ゼネストの日常
高さ3mほどのワタの木があった。栽培されているワタは一年草あるいは多年草であるがここちらは本木であり,ワタと同じような葉をもち,ワタのような実を付ける。ワタとはアオイ科ワタ属(Gossypium)の植物の総称である。栽培種のワタの起源はいくつかの説があり判断は難しかった。ここでは「くらしの植物苑観察会」の内容に沿って説明してみる。
世界の栽培ワタはアフリカ起源で,インドに伝播して多様な栽培種となった「アジアワタ」と中米・南米起源の二種がある。インドで栽培される本木の「キダチワタGossypium arboreum)」から一年草の生活形をもつ栽培ワタが作り出された。僕の見たものは「キダチワタ」のようだ。ワタの繊維を木綿というのは,その昔にキダチワタからワタを作っていた名残かもしれないと勝手に推測してみた。
クワ村の入り口ゲートの少し先に空港があり,その横に村がある。空港施設は金網で囲われているが,人がなんとかかかんで通れるくらいの裂け目があり,村の女性たちは施設内に入り草を刈っている。
そこは一級品の草刈場になっており,管理された状態で開放すると,草刈の手間も不要となり,村人も助かるということになるのだがそうはいかないようだ。警察の姿が見えると女性たちは一目散に金網の外に出る。この光景には笑うしかない。
村にはたくさんの牛が飼育されていた。この牛たちのため大量の青草が必要となり,女性たちは金網の向こうで草を刈ることになる。この村にはオオギヤシやナツメヤシの木がたくさんある。目的は酒造りである。
オオギヤシは花房を切ると甘い樹液が染み出してくる。それを容器に受けると,そのまま発酵してアルコール分の少ない酒になる。甘みがありアルコール度数も少ないので子どもでも飲むことができる。
ナツメヤシは幹を削られてしまう。そこから樹液が染み出してくるのでそれを容器で受ける。こちらは本体が傷つけられるので気の毒だ。何本かの木に素焼きの容器が取り付けられている。
子どもたちの写真を撮る。集合写真にすると最初から男女に分かれてくれる。男の子もとても行儀がよい。写真のお礼に小さい子から順にヨーヨーを作ってあげる。家の庭に台があったのでそこで作業をする。男の子は大きいのでヨーヨーが当たらなくても文句も出ない。次はこの子だよと割り振りをしてくれる。
最初は5個の予定であったが,小さい子が増えたのでこの家では8個作ることになった。最初の家から出るとすぐに次の家でヨーヨーを作ることになった。今度は3個である。机を借りた家の前は子どもや子連れの母親で埋まっている。
ジャナク・チョークに面した食堂で夕食をとっていたら,外が騒がしくなった。ゼネストの人々が気勢を上げており,従業員はあわてて門の鉄製の扉を閉めていた。下の鉄格子のすき間から炎が見える。これでは扉から外に出るのは危険だ。建物の横から隣の建物の背後に回り,その横から外に出た。
タイヤが燃やされ,その周囲をデモ隊が取り巻いている。北東に向かう道路には自転車のタイヤを細く切ったものを松明にしたデモ隊が一列に並んでおり,何かことが起きるとかなり危険な状態だ。警察はチョークに詰めており,この程度は許容範囲のようだ。デモの後はタイヤの燃え残り散乱し,翌日にチェックすると,それらはゼネスト支持者により清掃された。