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2008/03/15

太陽系と地球の誕生


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■それは巨大な恒星の死から始まりました

2000億の恒星が集団となり直径約10万光年,円盤状に渦をまくようにゆっくりと回転している銀河の中心部から約2.8万光年離れた空間で小さな出来事が起こりました。およそ46億年前に太陽の数倍の質量をもった巨大な恒星が死を迎えました。巨大な恒星は最後に超新星爆発を引き起こし,星を構成する物質を周囲に撒き散らします。

爆発は高速の衝撃波となって周辺の空間を伝播し,周囲にあった星間物質(大部分は水素,ヘリウムからなるガス,それより重い元素は小さなちり状の固体)の密度にゆらぎを生じさせました。星間物質のある部分では,ガスとちりが吹き寄せられて密度が増加します。密度の増加した部分では自分の重力を支えきれなくなって静かに収縮を開始します。この収縮を開始した星間雲の一部が原始太陽系星雲となり,ゆっくりと回転を始めます。

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■原始太陽系星雲から原始太陽と微惑星が生まれます

原始太陽系星雲はその中心に向かって加速度的に収縮を速め,物質の大半は中心部に集まります。中心部はその巨大な重力により圧縮され,内部は高温・高圧の状態になります。そして,臨界点に達すると核融合が始まり明るく輝くようになり,原始太陽が誕生します。周囲の原始太陽系星雲は回転を速め,星間物質は回転面に集まるようになり扁平化していきます。物質の空間密度がある値を超えると周囲の物質が重力によりまとまり,直径10kmほどの固まりとなります。これが微惑星です。直径10km,質量1兆トン,太陽系全体で10兆個ほどの微惑星は太陽系時間の尺度からすると一瞬のうちに形成されました。

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■微惑星同士の衝突の中から惑星が成長します

軌道の近い微惑星は互いに衝突し,あるときは破壊され,あるときは合体が繰り返されました。そして,時間とともに軌道上でひときわ大きなものが成長するようになります。この惑星の卵ともいうべき天体は周辺の微惑星を重力で引きつけますます成長し,軌道上で唯一の天体になります。これが惑星です。

こうして中心に太陽をもち,直径約100億km(海王星軌道まで)の太陽系が誕生しました。100億kmは途方も無く大きな数字のように見えますが,0.001光年(1光年=9.46兆km)に過ぎません。直径10万光年の銀河系においては芥子粒にもならない小ささです。

■原始地球は微惑星を取り込み成長を続けます

原始太陽は明るさを増し,その周辺では惑星が成長を続けています。太陽に近いところでは太陽風により軽いガスは吹き飛ばされ,固体の表面をもつ小さな惑星となり,遠いところではガスを主体とした巨大な惑星となりました。地球は太陽から1.5億kmと近い位置にあるので固体の惑星になりました。誕生直後の地球は微惑星を引きつけさらに成長を続けます。

現在の地球の質量は6X1021 トン,つまり60億・兆トンということになります。微惑星の質量が1兆トンですから,地球ができるためには微惑星を60億個集めなければなりません。ある程度地球が成長してからも想像を絶する多くの微惑星の衝突があったことでしょう。

微惑星のもっている巨大な運動エネルギーは衝突の瞬間に大爆発とともに熱に変わります。そのため地球の表面は溶け,マグマの海となります。地球の原材料となった微惑星には現在の地球に存在するすべての物質が含まれていました。鉄やニッケルのような重い物質は中心部に沈み,重力エネルギーの解放により高温の核を形成しました。一方,岩石のように軽い物質は表面に残りました。

■地球史上最大の衝突

微惑星に含まれていた水は衝突時およびマグマの海から水蒸気となって放出され,二酸化炭素と合わせて濃密な大気を形成しました。現在の海にある水がすべて大気中にあったのですから,想像を絶する世界だったことでしょう。濃密な大気のもたらす温室効果により地表の熱は宇宙空間に逃げていかず,地表はますます高温化していきます。この時期に地球史上最大の衝突が発生しました。地球の数分の一という巨大な天体が衝突したのです。この天体も地球と同じように微惑星の衝突の中で成長した惑星サイズのものだったようです。地球はこの衝突でかろうじて破壊を免れました。

衝突した天体は地球をえぐり,周囲の空間に破片をまき散らしながら地球の引力にとらえられ,周回するようになり,私たちが月と呼んでいる天体になりました。破片のあるものは地球に再落下し,あるものは月に吸収されました。誕生時の月と地球の距離は現在の半分程度しかありませんでした。月と地球は相互に引力で影響しあい,地球の自転速度はだんだん遅くなるとともに,月は少しずつ地球から遠ざかり,安定した位置を占めるようになりました。

