亜細亜の街角
ヒマラヤを越えてラダックへ
Home 亜細亜の街角 | Manali to Leh / India / Aug 2004

マナリ→レー 移動ルート  (地域地図を開く)

マナリからレーまでは467km,ヒマラヤを越えるため4000mあるいは5000mの峠をいくつか越えなければならない。最高地点はタングラングラ峠の5360mである。かって経験したことのない標高のため高度障害が心配だ。高度障害を避けるためには水をよく飲むことが有効である。水をたくさん,それに食料を準備しておく。

マナリからラダックへ移動する場合,政府系のバス(1泊2日)と,民間のジープ(1日)の選択がある。標高4000mを越えるところで泊まりたくはないし,テント村の設備の悪さ,ひどい料金について他の旅行者から聞いていたので,午前2時に出発し,その日のうちにレーに到着するジープにする。

前の日に宿の隣のチケット売り場に足を運び,ジープのチケット(800Rp)を購入する。ホテルのマネジャーが付いてきてくれたので,まともな料金になったようだ。

深夜の出発になるので,あらかじめ宿代は払っておく。08:00に寝て01:30に起床する。入口のシャッターが閉まっていたので,フロントのマネジャーを起こし,開けてもらう。ホテルの外は午前2時とは思えないほどの賑わいである。深夜発のジープの利用客はけっこう多いらしい。

近くの車の運転手にチケットを見せても首をふるばかりである。ホテルに迎えに来てくれるはずなので,ホテルの前で待つことにする。10分ほどで運転手がやってきた。乗客は僕とヨーロピアンのカップルの3人である。ジープは前に2人,後ろに3人分の座席があり,その後ろは荷物室になっている。真っ暗な中をジープは発車した。チベット系の顔立ちの運転手はこれから一人でレーまで運転するらしい。

山道にはいると方々にがけ崩れの痕跡が残っている。道路上の堆積物がまだ取り除かれていない箇所もある。さらにガスが出てきて,視界は極端に悪化する。それでも運転手は悪路の山道をかなりの速度で走っていく。眠気を掃うためか,運転席の窓が半分開けられており寒い。

05:00 空が明るくなる

午前5時を回ると東の空がしらみ始めてきた。何回か羊と山羊の大群に遭遇する。彼らは道幅いっぱいに移動するので,ジープはそのつど左に寄ってやり過ごすことになる。僕は左側の座席にいたので写真にならない。

2人のヨーロピアンの夫妻が加わる

キーロン(3349m)と思われる村で立派なホテルに立ち寄った。ここで2人のヨーロピアンの夫妻が加わる。ホテルの入口には大きなホップが花を付けている。ここは大きな村で電気も来ている。回りはヒマラヤの峰が朝日に輝いている。また羊の大群がやってきた。今度ジープが右に止まったのでなんとか写真なる。

再びヤギの大群に出合う

07:30 高原の風景に変わる

標高が4000m近くなると,一気の上り区間が終わり,高原の風景に変わる。周囲の山々もゆるやかな斜面になり,谷の幅も広くなる。空模様は雲が多く,近くの山には雲海がかかっている。こんなところにも細い電柱が立てられ,電線が張られている。

また,羊・山羊の大群がやってくる。今度もジープは右側に止まったので,写真になる。この辺りも雨が降ったらしく,道路には大きな水たまりができている。

樹林限界に近い標高であろう

重量制限のありそうな橋を渡る

時には一気に水が流れるようだ

もろそうな岩質の山である

三度ヤギの大群に遭遇する

チェックポスト

08:30にチェックポストにさしかかり,小休止となる。緑のほとんどない,荒涼とした土地に軍隊の駐屯地なのだろうか,平屋の小さな家がたくさん並んでいる。周囲には高さ1mほどの風除けの石積みがしてある。運転手は乗客のパスポートを持って,事務所に向かう。その間,周囲の写真を撮る。

