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徒然なるままに > No.10 |
2008/03/15 |
世界で1.5億キロリットルが飲まれるビール
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■世界で一年間に飲まれるビールは2376億本
キリンビールのHPによると2004年の世界のビール消費量は前年より4.2%増加し約1.5億キロリットル(大びん換算で約2,376億本)で19年連続の増加となりました。国別では2003年に1位となった中国が生産量・消費量ともに世界最大のビール市場の名を不動のものにするとともに,昨年を上回る伸びを示しています。健康志向の高まりによりウォッカなどから低アルコール飲料へのシフトがさらに進行を続けるロシアは順位を上げブラジルと同順位に並んでいます。酒は好ましくないとされているためでしょうか,中国と並ぶ人口大国のインドはベスト15にも顔を出していません。一人当たり消費量ではチェコ,アイルランド,ドイツ,オーストラリア,オーストリアが100リットルを越えています。日本の一人当たり消費量は51リットルですから上位の国は日本の2-3倍のビールを飲んでいることになります。
■ビールの原料は大麦ではなく麦芽
ビールの原料は麦芽(モルト),ホップ,酵母,水です。麦芽は大麦を発芽させたものです。大麦の主成分はでんぷんですのでそのままではアルコール発酵はできません。その大麦を一定の条件下で発芽させると自らでんぷん分解酵素を生産して,でんぷんを糖に分解します。
原料のビール用大麦をタンクに入れ1-2日間発芽に必要な水分を吸収させます。発芽室に置かれ4-6日間で大麦は根が粒の1.5倍に芽は約2/3程度に伸び,緑麦芽となります。この間に糖化酵素などが形成または活性化します。乾燥室に入れ緑麦芽を熱風で乾燥させて発芽を止めるとともに,麦芽特有の香りとビールに必要な色素を生成させます。焙燥後に脱根機で根を除いた麦芽はサイロに貯蔵されます。
■麦芽の酵素がでんぷんを糖化する
麦芽を細かく砕き,お湯と一緒に糖化槽に入れます。麦芽に含まれている酵素の働きででんぷん質は糖化されマッシュになります。マッシュをろ過した麦汁にホップを加えて煮沸し,糖化を止めるとともに,香と苦味を引き出します。5-10℃に冷やされた麦汁に酵母が加えられ発酵タンクに入れられます。
酵母の働きにより1週間ほどで麦汁の糖分はアルコールと炭酸ガスに分解され若いビールになります。これを貯蔵タンクに移し,約0℃で数十日間熟成します。この間に炭酸ガスが溶け込みます。ビールのアルコール度数は品種により異なりますが4.5-5.5%程度です。熟成が終わったビールはろ過により酵母が取り除かれてから,ビン・カン・樽などに入れられます。
■日本のビールは少し変わり者
ドイツではビールの主原料として麦芽以外は認められていません。それに対して日本のビールでは糖化の段階で米,コーン,スターチなどが副原料として使用されています。これはおいしくて軽いビールを造るために必要とされています。それに対して一部のブランドは麦芽100%で造られており,オールモルトと呼ばれています。おもしろいことに日本のビールでも大麦を副原料に使用することは認められていません。人間の味覚は人によって異なりますので,麦芽100%がもっともおいしいかどうかは分かりません。日本では消費量から判断すると副原料を使用したビールに軍配が上がりそうです。ヨーロッパ人が日本のビールを飲んだ感想を聞いてみたいものです。
■第2および第3のビールはどうして生まれたのか
日本のビールを複雑にしているものが第2および第3のビールと呼ばれている発泡酒やその他の発泡性醸造酒です。その背景にはビールに対する非常に高い課税があります。通常のビールは350mlカンで190円弱(消費税抜き)で売られています。その中には77円の酒税が含まれています。消費税を含めるとメーカーの希望小売価格に対する税率は46.2%(2006年)になっています。貴金属,香水などのいわゆるぜいたく品に対する物品税は消費税の導入と同時に廃止されましたが,ビールに対する酒税はほとんど変わっていません。これには政府の財政事情があります。2004年のデータでは酒税の総額が16,588億円,このうちビールは51.2%,発泡酒は18.7%を占めています。約11,600億円の財源を減らすわけにはいかないのです。
■日本のビールは世界一高い
この高額な酒税から逃れるため,ビールメーカーでは麦芽の使用率を減らしたものや麦芽以外の原料で擬似ビールを製造しました。それに対して政府は何回か酒税法を改定して第2および第3のビールの酒税を引き上げ税収の落ち込みを防ごうとしています。世界的にみても日本のビールに対する税額は非常に高いといわざるを得ません。そのため,日本は世界でもっともビールの高い国になっています。
徒然なるままに
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