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2008/03/15

生命の誕生と40億年の進化


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■生命の誕生(40億年前)

現在の学説では地球が誕生してから6億年ほど経った頃(40億年前),海で生命が誕生したといわれています。当時の地表は強い紫外線や荷電粒子が容赦なく降り注ぎ,生命にとっては致命的な環境でした。生命が存在できる環境は海中だけでした。

原始の海には生命に必要な有機分子(アミノ酸,核酸塩基,糖,脂肪酸,炭化水素など)が豊富に存在していたと考えられています。それは,星間物質に含まれ小天体と一緒に地球に到達したものもあれば,紫外線,荷電粒子,落雷などにより活性化されていた地球の原始大気中でできたものかもしれません。起源はどうあれ生命の素材に溢れていた原始の海で生命は誕生しました。

アミノ酸が化学的にくっついたり離れたりしている中から,しだいにたんぱく質と核酸を薄い膜の中に収め,自己の形を持ち増殖することが出来るようになったと考えられています。生命は身近にある材料を組み合わせて誕生し,その基本構成は現在まで受け継がれています。

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生命の増殖に必要なエネルギーの観点から考えると,最初の生命が誕生した場所は海底火山の熱水噴出口付近であると学説が有力です。マグマと接触した熱水には多くの硫化水素や二酸化炭素が含まれており,原始生命はそれらを還元してエネルギーを得ていたようです。

現在でも海洋底中央海嶺にある黒い煙のような熱水を噴出する環境では硫化水素を還元してエネルギーを得ている原始的なバクテリアが存在しており,暗黒世界に小さな生命圏を形成しています。もっとも,生命の誕生はいつも順調だったわけではありません。40億年前にはまだ微惑星の衝突が続いており,せっかく誕生した生命が破壊されることも何回かあったと考えられています。

■シアノバクテリアの出現(32億年前)

数億年ほど生命はさしたる進化をせずに自然に化学合成された有機物を利用して細々と命をつないできました。しかし,32億年前に光を使用することによってエネルギーとなる有機物を作り出す光合成細菌(シアノバクテリア)が出現しました。しかもシアノバクテリアは光合成で有機物を合成するとき水素を必要とするため,水を分解し廃棄物として酸素を放出したのです。この新しい生物は自分で有機物とエネルギーを作ることができるため,海底火山の周辺からその生息範囲を一気に拡大することができました。

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シアノバクテリアの直接の子孫にあたるストロマトライトは現在でもオーストラリアの西海岸のハメリンプールと呼ばれる浅い海で生息しています。写真のようにほとんど岩のように見えますが,内部は層状になっており,毎日少しずつ周囲の砂を粘液で固定しながら成長しています。そのため,成長したストロマトライトはマッシュルームのように上にいくほど大きくなります。この海は乾燥地帯に位置し,かつ外海との海水の出入りが少ないので,塩分濃度が非常に濃くなります。このような環境では他の生物との競合が少ないので古い生物が生息できるようです。

■磁気圏の形成(27億年前)

さらに,27億年前に地球環境に大きな変化がありました。鉄やニッケルでできた地球の核がゆるやかに流動し磁気を作り出すようになりました。あたかも地球が一つの磁石であるかのように,地球を磁気のバリアが包むようになったのです。それまで太陽風として地球まで到達していた生命に有害な荷電粒子(主に陽子・電子)はこの磁気圏のバリアに遮られるようになりました。まだ致命的な紫外線は地表まで到達していますが,紫外線の届かない海面近くの環境でも生命が存在できるようになったのです。これにより,光合成を行うシアノバクテリアはより安全に,より活発に増殖できるようになりました。

■鉄の酸化と酸素の増加(27-20億年前)

