亜細亜の街角
ヒマラヤ山麓にあるインドでは珍しい温泉地
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マナリ  (地域地図を開く)

マナリはデリーから北に570km,クル渓谷の奥に位置する標高2,050mの避暑地である。郊外からは美しいヒマラヤの威容を望むことができる(天気が良ければ)。

マナリはインド人にも人気があり,多くのホテル,レストラン,商店が集まっている。マナリは北のラダック,西のスピティ渓谷への玄関口となっており,訪れる旅行者も多い。長期旅行者はここではなく,2kmほど山に入ったヴァシストに滞在する。

マナリとはヒンドゥー教の創世神話に出てくるマヌという神様がいる場所という意味である。マヌ寺院はその神様を祀っており,ヒンドゥー教徒の聖地にもなっている。

そして,大麻はシヴァ神の愛好物として神聖なものと考えられている。マナリ周辺はインドでも良質の大麻がとれるところとして有名である。ここでは,1Kg以下の大麻所持は問題にならないという。

そのため大麻を目的にここを訪れる旅行者も多い。日本人の中にも大麻吸引の話を平然と話している人もおり,僕の感性からすると「何のために旅行に来ているのか」と質問したくなる。日本では法律に触れる大麻をインドなら吸引できるというのであればひどい話である。

ダラムサラ→マナリ 移動

ダラムサラ(09:15)→パランプール(11:20)→マンディ(15:00)→クル(17:30)→マナリ(19:30)とバスを乗り継いで移動する。ダラムサラからマナリへの直行便は夜行になるので,昼間の乗り継ぎで行くことにする。

8月中旬のヒマラヤ山ろくはモンスーンの影響で大雨が続き,道路が通行止めになっている。宿と旅行者から情報を集め,マナリ→レーのルートが再開されたことを確認してマナリに向かう。

まず下のダラムサラに向かう道路が崩れ,ミニバスは運行していないという。たしかにしばらく待ってもこないので乗合軽自動車を他の乗客とシェアして(40Rp)下に向かう。

パランプール行きのバス(14Rp)に乗るときは強い雨になる。こんなときには乗換えをしたくないものだ。パランプール近くのバススタンドで車掌が次のバスを教えてくれた。

マナリまでの料金は160Rpという驚きの値段だったのでおもわず念を押してしまった。しかし,この値段は正当なものであった。ヒマラヤ山ろく沿いの道は地図上の距離よりずっと遠かった。

バスは山の斜面の道を高度を上げ下げしながら進んでいく。高度は1000mから1700mの範囲だ。平地,および傾斜のゆるやかな土地は水田になっている。モンスーンの水を利用した1期作なのであろか,まだ穂の出ていない緑のじゅうたんが目に鮮やかだ。

樹木も多く山肌を覆っている。遠くから見ると広葉樹に見えるが,実は五葉松の類である。下からは雲が湧きあがってきて,モンスーンを実感させる。バスはいつ崩れるかもしれない川沿いの道を先に進む。

小休止

道路は斜面を削った狭い砂利道である。モンスーンの雨のため何ヶ所かで土砂崩れが発生していた。その一方で恵みの雨により段々畑は緑一色である。景色の良いところを避けるようにバスが停車するのがうらめしい。ようやく小休憩になり小さなお店の写真が撮れた。

マンディの町

2番目のバスもマナリ行きではなく,車掌はバススタンドで動き出そうとしているバスに乗れと指示する。このバスの車掌に前のバスで買った160Rpのキップを見せるとうなずいていた。乗り継ぎのバスは同じ会社が運営するものなのであろう。

バスはマンディの町に近づく。マンディの町は二つの川の合流点にあり風景はなかなかのものだ。マンディを過ぎると道路はビアス川沿いに北上する。バスは深さ300mほどの峡谷の道を恐ろしいほどの速度で走る。

大きなバスターミナルを通過する

峡谷の道

対向車が近づいたときだけ速度は落ちる。道路から谷までは100mほどありそうだ。ハンドル操作を間違えたらまずおしまいであろう。縁石にひっかかってかろうじて止まったトラックも見かけた。この谷も変化に富んでおり,見ていて飽きない。

クルのバスターミナルで小休止する

谷が広くなりクルの町に到着し15分ほど停車した。しかし,休憩時間が分からず夕食にありつけなかった。クルの町はマナリ同様にインド人の避暑地として大きくなった。

この辺りのミネラル・ウオターにはマナリブランドとクルブランドがある。僕はどちらも似たようなものだと思っているが,地元の人は自分の所の方が安全でおいしいと言い張る。クルの町からさらに2時間をかけて灯りのきらびやかなマナリに到着する。

Kalp Taru GH

マナリはあまりにも観光地化していたので。そのままオート・リキシャーで少し上のヴァシストに向かう。ほんの小さな村だと思っていたら意外と大きいのに驚いた。

宿は「Kalp Taru GH」の2階にする。二階というよりは「屋根裏部屋」の感覚に近い。50Rpで4.5畳,1ベッド,T/Sは共同,まあまあ清潔である。小さな窓から下をのぞくとちょうどオープンの温泉が見える。