■衝突が一段落して海が誕生します(40億年前)

時間とともに微惑星の衝突も減り地表温度も徐々に下がり出します。地表のマグマは固化し薄い岩石の皮膜を形成します。200気圧,数100kmに達する濃密な原始大気の中では激しい対流が起きます。原始大気の表層では冷やされた雲が雨になります。しかし,雨はまだ熱い地表付近で熱せられ再び水蒸気に戻ります。地表の温度がさらに下がると,ついに原始大気中の水蒸気の大部分が雨に変わります。地球史上で最大の豪雨だったことでしょう。こうして海が誕生しました。海の誕生の時期についてはいくつかの学説がありますが40億年前というのが有力です。

誕生当時,金星にも地球と同じくらいの水は存在していましたが,太陽からの距離が近かったため海が形成されることはありませんでした。上空の水蒸気は太陽からの紫外線により分解され軽い水素は重力では引きとめられず宇宙空間に逃げていきました。現在の金星の表面には水はなく,二酸化炭素を主成分とする90気圧の濃密な大気による温室効果のためが温度は約470℃となっています。太陽からのわずかな距離の差が水の惑星と灼熱の惑星の分岐点となったわけです。

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■海は地球の進化に決定的な役割を果たします

海はその後の地球の進化に決定的な役割を果たします。原始の海は温度が150℃,強い酸性を示していました。しかし,表層の岩石から溶け出した陽イオンが酸性の海を中和していきます。大気中には60気圧の二酸化炭素が残りました。

中和された海は二酸化炭素を吸収し大気中の二酸化炭素は急激に減少していきます。二酸化炭素による温室効果も急激に低下し,地球の表面温度も下がっていきます。表層の岩石の温度も低下して剛体化し,プレート・テクトニクスが機能するようになります。

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海水中に取り込まれた二酸化炭素は炭酸イオンとなり,海水中の陽イオンと反応し,石灰岩などの炭酸塩鉱物が作られます。海底に沈殿した石灰岩は海洋プレートの一部となり地球内部に沈みこみ,二酸化炭素とケイ酸塩岩石に分解され火山性ガスとなって大気に戻ります。大気中の二酸化炭素は数気圧まで減少し,そこで平衡します。

二酸化炭素をさらに減少させたものは大陸の出現です。海底に沈殿した石灰岩は地球内部に沈みこむとき,その一部は大陸に取り込まれ固定化されるようになりました。大陸の地殻が石灰岩の貯蔵庫になったわけです。これにより地殻から再放出される循環二酸化炭素量が減少し,窒素を主成分とする1気圧の大気となります。

画像作成中 ■地球はどのような元素からできているのか

ちょっと興味があったので調べてみたら科学技術振興機構の「 理科ネットワーク」にデータが載っていました。質量比でみると鉄=34.6%,酸素=29.5%,ケイ素=15.2%,マグネシウム=12.7%,ニッケル=2.4%,硫黄=1.9%,カルシウム=1.1%となっています。上位4元素で92%を占めています。意外とシンプルな構成なんですね。鉄はほとんど地球の中心にある核に存在しています。また,酸素の大半は大気中や水ではなく,ケイ素やマグネシウムなどと結合して地殻やマントルに存在しています。

地球を形成している元素の組成は宇宙に存在する元素の存在比とは大きく異なっています。現在の宇宙に存在する物質(観測により確認された物質)の大半は水素とヘリウムであり,その質量比は水素75%,ヘリウム25%とされています。陽子(水素原子核)とヘリウム原子核(およびごくわずかの他の元素)はビッグバンで始まった原初の宇宙で生成された物質であり,その存在比は「宇宙論」から導き出されたものです。

酸素,シリコン,鉄など地球上に多い元素はすべて恒星の中で核融合反応により生成されたものです。主系列星(普通の恒星)では質量の大きなものほど中心部温度が高くなるため核融合反応が早く進み,燃料となる重水素を消費します。そのため恒星の寿命は質量の2乗から3乗に反比例します。

太陽の寿命は100億年程度と考えられていますので,太陽の数倍の質量をもつ恒星の寿命は数千万年から数億年程度となります。このような恒星は寿命が尽きる時,超新星爆発を起こし核融合反応で生成した物質を周辺の空間に撒き散らします。同時に爆発による超高密度,超高温のために核融合反応では生成されない鉄より重い元素も生成されます。

地球の元素には鉄より重い元素も含まれていますので,太陽系の元となった星間物質は,それ以前に寿命が尽きて超新星となった恒星の残骸物質も含まれていました。現在の太陽は恒星としては2代目あるいは3代目ということになります。


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