海水中に放出された酸素はまず海水中に溶け込んでいた鉄を酸化するのに使用されました。27-20億年前の短期間に膨大な鉄は酸化鉄となって沈み,当時の海岸は鉄さびにより真っ赤に染まったことでしょう。現在,人類が利用している鉄はこの時代に堆積した鉄鉱層に由来します。そこでは 厚さ0.5-3cm,鉄含有量が数10%の層が積み重なり,数10mから数100mの厚さの地層となっています。鉄鉱石の埋蔵量は約1500億トン,その70%はロシア,ウクライナ,オーストラリア,中国、ブラジルの五カ国にあります。鉄の酸化が一段落すると海水中の酸素濃度は上昇していき,生物の世界にも大きな転機が訪れました。酸素は物質を酸化するため,それまでの生物にとっては猛毒の物質だったのです。

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■猛毒の酸素が生物の進化を促した(20億年前)

この時点で生物界には@自然にある硫化水素などの栄養資源を分解してエネルギーを得る古細菌,A自分で栄養を生産するように進化した化学合成細菌,光合成細菌酸素利用細菌などの真生細菌,B海底にたまった有機物を食べるように進化した原始真核生物の3つのグループが出来ていました。

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細菌類は原核生物に分類され,核(遺伝子の入れ物)と細胞質の区別がありません。そのため小さな体に最小限の遺伝子を持ち,増殖スピードを重視する戦略をとりました。一方,原始真核生物は栄養を自分の体内に取り込んで消化するために細胞を大きくさせていきました。細胞膜の発達と共に次第に核の構造をつくり,大量の遺伝子を持つことを可能にしました。当初,原始真核生物は酸素のない海の底で暮らしていましたが,酸素が増えることによりその脅威にさらされるようになります。あるものは酸素の少ない環境に逃避しました。しかし,あるものは「異なる生命と共生する」道を選びました。

■合体により真核生物が誕生する(20億年前)

当時の細菌の中には酸素を利用してエネルギーを作り出すものがいました。原始真核生物のあるものはそのような細菌を体の中に取り込み,共生することにより酸素を利用できるように進化しました。それにより,それまで毒物であった酸素を利用して大きなエネルギー(酸素を使わない場合に比べて約20倍)を獲得する能力を身に付けたのです。また,光合成を行う細菌と合体し共生するようになったものも出てきました。このような進化は多くの試行錯誤の中から偶然生存に都合のよいものがでてきたと考えられています。

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生物の進化とは何か目的化あるいは方向付けされているものではありません。多くの失敗の中から,たまたま酸素という新しい環境に適応できるものが生まれたのです。こうして,20億年前に本格的な真核生物が誕生します。光合成細菌を取り込み,光合成能力をもった真核生物の中から植物へと枝分かれをしていくものが現れます。一方,光合成能力をもたなかった真核生物は積極的に栄養を取り込んでいかなくてはいけないため運動能力を発達させ,動物へと進化していきます。

■多細胞生物の出現(14-10億年前)

真核生物はその後の数億年は単細胞生物として存在していましたが,14-10億年前に多細胞生物が生まれました。最初は単なる細胞の集合体であったようです。そのうち細胞がそぞれぞれ特別の機能を果たすようになったと考えられています。最初の多細胞動物は現在でもタコやイカの腎臓内に寄生するニハイチュウのようなものであったと考えられています。ニハイチュウを構成する細胞に数はふつう22個であり,多細胞動物の中でもっとも少数の細胞からなる動物です。多細胞生物の出現は生物の複雑化,大型化への道を開き,9億年前に始まったとされる有性生殖という新しいシステムを採用することにより,やがて多彩な生物へと進化していくことになります。

■カンブリア爆発(5.5億年前)

