ラバングラ(シッキム) (地域地図を開く)
メナム・ヒルへのトレッキングの拠点,あるいは南および西シッキムへの通過点となる町である。ガントク方面からジープで来ると,道路は「Sの字」を描くように,レグシップに向かい,S字の中心にラバングラの中心部がある。旅行者がある程度訪れるらしく,いくつかの宿泊施設がある。たまたま,ここでツーリスト・フェスティバルがあるというので立ち寄ってみた。
メナム・ヒルへのトレッキングの拠点,あるいは南および西シッキムへの通過点となる町である。ガントク方面からジープで来ると,道路は「Sの字」を描くように,レグシップに向かい,S字の中心にラバングラの中心部がある。旅行者がある程度訪れるらしく,いくつかの宿泊施設がある。たまたま,ここでツーリスト・フェスティバルがあるというので立ち寄ってみた。
ルンテック(07:30)→ガントク(08:30)→シンタム(09:30)→ラバングラ(12:30)と90kmを乗り合いジープ(105Rp)で移動する。ルンテック僧院のゲートを出るとガントク行きのジープ(25Rp)が並んでおり,僕が乗車するとすぐに発車した。今回は2列目の座席なので快適である。
ジープはショッピングセンターのジープスタンドに到着する。ここからプライベート・ジープスタンドまで歩く。建物の屋根と地下におどろくほどたくさんのジープが並んでいる。ラバングラ行きのジープは時間が合わないようだ。代わりにシンタム(30Rp)乗換えで行くことにする。このようなとき,観光案内所でもらったシッキム地図はとても役に立つ。
ダージリンから来たときの道を戻り,標高300mのシンタムに到着する。シンタムは大きな町でメインストリートの両側にジープが並んでいる。とりあえず近くの食堂で遅い朝食をとり,客引きにラバングラ行きのジープ(50Rp)を教えてもらう。
フロントガラスには確かに「シンタム→ラバングラ」のプレートが見える。30分ほどでジープは動き出す。町を出るとどんどん高度を上げていく。向かいの斜面に棚田が見える。ここも雄大な景色で晴れていればいい写真になるだろう。およそ2時間で標高2000mのラバラングラに到着する。
ラバングラ中心部の交差点はT字路になっている。ガントクからの道路はTの左に,レグシップに向かう道路は右にあたる。Tの下のラインがメインストリートになっている。交差点近くおよびTの右側の通りの周辺に宿屋はたくさんある。
僕はT字の交差点の上にあるHotel Silver Fir に泊まることになった。特にここを選んだ理由はなく,最初に目に入ったホテルは満室ということので断られたので,その次に見つかったこのホテルを訪ねてみた。
1階の暗い部屋が250Rpと言われ,次を探す素振りをみせると200Rpに下がった。部屋は10畳,ダブルベッド,T/HS付きで清潔である。ただし,電気が不足しているのか照明は小さな蛍光灯だけのためとても暗い。
交差点からメインストリートを歩いていくと,左側の商店の裏手に大きな広場があり,周辺には市場がある。広場は子どもたちの遊び場になっており,子どもたちの写真を撮るにはとても良い場所であった。
近くの家の屋根に登って斜面に並ぶ家々の写真を撮っていた。近所の窓が開きおじさんと目が合ってしまった。ちょっと気まずい,軽く会釈をして写真の許しを得る。
最初の夜,街の中心部でツーリスト・フェステバルの会場を探してみたが,どこにもない。標高が高いので日が落ちると急に寒くなってくる。部屋で日記を書いていると,足元が冷えてくる。寝るときはフトンを2枚にして寝た。朝は日の光が届くと急速に暖かくなり,半袖+長袖フリースで十分である。
ガントクの観光案内所でもらったガイドマップによると,ラバングラの近くには「Maenam Hill」という自然保護区がある。距離は分からないが今日はそこに行くことにしよう。
歩き出すとちょうど朝の登校時間であった。制服の子どもたちが学校に行くために友達の家に集まっている。カメラを向けると素敵な笑顔が返ってくる。画像を見せてあげると驚きの表情を見せてくれる。この声を聞いて斜面の下の方から別の子どもたちが上がってくる。年長者には悪いが,やはり小さな子どもたちのほうがいい絵になる。
「Maenam Hill」に行く途中でフェスティバルの会場が見つかった。道路の枝道のところに飾られたアーケードが目印となった。コンクリートの道を降りていくと大きな池があり,その周りが会場であった。道端に大きなクサソテツが生えている。葉の開いていないゼンマイの部分も巨大だ。成長したものは高さ2mにもなる。