ヒマラヤの前衛峰のような山並が続く

細い流れに沿って進んでいく

10:00 大きな峠で小休止

ジープは大きな峠にさしかかり,そこで小休止した。ここの風景はヒマラヤというよりはチベットのものである。なだらかな雪山が後方にそびえ,雪解け水の流れた跡が灰褐色の山肌に描かれている。

何かを囲むようにタルチョが何重にも取り付けられている。道路から見ると色鮮やかなタルチョが後方の山をあたかも聖山のように飾っている。

周辺には数え切れないほどのケルン(小さな石積みの塔)が作られている。巡礼者が残したものか,旅行者が自分の足跡を印すためにつくったものなのか,ケルンは風に崩されることもなく,長い年月をここで過ごしているようだ。

軍隊の駐屯地であろうか

小さな流れに沿って進んでいく

山の上から羊の群れが駆け下りてくる

ジープは雪解け水の細い水流に沿って快調に進んでいく。標高4000mを越えるこのような環境でも,人の営みがあった。山の上から羊の群れが下りてくる。鈍重というイメージの羊であるが,45度はある急斜面を駆け下りてくる。

あわててカメラを構える。すごい光景である。羊の秘めたる野性を知らされた光景でもある。羊たちは小川の岸に集められ,わずかにある緑を食んでいる。

大きな流れが現れる

さらに高度を上げていく

幅の広い谷に出る

さらに高度を上げていく

4500mのテント村の近くで昼食となる

午前中は元気に写真を撮っていたが,午後になると高度障害が出てきたようだ。自覚症状は頭がボーっとなるだけである。昼食のテント村(4500m)では車に残り,やっとの思いでバナナを2本食べた。

外に出ると風が強い。そのせいか真っ直ぐに歩けず,ヨタヨタと歩いていたような気がする。軽い頭痛もあり,これが僕の初めての高度障害経験となる。

チベットのような風景

ルートの最高地点

テント村を過ぎてしばらくすると,気分はかくだんに良くなる。おかげで風景を楽しむ余裕ができる。夏の雪解け水を集めた川が灰褐色の山をぬうように,ゆるやかに流れている。天候は回復し,空が青い。でも,映像で見たチベットのあの藍色の空とは明らかに異なる。澄んだ透き通るような青である。

ジープは川沿いの道から,九十九折の道に入りさらに高度を上げていく。周囲の山が相対的に低くなり,最高地点が近づいていることを予感する。ジープが止まり,このルートの最高地点5360mに到達した。

世界で2番目に高いところを走る道路と印された石碑がある。旅行者はこの石碑の周りで記念写真となる。驚いたのはこのルートを自転車で走る人々がいることである。話には聞いたことがあるが,本当にこの峠で彼らは休んでいた。

周囲はまるでチベットのような風景だ。ゆるやかな斜面をもつ山々が眼下に見える。近くの高山の頂上は雪で覆われいる。そのような雪山を背景にして半円形に取り付けられたタルチョが,強い風の中ではためいている。傾いてきた西日にタルチョの長い影が長く写され,ここの雰囲気も聖地である。

最高地点からは一気の下りとなる

自然の造形による仏塔のようだ

高度障害は多少改善されている

一時間ほどで4000m地点まで下る

最高地点の峠からは一時間ほどで4000m地点まで下る。高度障害はもう完全に影をひそめた。しかし,休憩地点で歩こうとするとすぐに疲れ,座りたくなる。3500mの地点まで下りてくると,いくつかの村が点在するようになる。ここはもうラダックの外れに位置するようだ。

ラダックが近づく

道路沿いにはいくつかのゴンパが点在するはずであるが,確認できなかった。車の通行量も増え,その分排気ガスもひどくなってきた。レーのバススタンドには19:15に到着した。17時間のルートを一人で走りぬけた運転手はまさに鉄人である。彼にお礼を言って,すこし離れた街に歩き出した。


マナリ   亜細亜の街角   レー (その1)