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2008/03/15

砂糖の原料作物と製造工程


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■砂糖の消費

砂糖(ショ糖)は,サトウキビ,テンサイ,サトウヤシ,サトウカエデなどの搾り汁あるいは樹液を煮詰めたり濃縮することにより作られます。世界的にみるとサトウヤシやサトウカエデから作られるものはごく少量です。世界中で1年に生産される砂糖は約1.4億トンでこのうち65%はサトウキビ,35%はテンサイから作られます。主食となる穀物(コメ,小麦,トウモロコシ)の生産量は約20億トンですから,砂糖は人が食べる穀物に対して無視できないエネルギー源となっています。日本人は昔に比べて砂糖分をたくさん消費していますが一人当たりの消費量で比較してみると,先進国では最も少ないようです。逆に所得が低くても,ブラジル,キューバなどの生産地は日本の3倍近い砂糖を摂取しています。

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■砂糖の原料作物

砂糖生産の2大作物のうちテンサイは主として冷涼な地域で生産されます。日本ではサトウダイコンとも呼ばれており,ダイコンのように肥大した根の部分に約16%の糖分を含んでいます。サトウキビは亜熱帯から熱帯地域で生産され,竹のように直立した茎の部分に約15%の糖分が含まれています。どちらも自然の産物なので栽培環境・方法,気候などにより含有糖分は変化します。

南北に細長い日本では北海道でテンサイが,奄美諸島や沖縄ではサトウキビが生産されています。日本の砂糖自給率は約35%で小麦(14%),大豆(4%)に比べるとずっと高い数値になっています。生のものをかじってみるとサトウキビは確かに十分に甘く,おやつの代わりにすることができます。東南アジア,中国南部,インドでは2mほどのサトウキビが1本単位で売られています。子どもたちは30cmほどに切ったサトウキビをかじり,甘い汁を吸い取り,カスを吐き出しています。一方,テンサイはほとんど甘みはなく,生ぐささも加わりとてもおやつになる代物ではありません。

■サトウキビの収穫と砂糖の製造

サトウキビは竹のようにすらりと直立した茎をもち,そこからススキのような葉がたくさん出ています。花もススキそっくりです。実際サトウキビにもっとも近年の植物はススキであると言われています。サトウキビを刈り取り,先端部の葉と茎に付いている枯葉を取り除き,茎だけの形にして製糖工場に搬送します。

世界の主要なサトウキビ生産国では人件費が安いため主として人力で収穫が行われます。ヨーロッパ諸国が植民地経営に乗り出した時代,カリブ海の島では大規模なサトウキビのプランテーションが作られまし た。その農園で働いていたのは奴隷貿易でアフリカから連れてこられた人々でした。そのような仕組みは「砂糖のあるところに奴隷あり」といわれるほど常態化していました。現代でも半奴隷的なサトウキビ農園は残っています。

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        <日本のサトウキビ農園>                 <砂糖の二大作物,サトウキビとてんさい>

日本ではサトウキビの収穫は一部が機械化されていますが,大半は人力のようです。与那国島でのサトウキビ収穫の様子は七尾さんの「与那国きびかり日記」に生き生きと紹介されています。それによると農家に支払われる金額は1トンあたり約2万円です。立派なサトウキビ1本が1kg前後なので20円に相当します。1年から1年半かけて栽培した結果が1本20円なのです。それでも離島の農家にとっては貴重な現金収入となっています。

収穫後のサトウキビは切断面から酸化が進み劣化するので,速やかに製糖工場に運ばれます。そこでサトウキビを切断,粉砕して圧搾機にかけます。繊維質のかす(バガス)を除いたしぼり汁に石灰を加えます。これはさとうきびの微酸性を中和すると同時に,不純物を沈澱させて除去するためです。沈澱物をろ過したあとの液を煮詰めたり真空状態で濃縮して水分を除去すると黒砂糖ができます。黒砂糖は蜜を含んでいることから含蜜糖と呼ばれています。

■製糖工場と精糖工場

日本で使用される砂糖の約3分の2は海外から輸入されたものですが,日本国内には精糖(製糖ではありません)工場がたくさんあります。実はサトウキビの場合,栽培している国々の製糖工場でしぼり汁を濃縮し,遠心分離機でショ糖の結晶と蜜を大まかに分離しているからです。ここで取り出されたものは粗糖と呼ばれ,白砂糖の原料になります。砂糖として国際的に取引されているのはこの粗糖(原料糖)ということになります。黒砂糖はしぼり汁をそのまま濃縮・乾燥させたものですので,サトウキビに含まれるミネラル分がそのまま残っています。

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粗糖はまだ白砂糖と呼べるものではありません。消費国の近代的な工場で再びショ糖を結晶化させ,蜜と分離する精糖プロセスが必要になります。そこでは遠心分離機,イオン交換樹脂塔,真空結晶缶などの大がかりな装置が使用されます。こうして出来上がったものが白砂糖(正式には上白糖)です。白砂糖はショ糖含有率約98-99%,蜜成分がほぼ完全に除去されているため分蜜糖と呼ばれています。ショ糖の結晶は無色透明ですが光の乱反射により白く見えます。

身の回りにある砂糖を区分してみると黒砂糖と和三盆は含蜜糖,三温糖,グラニュー糖,上白糖は分蜜糖ということになります。同じに見える砂糖でも原料となる植物の種類により微妙に風味が異なります。これはショ糖以外のそれぞれの植物固有の成分が含まれているからです。さらにサトウキビからとれる砂糖でも,その精製度(ショ糖の割合),精製方法により風味が異なります。日本食は砂糖を使う機会が多いので,用途に応じて使いこなすと食生活が豊になります。

■バイオマス資源としての廃棄物

サトウキビを収穫し砂糖を製造する過程で大量の残余が発生します。収穫のときに取り除かれた茎以外の部分(梢頭部の葉,茎にまとわりつくガラの枯葉)や圧搾後の搾りカス(バガス)がそれに該当します。サトウキビ生産量と残余の割合は次の通りです。
・サトウキビ残さ率=0.28,残余量(乾燥重量)=サトウキビ生産量×残さ率
・バガス発生率=0.15,バガス発生量(乾燥重量)=サトウキビ生産量×発生率

参考までに穀物の残さ率は 1.30です。サトウキビの世界生産量は約13億トンです。上記の発生率を使って計算すると乾燥重量でサトウキビ残余は約3.6億トン,バガスは約2億トンにもなります。現在,これらはほとんど廃棄物となっていますが,貴重なバイオマス資源として利用できる可能性があります。テンサイの場合は葉と搾りかすは家畜の飼料としてすでに利用されています。

廃糖蜜はサトウキビの搾汁から砂糖を精製した後に残った粘状で黒褐色の液体です。廃糖蜜はサトウキビの生産地で粗糖を製造するときおよび消費国で粗糖を精製して上白糖にする工程で発生します。廃糖蜜にはまだ糖分が含まれているのでそのまま甘味料としたり,黒砂糖に混入されたり,いくつかの食品の原料として再利用されます。最近ではバイオエタノールの生産が急速に伸びており,今までじゃまものであった廃糖蜜が資源として見直されることになりました。
(1) 廃糖蜜を培地にしてグルタミン酸を生成する微生物を養い化学調味料を製造する
(2) 微生物の力でアルコール発酵させ,それを蒸留させてラム酒や醸造アルコールを製造する
(3) 廃糖蜜を培地としてパンに適した単種の酵母(イースト)を製造する

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