5.5億年前,カンブリア紀に動物進化史上最も重要な出来事が起こりました。それまで数十数種しかなかった動物が突然,500万年という極めて短期間のうちに数万種にまで爆発的に増加しました。そのためこの進化の大イベントは「カンブリア爆発」と呼ばれています。カイメンなどごく限られた多細胞動物がカンブリア動物の原型であろうと考えられています。そこから現在の動物の分類基準となっている「門」に相当する動物の原型がすべて出現しています。カンブリアの動物は非常に多様であり,今日の動物とは似ても似つかぬ奇妙な形をしているものも数多く見られます。その多くは現在では絶滅しており,この時期はまさに進化の実験場だったのです。この時代の化石から推定される動物たちの姿と生態については「 生命の海科学館」に詳しく記載されています。

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なぜこの時期に突然急激に動物の種類が増加したかについては,環境の変化と捕食動物の出現が生物の多様性を促したとされています。カンブリア紀の前には地球が凍結するほどの大氷河期がありました。この時代からカンブリア紀になって温暖化したため海水面が上昇し,暖かい浅い海が新たに形成され,多様な動物が生息する新しい環境が出現したと考えられています。また,強力な肉食動物が現れ,弱い動物はそれから逃れるためいろいろな手段を講じたと考えられます。

■生物の大繁栄(4.1億年前)

カンブリア爆発を経て,生物の進化は加速します。細胞内にある核という器官に大量の遺伝子を貯蔵できるようになったことがその要因としてあげられます。細菌類は生存に最小限必要な遺伝子しか持たなかったため,劇的な変化をすることなく現代に至っています。それに対して,真核生物は現在必要としない遺伝子をどんどん取り込むようになり,進化の可能性の範囲を広げました。カンブリア爆発で生まれた原始的な脊椎動物である魚類は当時の海で軟体動物のベレムナイト(イカの仲間)とともに海を支配するようになりました。

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■オゾン層の形成と生物の陸上への進出(4-3億年前)

海で生産された酸素は少しずつ大気中に放出されます。成層圏に達した酸素は紫外線により活性化されオゾン(O3)層を形成するようになります。オゾン層は生物にとっては大変有害な波長の短い紫外線を吸収します。有害な紫外線が地表まで届かなくなったので,生物が陸を目指す環境は整いました。

しかし,植物にとっても動物にとっても,重力と乾燥に支配されている陸に進出するのは大変なことだったでしょう。それでも,4億年前には植物,節足動物,そして少し遅れて脊椎動物も陸上進出を果たしました。新しい環境の中で生物はさらに進化を続けます。3億年前にはシダ植物が水辺に大森林を作り,巨大な昆虫がその中を飛び回っていました。現在では化石にしか残っていないそれらの植物は,現存の木性シダ(右側の写真)と似たようなものだったのでしょう。この頃はセルロースからできている木質部を分解する生物が十分進化していなかったため,大森林はそのまま地中に埋もれ,熱と圧力により石炭に変化していきました。

■恐竜の大繁栄(2億年前)

2億年前には恐竜が現れ,陸上世界を支配するようになります。1億5000万年もの間恐竜は繁栄を続け,アパトサウルスは体長21m,体重30トンにも達しました。恐竜の仲間はすべてがそのように大型だったわけではありません。小型の恐竜の中で2足歩行をするものはうろこを羽毛に変化させ,しだいに飛翔する能力を身に付け鳥類が誕生しました。こうして生物は地球のあらゆる場所に生息範囲を広げていきました。

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日本でも福井県勝山市北谷において獣脚類やイグアノドン類をはじめとして多くの恐竜化石が発掘されています。発掘現場からは恐竜の足跡化石も見つかり,たくさんの恐竜の群れが生息していたことが明らかになりました。その縁から福井県には県立恐竜博物館があり,そこのHPには恐竜の復元標本のデータベースがあります。詳細は「 福井県立恐竜博物館 」を訪問してください。

■大絶滅は何回か発生した

多くの場合,環境の変化は生物進化のトリガーになります。しかし,生物の適応能力を超える大変化があった場合,多くの生物種は生き延びることができませんでした。生物種の過半数あるいは95%が死滅するという大絶滅は地球史において何回か発生しています。
(1) 5.7億年前  :原生代末期の大絶滅
(2) 4.4億年前  :オルドビス紀の大絶滅
(3) 3.7億年前  :デボン紀後期の大絶滅
(4) 2.5億年前  :ベルム紀末の大絶滅
(5) 6500万年前:白亜紀末の大絶滅,恐竜時代の終焉

