孟海の南20kmにある孟混は小さなタイ族の町であるが,日曜日には大きな市が開かれる。その日は近隣の少数民族の人々が物を売ったり,買ったりするため多数集まり,小さな町は大変にぎやかになる。
町はメイン・ストリート沿いにできているが,それと交わる道路との交差点付近が町の中心部になっている。周辺には高くても3階建てのこぎれいな建物が並んでいる。交差点の左側に市場があり,ふだんでもけっこうな人出となっている。
打洛(50km)→孟混移動
打洛(09:20)→孟混(10:20)とミニバス(11元)で移動する。打洛の汽車站の窓口でキップを買いミニバスに乗り込む。孟混までの風景は変化に富んでいる。しばらくはゴム林が続き,焼畑,水田と変わっていく。タイ式の家屋がある小さな集落をいくつか見た。孟混は幹線道路沿いに二階家が並ぶ小さな町だ。中心部で降ろしてもらい周囲をチェックしてみるが旅社や賓館の看板は見当たらない。
小さな田舎町
宿探しにちょっと困り,近くの人に両手を合わせ頭の横につけて寝るポーズをしてたずねると,指で教えてくれた。僕の泊まった金儀旅社にはシャワーが無く,向かいの共同沐浴室のお世話になった。
部屋(15元)は1ベッド,共同の中国式トイレである。できれば泊まりたくないレベルである。旅社の主人は20元を主張したが,こちらは15元で通した。一休みして周辺をチェックすると,他に茂原,孟混の2つの旅社がある。茂原は新築できれいだ。
明日の日曜市に備えて,市場のあたりを下見する。交差点のところにはたくさんのトラクター車が停まっている。周辺の村から出てくるときはこの乗り物が活躍する。中国経済の発展ぶりを示す「中国移動通信」は,このような小さな町にもちゃんと事務所を構えている。
市場はけっこう人出が多い
市場はけっこう人出が多い。スカーフを被り,巻きスカートの少数民族の女性も多い。スカーフと黒いズボンの組み合わせはハニ族のようだ。黒い帽子,黒い上着,色刺繍の入った黒いスカートという珍しい服装の人もいる。驚いたのは,年配の少数民族の女性が市場で民族服を買おうとしていることだ。これは時代の変化とはいえちょっと寂しい。
水かけ祭りが近いので,タイ族の女性もたくさん買い物をしている。服地屋ではおばさんがきれいな布地を体に巻いて,似合うかどうかをチェックしている。お祭り用の晴れ着を求めいているのであろうか。「これどうかしら」,「お客さん,よくお似合いですよ」,そんな会話が聞こえてきそうな光景である。
荒起こし
市場の下見を終え,打洛の方向に歩き出す。すぐに田園風景に変わる。幹線道路を外れ,竹林がたくさん見える所に向かう。小さな池があり,あひるがたくさん泳いでいる。
背景は日本の孟宗竹ほどの竹が群生している。日本の竹は地下茎によりある地域に均等に生えるが,こちらの竹は株を作り,その中にだけ生える性質をもっている。そのため,巨大な竹の株を形成することになる。
池の向こうは乾いた農地になり,その向こうに用水が流れている。近くには塀に囲まれたかなり大きなタイ族の伝統家屋がある。雨季米の季節が近いので,固くしまった農地の荒起こしが始まっている。
水を入れられていても粘土質の土は粘りがあり,小型の手動トラクターを使用しても難しい作業のようだ。農民はときどきトラクターを止め,鋤の刃の角度を調整し再び動かす。かなりの力を要する作業である。周辺には鋤を引く労働から解放された牛がのんびりと草を食んでいる。
用水路の先にはゆうに片側2車線はある広い道路が建設されつつある。たぶん高規格道路であろう。中国では信じられないくらい急ピッチで立派な道路が建設されつつある。
国土が広いうえ,土地は国家のものなので,道路建設の障害になるものは何一つない。集落があろうと,畑があろうと立派な道路が国土の隅々まで造られている。
小さなキャベツ畑とトマト畑
