝶の重みで枝が折れることもあるという。この越冬地の蝶を見るのも僕の夢の一つである。

ヤマネコ注意の標識が多い

西表島には島固有種である天然記念物の「イリオモテヤマネコ(Prionailurus bengalensis iriomotensis,ベンガルヤマネコ属)」が生息しているが,交通量が増えるにしたがい,ヤマネコの交通事故死が増加している。2013年は11月までに6匹が事故死しており,これは生息数100匹程度のイリオモテヤマネコにとっては大きな危機である。

イリオモテヤマネコは一定の広さの縄張りをもち,その中で哺乳類や鳥類,爬虫類,両生類,魚類,甲殻類などを日に400-600g捕食する。西表島ほどの大きさの島で肉食獣が生息できることは世界的に見ても稀有のことであり,その意味では西表島は野生の肉食獣の生息する世界最小の島ということができる。

古見にある「西表野生生物保護センター」ではウェブサイトで次のように呼びかけている。

西表島の幹線道路はヤマネコをはじめとする生きものたちにとって大切な,自然環境豊かな生息地の中を通っています。道路にはカエルやカニ,ヘビやトカゲ,シロハラクイナなど小さな生きものたちはもちろん,ヤマネコ,カンムリワシ,キンバト,セマルハコガメなど希少な生きものたちもたくさん現れます。

幹線道路の制限速度は40km/hです(集落内はもっとゆっくり)。集落を一歩出たら,そこはもうヤマネコの森です。どうか,生きものたちの「おうち」の中を横切っているのだ,と感じてあげて下さい。そして,生きものたちが飛び出してきても止まれるスピードで走ってあげて下さい。

特に,ヤマネコにとっては交通事故問題が深刻です。夕方暗くなる頃〜夜にかけて運転する方は注意して下さい。危険箇所にはゼブラゾーン,道路標識,移動式看板(最新の目撃情報によって移動)があります。

■調査中

ニシゲータ橋からの眺め

まだ沖縄の東海上にあるにもかかわらず,西表島では1日中,風速10mほどの風が連続的に吹いていた。道を歩いているとき樹林帯の陰になると体に感じる風は弱まるが,橋の上や海岸に出ると10mの風がもろに当たり,立っているだけでもバランスを崩しそうになる。特に橋の上のように谷間の地形では風速が強まり危ない。

ゲータ橋からの眺め

大見樹(おおみじぇ)までは徒歩で2時間くらいの行程であるが行けども行けども着かない。14:30を回り,上原行きのバスが来たので先をあきらめてバスで戻ってきた。無理をすると16:40頃のバスを利用することもできたが,潮混じりの風が強く,雨も降りそうなのであきらめることにした。

上原港から船浦までのバス代は130円であるが,その次の「ホテルバイヌマヤ」までは490円になる。途中にバス停がないためにそのような値段となっている。僕は船浦とバイヌマヤの中間点で乗車したのに,それでも料金は490円であった。これにはちょっと不満が残るが仕方がない。

サガリバナ

西表島で見たかったものの一つにサガリバナ(Barringtonia racemosa,サガリバナ科・サガリバナ属)がある。東南アジア一帯の熱帯・亜熱帯に,日本では南西諸島(奄美大島以南)に自生する。マングローブの後背地など川の近くに自生することが多い。

別名サワフジとも呼ばれ,藤のように50cmほどの総状花序が垂れ下がり,白もしくは淡いピンク色の花が横向きに咲く。花は夜間に開き,朝には椿のように花全体が落ちる。川岸のサガリバナの木から落ちた多数の花が暗い川面を漂うという幻想的な光景が見られるため,早朝に出るサガリバナ見学のカヌーツアーの人気は高い。

西表島では6月下旬から7月が花の時期とされているので,まず見ることはできないと思っていたら,宿の常連客が向かいの家の横に咲いているよと教えてくれた。

宿の斜め向かいにサガリバナの木があり,花が咲くという。20時に行ってみると確かに咲いていた。しかし,風が強く被写体が動くので近接撮影はオートフォーカスが難しい。また,フラッシュ撮影では白トビが起こる。何回かトライして近接被写体モードで合格点の写真にすることができた。

この木にはすでに咲き終わったものと,これから咲こうとする花序が何本も下がっている。一本の花序の花も一晩ですべて開花するわけではなく,上の3分の1はすでに咲き終わっており,下の3分の1は翌日以降の開花となりそうだ。

翌朝の07時にもう一度見に行くと花はまだ無事であった。周辺にはたくさんの花序が下がっており,他にも咲いているものがあった。周囲環境に左右されるのだと思うが,条件が良ければサガリバナはかなり長い花の時期をもっているようだ。


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