旅行者が多いので食事にも不自由しない。宿のすぐ前のチベット食堂(チベタン・キッチン)は合格点の味だ。そこは日本人の長期滞在者の溜まり場になっている。

ヴァシスト村は豊かな自然の中にある

公衆温泉

06時に起床すると外はまだ薄暗い。雲海の中にいるようだ。じきに強い雨が降り出し,ここもモンスーンの最中のようだ。雨が上がるのを待って僕も温泉にいく。屋外にある温泉は男性専用である。女性用は近くのヒンドゥー寺院の中にある。

小さなプールのような浴槽の周りに脱いだ服を置く。当然,パスポートは部屋に残してきた。日本人としてはパンツ姿で風呂に入るのには精神的な抵抗がある。これがインド人との初めての混浴体験である。

源泉の温度は60℃ほどあり,水でうすめて湯船に流し込んでいる。お湯の温度はちょっとぬる目で,匂いから弱酸性でクセはなさそうだ。お湯の中には湯の花以外のものも浮いている。

あふれたお湯はパイプを通して,下の洗い場に落ちるようになっている。そこでは,体を洗う人もいれば,洗濯をする人もいる。お湯の入れ替えはそれほど頻繁にはしていないようだ。湯船の底はかなりヌルヌルしている。

それに対して地元の人は毎日お湯を抜いて洗浄していると反論する。下の洗い場で体を洗いもう一度お湯に入る。源泉の一部はパイプで引かれ,洗濯あるいは食器洗い用として使用されている。

翌朝,同じ時間に公衆温泉に行くとお湯が50cmほどしか溜まっていない。なるほど,お湯を抜いて洗うこともあるようだ。ということで,寺院内部の温泉に入ることにする。

入口で履物を脱ぎ,建物の上がりのところの脱いだ服をたたんで置く。最初少し熱いと思うくらいの温度である。外の温泉が入れないためか,ここはずいぶん混んでおり,10人くらいの湯船に20人がつかっている。

どうしてサドゥーが

ヴァシストは特にヒンドゥーの聖地ではない。小さな寺院が一つあるだけだ。それにもかかわらずたくさんのサドゥーがいる。特に何かの行をしているわけでもなく,日なが一日,寺院の周りでひまそうにしている。中には大麻を吸う者もいる。そうなると修行者というよりは自由放浪者である。そのような人々が存在できることはインドの懐の深さの証でもある。

ヴァシスト村を歩く

朝風呂でいい気持ちになり,部屋で小休止をする。下に降りてとなりのチベタン・キッチンというカフェで日記作業をしながら朝食をとる。トースト,ゆで卵,チャーイの組み合わせで25Rpである。

インドではトーストをガスで焼くので端がこげており,パン自体の味もひどいものだ。ミルクティーには塩が入っており,それに砂糖を入れるとますますまずくなり,半分を飲むのがやっとの状態だ。それ以外のものはまあまあ合格点の味である。

ヴァシスト村は大きいといっても2時間もあれば十分に見て回れる。公共温泉の横の通りがメインストリートは段差があるので車は通れない。村人は一様に背負いカゴで荷物を運んでいる。

コンクリート製の家屋が増える中で,伝統的な民家がところどころに残っている。横長の建物で1階が家畜小屋,2階が居住区になっている。2階は張り出しになっており,切り石を積み上げた太い柱と木製の柱が支えている。感じとしてはチベットの人々の家に近い。

チベット文化圏は現在のチベットだけではなく,インド北部,ネパール,ブータンにも広がっている。中国でも青海省,四川省,雲南省の高地地域はチベット人が多い。

中国ではチベット文化が抹殺され,中国化が進んでしまったが,インド国内では今でも伝統文化が残されている。マナリはチベット文化圏の南限に位置している。

家の前では子どもたちが遊んでおり,カメラを向けるとお姉さんが妹の顔をこちらに向けてくれた。近くには母親や他の女性がおり,僕の撮影を見ている。もちろん,女性を断り無しに写真にすることはできない。

小さな町を一回りして戻ってきたら腹具合がおかしい。庭のテーブルのところフンザで会った韓国人旅行者に再会した。しかし,あいさつもそこそこに「腹具合が悪いので失礼します」と断ってトイレに行く。う〜ん,今朝の朝食が体にあわなかったのかな。

再び雨が降り出し,夕方まで降り続いた。こうなるともうすることがない。ベッドに横になり,今後の旅行日程についてあれこれ思いを巡らせる。この雨ではヴァシストに滞在してもしようがない。さっさと,雨の少ないラダックに移動したほうが良さそうだ。

青草を運ぶ

村を出ると豊かな自然の景観が広がる

花が終わったバラにはこのような実がつく

周辺には大麻が自生している

村の子どもたちはほとんど写真にならなかった

何かを待っているようだが・・・

カバイロハッカ

温泉水を汲む

雨にたたられたヴァシスト村ともお別れである

マナリは観光地

ヴァシストの2日目も雨だったので,雨の少ないラダックに行くためマナリに戻ってきた。バススタンドで客引きにつかまり目の前の「Highway Inn(150Rp)」に宿泊する。

広い部屋,ふかふかの2ベッド,T/S付き,立派なホテルである。ラダックへは政府系のバス(1泊2日)と,民間のジープの選択がある。標高4000mを越えるところで泊まりたくはないので,02:00に出発し,その日のうちにレーに到着するジープにする。

チベット寺院

マナリを歩いてみる

その日のうちにジープが見つかる

宿の隣のチケット売り場に足を運び,ジープのチケット(800Rp)を購入する。ホテルのマネジャーが付いてきてくれたので,まともな料金になったようだ。


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