亜細亜の街角
■ケーララ洲に入ると風景は一変する
Home 亜細亜の街角 | Trivandurum / India / Oct 1999

トリバンドラム  (地域地図を開く)

インド亜大陸の南端はV字形になっている。V字を分割するように西ゴート山脈が走っている。東側がタミールナドゥ州,左側がケーララ州である。タミールナドゥが乾燥した気候なのに対して,ケーララは比較的湿潤な気候である。トリバンドラムはケーララ州の州都,人口80万人をこえるインド西海岸有数の都市である。アラビア海から吹きぬける風が,この地域に多いココヤシの葉を揺らす。


カーニャクマリ→トリバンドラム移動

カーニャクマリからトリバンドラムまではバスで2時間,料金は30Rpであった。タミールナドゥ洲からケーララ洲に入ると風景は一変する。湿潤で葉の大きなココヤシの木が多いのがケーララの特徴である。アラビア海からの湿った風が西ゴート山脈にぶつかり,たくさんの雨を降らせるためである。面積に比して人口が多いため,ケーララはインドでも貧しい地域であり,中東への出稼ぎも多いところである。しかし,人々は陽気で親切であった。

トリバンドラムの中央バス・スタンドで下車し,リキシャーで「Navaratna Hotel」に行ってもらう。外観はなかなか良い。シングルで250Rp,ここまでは某ガイドブックの情報は正しかったが,部屋の中は湿っぽいし,食堂は改装中であった。とはいうものの,別の宿を探すのも面倒なのでここに泊まることにする。

ケーララ州では蚊の心配があるので,蚊取り線香を買いに行く。おばあさんがやっている小さな店でめざすものを見つけ,値段を聞くとフォーティと聞こえる。えー,これが100円もするのかと驚きながらも50Rp札を出すと,30数ルピーのおつりがきた。そういうことだったのか。


市内ツアーに参加する

トリバンドラムの観光スポットを手短に回るため州政府観光局のツアーに参加することにした。トリバンドラム中央駅の北側には中央バススタンドがあり,その近くに「ケーララ州観光開発公団(KTDC)」のオフィスがある。ここで翌日のツアーの申し込みをする。

参加者は約20名で,外国人は僕だけであった。見どころはパドマナー・バスワーミ寺院、ネイピア博物館,遊園地,プラネタリウム,水族館と盛りだくさんである。逆に盛りだくさんのため,個々のスポットの印象は薄い。また,説明は現地語のためさっぱり分からない。参加者の顔を覚え,置いてきぼりを食わないように注意しなければならない。

ツアーは短時間の駆け足見学となるため,博物館は次の日のんびり見学することにする。この博物館の建物は重厚ですばらしい。入り口の所に着飾った女性たちが座っていたので一枚撮らせてもらう。博物館の展示品は,南インドのブロンズ像,石像,コインが記憶に残っている。

博物館の前は広い庭になっており,小学生が先生に引率されて来ていた。ちょうどお昼の時間だったので,子どもたちは持参のお弁当を広げていた。インドのごはんは粘り気が無く,カレーと一緒に食べるにはもってこいだ。子どもたちは容器の中でカレーとごはんをまぜ,手ですくって口に運ぶ。そのときどうしても,ごはんがこぼれ落ちる。カラスが集まり,そのおこぼれをねらっている。

なぜかツーコースには遊園地が組み込まれている。バスから降りると遊園地の手前で地元の人につかまり,一緒の写真を撮ることになった。新婚のカップルの撮影もしている。遊園地の周囲は水路になっており,歩くと揺れるフロートを並べた浮き橋を渡って行く。女生徒が先生に引率されて来ており,集団で遊んでいる。彼女たちの制服はとてもセンスが良い。白いズボンに,茶色のパンジャビー,白いショールの組み合わせである。下級生は同系色のスカート姿も見られる。たぶん,ある年齢から足を見せない服装になるのであろう。


動物園は森の中にあると錯覚するほど環境が良い

動物園はトリバンドラムのお勧めの一つである。広い敷地は元々の自然環境を上手に利用しており,まるで森の中にあるような感じを受ける。ほとんどの動物は檻に入れられておらず広い場所でゆったりと暮らしている。見物人と動物の距離も近い。

飼育されている動物は多く,インドサイ,ユニークな牛の仲間,山アラシ,イノシシ,シカなどが印象に残った。トラのような猛獣は見かけなかった。ここのインドサイにはシンボルの角がなかった。サイの角は精力剤として高値で取り引きされるため密漁が後を絶たない。そのため,サイの角を切り,商品価値をなくしてしまうという話を聞いたことがある。

動物園でも,先生に引率されたたくさんの子どもたちが見学に来ていた。彼らの制服をチェックするのも楽しい。インドでは小学校から制服が使用されており,しかも学校毎に異なっている。といってもそれは女生徒の話で,男子は白いシャツに色物の半ズボンもしくは長ズボンである。


街をゆっくり歩く

特に目的もなく町を散策するとおもしろい光景に出会う。おもしろさの基準は人により異なるので,僕が興味をもった対象も,他の人には退屈なものに写るかもしれないが紹介する。

屋台でアイロンがけをしている男性を見つける。クリーニング屋もしくはアイロンがけ屋と思われる。彼は4輪の台車の上で見慣れないアイロンを使っている。これはもしかして日本でも数十年前に使用されていたという,胴に炭火を入れた炭火アイロンではないだろうか。

道路工事の現場も見かけた。ルンギー姿の男性は,裾を短くはしょい,長い金属棒を使用して道路のアソファルトを剥がしている。ハンマーを使って一カ所に穴をあける,あとは意外と簡単に剥がすことができるようだ。他の男性は底の平らなお盆のような容器にアソファルトの破片を入れて運んでいる。中にはサリー姿の女性も混じっている。工事はすべて人力で行われる。

何かイベントをしているホールを見つけた。入ってもいいのかなとちょっと迷いつつも,他の観客と一緒に入場した。内部の客席は300席ほどあり,そのうち3割ほどが埋まっている。しばらくすると何人かの女子学生が緊張した面もちで壇上に上がり,詩の朗読を始めた。どうも市民の文化祭といった感じである。

1時間ほどでホールを退出して外に出ると,建物の入り口付近でこれから舞踊の出番があるらしい着飾った子どもを見つけた。たぶん母親と祖母が娘の晴れの舞台を見るため同行していた。写真の許可を求めると,手を胸の前で合わせる礼のポーズをとってくれた。

路上の物売りも数多く見かけた。彼らはどこにでも店を広げるのではなく,特定の場所に固まっている。どうも,商売をする場所には一定のルールがあるようだ。商う品物は野菜,果物,総菜,インド風クレープなど多彩だ。売り手は女性が多く,カメラを向けると陽気にポーズをとってくれる。



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