入口近くには鉢植えのランやこの地域の植物が展示されている。「ガントクのFlower Show 」に引き続き,ここでもすばらしいランを見ることができた。
見事な黄色のランがやピラミッド状につぼみをつけた「白い桔梗のように可憐な花」もあった。この花も印象に残るものだ。
この他にも30鉢以上の蘭があり,大いに楽しむことができた。シッキムにおける花のシーズンは3-5月と記載されているので,花好きの人はこの時期に来られることをお勧めする。
池の右側にはシッキムの各民族の伝統料理の店や,ハンド・クラフトの店が並んでいる。まだ,時間が早いせいか客が少なく,店の人も集まっていない。9時を過ぎると少しずつ人が集まってくる。みんなよそゆきの服装なので快く写真に入ってくれる。
フェスティバルでは民族衣装のイベントもあるようだ。フェスティバルの会場を一回りして「Maenam Hill」に再び出発する。池の上の道路に出ると車から民族衣装の女性たちが出てきた。珍しい服装なので国を聞くとネパールとのことであった。
「写真はOKですか」とたずねると「もちろんよ」という返事が返ってきた。フェスティバル用の盛装なので写真に対して積極的である。7名の民族衣装女性と3名のつきそい女性まで撮ることになった。お互いにありがとうとお礼を言い,僕は再び自然保護区を目指して歩き出す。
山道の手前の集落ではコンクリートで家造りが行われていた。たくさんの村人が工事を手伝っている。僕が到着したときちょうどにごり酒がふるまわれていた。コメから作る酒で,チベットやネパールではチャン(ネパール語ではジャール)と呼ばれているものであろう。ちょっと舐めさせてもらうと,どぶろくを少し酸っぱくしたような味だ。アルコール分はビールより低いかもしれない。
ネパール,シッキム,ブータン,中国の雲南,長江の南部,西日本は比較的温暖な気候に恵まれ,共通の文化圏に属しているとする学説がある。この地域には温暖な気候を好む照葉樹が多いので「照葉樹林文化圏」と呼ばれている。
この地域の共通文化としては根栽類の水さらし利用,養蚕,焼畑農業,モチ食,麹酒,納豆など発酵食品,漆器,歌垣,お歯黒,入れ墨,家屋の構造,服飾などがあげられている。
チャンは麹酒の一種で,蒸米(炊米),麹,天然酵母を使用している。これは現在の日本酒の造り方と同じである。もちこんコメ以外の雑穀(シコクビエが多い)でも同じ製法で酒は作られており,こちらはトンバと呼ばれている。また,これらの蒸留酒はロキシーと呼ばれている。
集落がなくなり,気持ちの良い山道になる。しかし,ちょっと雲行きが怪しくなる。遠くからドロドロと雷鳴が聞こえてくるし,黒い雲がやってくる。民家が無いところで雨に会うと悲惨なことになる。
危惧していた通り,保護区に少し入ったところで雨になった。道路わきのガケの下でしばらく雨宿りをする。樹木とシダ類のおかげで雨にはあたらない。しばらく待ったが,雨はやみそうもない。急いで斜面をショートカットして民家に逃げ込む。
民家の軒先に避難したらすぐに大粒の雨になった。2-3分で雨は1cmほどもある大粒の雹に変わる。まともにむき出しの体に当たると痛いくらいだ。これはかなわないと建築中の家の1階に逃げる。工事の人たちもこの場所に避難してきた。
気温は急速に下がり,長袖のシャツを着込む。その上から長袖のフリースを着ても肌寒い。一緒に避難している人々も寒そうだ。日本式にブルブルと寒いしぐさをしてみせると彼らもうなずく。地面はすぐに白くなり,盛りの菜の花が一層あざやかに見える。
雹に会ったためフェスティバルの会場に戻った。ごはんを食べようと民族別に店を出している一画に行ってみる。レプチャ,ネパール,ブータン,シェルパ,グルカ,ベンガリの店が出ている。四国ほどの面積のシッキムに,これほどの民族が存在しているのだ。
シェルパ・ハウスで昼食をいただく。メニューはビーフ・モモとお茶である。どちらも暖かいのでありがたい。シェルパの民族衣装の人々が年配者の指導で何か儀式を行っている。となりのグルカやブータン・ハウスでも民族衣装のオンパレードであった。
チェックアウトのとき請求書には10%のサービスチャージがついていた。「そんな話は聞いていない,一体何に対するサービスなんだ」,そのように抗議するとあっさり請求書は変更された。インド人の経営ではよくある話だ。
レグシップ行きのジープを見つけ荷物を屋根に乗せる。満席になるまで(1時間くらい)発車しないと告げられ近くを散策する。下の斜面でヒマラヤが見える,初めて見る東ヒマラヤである。右がナスリン,左端がカブール,カンチェンジュンガは雲の中だ。