ベルム紀末には地球史上最大規模とも言われる大量絶滅が起こりました。このとき全生物種の90%から95%が絶滅したと考えられています。その原因として現在もっとも有力とされているのがスーパープルームが地殻を突き破って地球史上例のない大量の溶岩が噴出したという説です。「 スーパープルーム」とは下部マントルの高温の物体が地球表層に湧き上がってくる現象です。

この巨大な高温物質は2.5億年前にロシア東北部・中央シベリア高原を中心に噴出し,その結果,150万km2の範囲に洪水玄武岩層が形成されました。噴火は何回か発生し,その総量は富士山が過去1万年間で噴出した溶岩量の10万倍程度と見積もられています。火山灰を吹き上げる爆発的な噴火ではありませんが,この火山活動により大量の火山ガスが放出され,地球の気候は激変します。また,海底のメタンハイドレードの相当部分が崩壊して大気中に大量のメタンが放出され,それが酸素と結びつくことにより,大気中の酸素は半減しています。

白亜紀末の大絶滅は小天体の衝突によるものであるという学説は現在では広く支持されています。その直接的な証拠として,メキシコ・ユカタン半島で6500万年前の巨大なクレーターが発見されています。また,世界中の白亜紀と古第三紀の境界層には隕石起源の大量のイリジウムが発見されています。直径10-15kmの隕石が秒速20kmで当時は浅海だった地表に衝突しました。衝突のエネルギーは広島型原爆の約10億倍に相当し,大気中に拡散した大量のちりが太陽光を遮断しました。気温の急激な低下,光合成を行う植物の死滅などの結果,恐竜をはじめ多くの生物種が絶滅しました。

しかし残りのものについては時代が古く,直接的な証拠が見つけづらいこともあり,絶滅の理由ははっきり分かっていません。いずれにしても,生物は大きな危機を何回も経験しながら,現在に命を引き継いできました。

■哺乳類の時代(6400万年前〜)

1.5億年にもわたる恐竜の時代にも哺乳類の先祖は存在していました。大きさはネズミほどで夜行性であったと考えられています。昼間活動し豊富な食料に恵まれていた恐竜は巨大化への道を歩みましたが,その間,哺乳類は少なくとも外観上はさしたる進化をしていません。しかし,恐竜の時代の終わり頃には小さな犬ほどの哺乳類が恐竜の子どもを食べていたことが分かっています。また,夜行性の哺乳類は脳を発達させ敏捷な運動機能も手に入れました。

約6400万年前に恐竜が絶滅するとその空白を埋めるように哺乳類は爆発的に進化し,多種多様な種が現れました。恐竜という最大の競争種が絶滅したことにより,哺乳類が新しい時代の最強種となり「適応放散」していった結果であると考えられています。草食のもの,肉食のもの,大きなもの,小さいなもの,樹上で暮らすもの,水中で暮らすもの,空を飛ぶもの…,哺乳類の世界はその前の恐竜の世界と非常に類似しています。

■生物の多様性を守る

現在,地球上にはどのくらいの生物種が存在するかは正確には分かっていません。およそ400万種から4000万種と見られていますが,人類が分類した生物種はこれまで180万種に過ぎません。人類だけが非常な勢いで数を増加させ,地球上のあらゆる場所に進出している一方で,その生息場所を狭められたり,乱獲により絶滅の危機に瀕しているものも少なくありません。人類がこのまま他の生物を圧迫し続けるならば,現代は「人類が引き起こした大絶滅の時代」と呼ばれることになるでしょう。40億年にわたる生命の歴史を今に伝える生物の多様性を次の時代に引き継いでいくのは人類の責務です。

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