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2008/03/15

アルコール発酵


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■酸素が少ないと発酵が行われる

酵母菌は嫌気状況(酸素の少ない状況)ではアルコール発酵を行って,ブドウ糖をピルビン酸を経由してエタノール(エチルアルコール)と二酸化炭素(炭酸ガス)に分解し,生存や増殖に必要なエネルギーを得ます。このように微生物が無酸素状態で糖を分解することを発酵といいます。ちなみに私たちになじみの深い乳酸菌は乳酸を作ります。
(1) C6H12O6 → 2 C2H5OH +2 CO2 + 2APT
(2) C6H12O6 → 2 C3H6O3 + 2ATP
(3) C6H12O6 + 6 O2 → 6 CO2 + 6 H20 + 38ATP

(1) がアルコール発酵,(2)が乳酸発酵,(3)が有酸素状態でブドウ糖が燃焼したときの反応式です。ATP(アデノシン3リン酸)は生物の体内でエネルギーを必要とする反応過程には必ず使用される物質で,生物のエネルギー通貨です。生物がエネルギーを得るということは食物あるいは自分が光合成した物質からATPを産生することを意味します。アルコール発酵では2個のATPしか得られませんが,クエン酸回路による有酸素燃焼では平均して38個のATPを得ることができます。

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■酵母菌も酸素のあるとことではクエン酸回路を使用する

酵母菌も酸素が十分ある環境ではアルコールはほとんど作らず効率よくエネルギーを得ることができます。分かりやすいようにぶどう糖1gから得られるエネルギーで説明すると,酵母菌はアルコール発酵で約80cal,有酸素燃焼では約1,460calのエネルギーを得ることができます。1gのぶどう糖を完全に燃やすと約3,800calのエネルギーが得られるので酵母菌の燃焼効率は38%になります。ということで酵母菌には気の毒ですが,アルコールを作るためには酸素の少ない環境で活動してもらう必要があります。

■ぶどう糖からエネルギーを得る仕組みは生物共通

余談ですがぶどう糖を分解してエネルギーを獲得する仕組みはほとんどの生物で共通しています。私たちの体内でもぶどう糖はピルビン酸に解糖され,アセチルCoAという物質を経由してTCAサイクルに入りATPを産生するともに二酸化炭素と水に分解されます。体内でぶどう糖が不足すると脂肪が分解され,脂肪酸を経由してアセチルCoAが産生され,脂肪がエネルギーに変わります。タンパク質もある程度分解された後はTCAサイクルに入りエネルギー源になります。

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