もとの道路に戻り,別の畑のほうに歩いていく。ゆるやかな斜面になっており,そこに小さなキャベツ畑とトマト畑がある。夫婦と思われる男女が水をやっている。男性はポンプを使い,ホースで水をまいている。女性は昔ながらのバケツとひしゃくで水をやっており,これは絵になる。乾期の野菜栽培は大変のようだ。近くのため池の水も残り少ない
夕方の小学校
小学校はけっこう立派だ。門のところに「祖国在我心中」と大きく書かれていた。チベット自治区,新疆ウイグル自治区を抱える中国では少数民族問題は共産党政権の一大関心事である。
この二つの民族は歴史的に漢人の王朝とは距離を置いていたし,宗教を実質的に禁止する共産党とも対立してきた。しかも,現在の自治区はまったく名ばかりで,政治・行政の権限は(漢人の)共産党員に握られている。
ここ雲南でも少数民族の子弟が多い学校では中国を祖国と感じさせる政策がとられている。この学校にはタイ族の子どもたちと漢人の子どもたちが一緒に学んでいる。タイ族の女子は民族服を着用しており,男子は服装の差はない。
大きな差異は写真に対する反応である。漢人の子どもたちは写真大好きだ。しかし,タイ族の子どもたちは男女とも写真に対してとてもシャイで,カメラを向けると一目散に逃げ出してしまう。
この学校でも通学できないほど遠距離の村から来ている子どものために寄宿舎が設けられている。17:30から夕食の時間になる。子どもたちは大きなホーロー引きのカップをもって食堂に向かう。
早朝の小学校 その1
翌朝は明るくなるのを待って小学校に行く。こんな小さな町でも小学校は立派だ。今日もタイ族の子どもたちは写真にならない。一方,校庭であそんでいる漢人の子どもたちは写真大好きである。
早朝の小学校 その2
集合写真を撮ってから,ジャングルジムにカメラを向けると,集合写真の子どもたちが先を争って登り出した。フラッシュなしのためシャッタースピードが遅い。動かないで,動かれるとブレてしまう。
孟混日曜市の風景 その1
小学校から市場のほうに向かう。周辺から少数民族の女性たちが集まってくる。彼女たちにとっては週に1回の市は,現金の稼ぎ時であり,一種のレクレーションでもあるようだ。
トラクター車から降りた晴れ着の彼女たちは早速商品を道路に並べる。赤と青の色鮮やかな上着の女性たちはタケノコを並べている。黒い上着,黒いスカートのおばあさんがすぐに商品を吟味する。このおばあさんたちはとても絵になる。
屋根付きの市場ではサニ族の女性たちが魚を吟味している。母親と一緒の13才くらいの女の子は背負い籠を下ろして一休みしていた。
生鮮食品,肉,雑貨,生活用品が市場の内と外で商われている。周辺に暮らす少数民族の女性の晴れ着も見られる。この日曜市の光景は一見の価値がある。
孟混日曜市の商品
雲南の市場ではにわとりとアヒルのヒナが同じように売られている。販売数も同程度である。アヒルのヒナはとてもかわいい。大きな籠の中を覗いてみると黄色のぬいぐるみが動いている。突き出した平たいくちばしがとてもキュートだ。
籠の中に手を入れるとエサだと思うのか,ちいさなクチバシで盛んにつつかれた。ふわふわした綿毛の感触がたまらない。日本では選別され不要になったオスのヒヨコが縁日などで売られているが,かわいさという点ではアヒルのヒナに軍配があがると思う。
水かけ祭り用の盛装の女性たち
そろそろ景洪の水かけ祭りが始まる。祭り用のそろいの晴れ着を着たタイ族の娘さんが通る。ぴったりとしたブラウスとスカートはそろいのピンクである。中国服のように体の左側で留めるタイプのブラウスもある。
この衣装で景洪に出かけるのであろう。声をかけると3人は写真に納まってくれた。ちゃんと眉を描いて薄化粧をしている。お化粧の世界でも,グローバリゼーションが確実に進行しているようだ。