亜細亜の街角
■ヒンドゥーの聖地は巡礼者でにぎわっていた
Home 亜細亜の街角 | Rameshwaram / India / Oct 199

ラーメシュワラム  (地域地図を開く)

南インドの東海岸からスリランカの方に細長く延びた半島の先に,ラーメシュワラム島がある。鉄道と道路で本土とつながったこの島の中心地がラーメシュワラムである。ここは,「ラーマーヤナ物語」で登場する伝説の地である。そのためか長い回廊で知られるラーマナータスワミー寺院と海辺の沐浴場は,ヒンドゥー教徒がいちどは訪れてみたい聖地となっている。


マドゥライ→ラーメシュワラム移動

インドの移動は鉄道が本命と書かれている。しかしインドでは個人が鉄道のキップを取得するのは大変である。駅の窓口にはいつも大勢の人々が群がっている。彼らは順番を待つという習慣が無く,窓口近くなると横から後ろから手を出し,大声で係員にキップを要求する。その騒ぎの中で外国人旅行者がキップを買うのは「大変」の一語に尽きる。そもそも小さな駅では係員が英語を話せる保証もない。指定席をとるのはさらに,さらに大仕事である。

その点,バスは行き先が分かると後は乗るだけなので,日中に移動可能な距離ならばずっと面倒がない。マドゥライを出発したエアコン無しバスは舗装された道を快適に走る。10月も終わりに近づくと,さしものインドの熱気もおさまり,「暑いな」程度になっている。ラーメシュワラムは半島の先にある島で,本土とは道路と鉄道で結ばれている。バスは顧客サービスなのか,橋の上でしばらく停車してくれた。外に出てインド洋の風景を眺める。

ゲストハウスは「Tamil Nadu」とする。残念ながら旧館はいっぱいだったので新館になった。料金は200Rp,トイレ・シャワー付き,清潔で居心地はよい。ただし羽虫の多さと,よく響く宿泊者の声に閉口した。


ラーマナータスワミー寺院

この町を聖地にしているのがラーマナータスワミー寺院である。入り口のちょっと手前でクツを預け,はだしになって寺院の中に入る。1.2kmにもおよぶ長〜い回廊があり,両側は彫刻を施した石柱が無数に立っている。残念ながら一部は修理のため,飾りの無い柱に置きかえられている。ともかく1周5km近くもあり,かつ同じ風景が続くので元気な人以外は100mくらいで戻ってきた方がよい。

巡礼者はたいてい巡礼宿にとまるようである。町の中でそれらしい建物がいくつか見かけた。そのような宿は地方毎にできているという話を聞いたことがある。なにしろここは州ごとに言葉がちがうという国なのだ。


巡礼者は日の出の海で沐浴し寺院に参拝する

日の出前に起床して宿から5分のところにあるアグニ・ティーターム沐浴場を見に行く。ここはインド洋が沐浴場になっている。ベナレスのガンガー沐浴はちょっとという人でも,ここなら巡礼者に混じって沐浴できる。ここは日の出を見ながら沐浴できるというぜいたくな場所である。

しかし,日の出前の人出はそれほど多くない。だいたい7時頃から人々は増えてガートは混雑するようになる。人々はお供え物をそこらに置き,男性はルンギ姿で,女性はサリー姿で海に入る。子どもたちは海が怖く大人にしがみついている。沐浴風景を写し,売るのを商売にしている写真屋も海に入り,家族のスナップ写真をとっている。

ガートの石段では熱心な巡礼者がバラモン僧から祝福を受けている。その回りではカラス,ヤギ,牛がお供え物を食べている。人々は動物を追い払おうともせず成り行きにまかせている。この辺りがヒンドゥー教の自然観がよく出ているところだと感心する。沐浴を済ませた巡礼者はラーマナー・タスワミー寺院に向かう。その道の片側にはサドゥーの服装をし,バクシーシ(喜捨)を求める人もたくさん並んでいる。


町の中はおもしろい被写体にあふれている

沐浴場を見た後はのんびり町を散策する。道路工事の現場では,多くのサリー姿の女性たちが円形の陣笠のような金属製の容器に土砂を入れ,手渡しで運んでいる。ここではコンクリートミキサー車以外はすべて人手で作業が行われている。

薪の量り売りをしているところを見つけた。インドの燃料の多くは薪炭材でまかなわれている。昔は,女性たちが森に入り枯れ枝等を集め燃料にしていたので,森林の健全性は保たれていた。しかし今では人口密集地からどんどん森林は後退している。ここでは直径30cmほどの材木がうずたかく積まれており,人々は大きな天秤ばかりを使用して重さを計っている。インドの薪炭材需要と森林に対する巨大な圧力の一端を見た思いがする。

からまった灌木で囲われた土地でヤギが飼われていた。この地域のヤギは小型で色は黒もしくは茶色と黒のブチである。子どもたちが現れ,続いて一族が集まり集合写真になった。何故かひげの立派なおじいさんは直立不動の姿勢を崩さなかった。


ホテルのシーツは洗濯され砂浜一面に干されていた

僕の宿泊していたホテルからは毎日たくさんの洗濯物が出る。この洗濯物はとある一家が一手に引き受けていた。働き手は夫婦と二人の子どもである。彼らは洗った洗濯物を浜辺に広げて乾燥させる。この日は天気が良く,浜辺には一面にシーツが敷き詰められていた。

この国では洗濯物に砂が付くことなどは意に介さないようだ。砂が付いたら払えばいいさといったところである。近所の子どもたちはシーツの上で遊んでいる。さすがは「ノープロブレム」の国である。


夕陽を見に岬の先端まで行く

ラーメシュワラムから岬の先端までは約20kmほどある。先端近くまでバスが出ているので乗ってみた。できればそこで夕陽を見たいと思っていたが,現地に着いてみると雨もようである。周辺には漁師の小屋がたくさんある。どの家も壁と屋根はヤシの葉でできている。ちょっと風が吹いたら飛ばされそうなたたずまいである。目の前には南国とは思えない光に乏しい海が広がっている。砂は目が細かく,足にしっとりくるので,海水浴場には適している。

次のバスが到着すると,町に戻る観光客と町に出かける人々が小さなバスに群がる。荷物と人で溢れるバスに乗る気がしないので次のバスを待つことにする。時間つぶしのため,茶店のような民家のような家で子どもたちにオリヅルを作る。こうして岬探検はほとんど収穫無しに終了した。

しゃくなことに岬から戻ってくると天気は回復したので町の外れを歩いてみる。この辺りにはココヤシと異なり,葉が扇状に拡がるサトウヤシの木が多い。小さな集落で子どもたちの写真を撮ろうとしたところ,近所の人が集まってきて,ここでも集合写真になってしまった。ある家では庭で食事をしていた。南インドではコメが主食で,これにカレーをかけたものが毎日の食事になる。



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