亜細亜の街角
■水とヤシの風景を堪能する
Home 亜細亜の街角 | Quilon / India / Oct 1999

クイロン  (地域地図を開く)

トリバンドラムの北60km,アレッピーの南90kmのところにある町。アシュタムディ湖の近くに位置するバックウオター(水郷地帯)入口の町である。9世紀頃は香辛料貿易の中継地として栄えたが,現在は静かな田舎町になっている。


トリバンドラム→クイロン移動

ケーララはインドの主要観光地から遠く隔たっているため,めったに日本人観光客が訪れないところだ。クイロンはバックウオター入り口の町,ここまでくると水とヤシの木に代表されるケーララらしい風景が旅行者を迎えてくれる。

トリバンドラムからのバスは2時間あまりでクイロンに到着した。リキシャーのおじさんは「Central Park Hotel」に案内してくれた。シングルで275Rp,中級ホテル並みの設備でとても快適である。ただし,こぎれいなレストランの食事はとても高い。昼食にチキンカリー,サラダ,スープ,アイスクリームのセットを注文すると300Rpにもなり,宿代より高い。食事に税金が付いていたのは初めての経験である。


クイロンの街中にはこれといった被写体がない

クイロンは小さな町で,記憶に残る町並みはない。ガイドブックには「アシュタムyディ湖の湖畔に位置するバックウオターの入り口」と記載されているが,どこが川やらどこが湖やらよく分からない。いたるところに水路があり,大きな水の広がりとつながっている。

町を走るバス(料金は2Rp程度)には窓ガラスがなかった。暑い気候のこのあたりでは車内に風が入ることが第一であろう。このバスは女性専用の席が決まっていた。何も知らない僕のような旅行者がその席に座ると,現地語で注意を受ける。意味は分からなくとも,何となく意志は通じるものだ。

水路が縦横に走っているこの地域では,観光客用の家船がたくさん係留されている。この船はその名の通り,浮かぶホテルとなっており,かつどこにでも移動してくれる。ホテルに居ながらにしてバックウオターの風景が楽しめるという優れものである。ただし,1泊2食で少なくとも100ドルはする。少し離れた船着場に行き,2日後のアレッピー行きの船(150Rp)を予約する。


ツアーで水郷地帯回る

クイロン周辺の水郷地帯を回る半日ツアー(150Rp)に参加した。前日,ホテルのフロントで予約を入れておくとピックアップしてくれる。車で24kmほど離れた水郷地帯へ移動して,その後4-5人乗るといっぱいになる小舟に乗り換える。ツアー参加者は僕を入れて3名,ボートにはエンジンは付いておらず,船頭が長い竹竿で押すとゆっくり動き出す。水深は浅いようだ。

ここは汽水域といって真水と海水が混ざり合っているところである。周囲はココヤシの風景がずっと続き,少し濁った水と調和して,南国らしい風景を演出している。水辺のココヤシの密度は驚くほどのものだ。他の熱帯植物と競い合い,絡まりあいながら,密林を形成している。この密林からとれるヤシの実は大変な量になるだろうななどと考えながら水辺の風景をぼんやり眺める。

余談であるがインド象は,自分では手に入れることができないココヤシの葉が大好物である。ココヤシの葉は巨大だ。人の背丈の2倍はあり,重さも20kgはある。古くなると根本がはがれて自然に落下する。それは十分に凶器になりうる。象が巨大なヤシの葉を鼻で持ち歩いているところや,ナイフでも切れないような大きな葉をバリバリとかみ砕いている映像を見たことがある。ケーララのプーラム(収穫祭)には象が欠かせないので,この地域には多くの象が飼育されているし,西ゴート山脈の西側には今でも野生象が生息している。

水路はときに狭くなり,橋として利用されている倒木の下を伏せながら通ることもあった。ツアーガイドはときどき陸に上がり人々の生活を見せてくれる。ツアーの一行がたびたびこのあたりをおとずれるためであろうか,人々は気楽に写真に納まってくれる。天幕が張られ,祭りの準備をしている集落もあった。このような地域をのんびり歩くのはとてもよさそうだ。しかし,すぐに時間になり舟に乗り込む。ボート・ツアーは2時間ほどで終了し,車で宿に戻る。


胡椒

ツアーの途中で胡椒の木を見かけた。大航海時代にヨーロッパ人をインドに向かわせたものが胡椒である。胡椒はツル性植物なので,杭を立て,それに巻き付かせて栽培する。胡椒の実は房状に実り,きれいな緑色をしている。完熟すると赤色に変色していく。この実をどの状態で,どのように処理するかによって,黒胡椒と白胡椒に分かれる。

未熟な実を収穫し乾燥させると黒く変色する。これが黒胡椒である。一方,完熟してから収穫し,乾燥させた後に水に漬けて外皮を柔らかくして剥いだものが白胡椒になる。もう一つ,グリーンペッパーは未熟な実を塩漬けにするか,フリーズド・ドライ処理で乾燥させて作る。果皮が緑色を保っているのでグリーンと呼ばれている。

ブラックペッパーは強い独特の風味があり,特に牛肉との相性が良い。ホワイトペッパーは、それよりマイルドで魚料理等と相性が良い。ピペリン(piperine)という化学物質が胡椒に独特の風味を与えている。


田舎を歩きかわいい被写体に出会う

ツアーの翌日,バスに乗って昨日の出発点とおぼしき所に行ってみた。周辺は緑の多い住宅街になっている。カメラを肩に掛けてのんびり歩いていると,小さな子供を抱いた夫婦が身振りで写真を撮ってくれと言う。撮るのは差し支えないのでシャッターを押す。彼らにとっては写真をとること自体が楽しい経験なのであろうか。日本から郵送するのは手間なのでお断りした。

このあたりの家は周囲を塀で囲っているので人々の生活は簡単に見られないし,被写体にもなかなか巡り会えない。それでも,何人かのかわいい被写体に会うことができた。子どもたちはカメラに対する拒否反応はない。レンズを向けるとだいたい笑顔で応えてくれる。


マッチの軸木が風に舞っている

田舎の散策に少し疲れたので小さな店でコークをいただく。店の前の道は少し先で20cmほど冠水している。しかし,人々は服の裾をつまんで平気でその道を歩いて行く。残念ながらスニーカーを履いている僕は,彼女たちの後をついていけない。

町に戻るため大きな道路に出ると,近くの土地に白いものが敷きつめてある。何があるのかと近づいてみるとそれはマッチの軸木であった。一人の女性が機械で加工された軸木を乾燥させるため,地面に広げていた。仕事の様子をとるためカメラを向けると,最初は恥ずかしがっていたが,ちゃんとポーズをとってくれた。



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