亜細亜の街角
経済発展と薬物汚染
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昆明(クンミン)  (地域地図を開く)

雲南省の省都,標高1891mの盆地にあり,三方を山に囲まれている。市の総面積は15,561km2,人口は370万人である。1月の平均気温は8.5℃,7月が20℃と気候が穏やかなので「春城」とも呼ばれている。

経済発展に湧く雲南の最大の問題点は麻薬・薬物汚染である。雲南は地理的に東南アジア諸国と接しており,薬物が持ち込まれるらしい。

中国には国家麻薬・薬物乱用禁止委員会(国家禁毒委)という政府機関があり,省レベルでも同じ機能の組織がある。全国で麻薬・薬物常習者が500万人と報告されており,これは国家的危機であろう。

薬物の多くは伝統的麻薬のアヘンであるが,アンフェタミン系の新型覚せい剤も急速に蔓延している。また,薬物乱用によるAIDS汚染も深刻である。特に昆明の薬物汚染はひどい状況で,街の中には「厳禁毒物吸引」とか「全人民参加,人民戦争」などの標語が見られる。

河口(480km)→昆明 移動

河口(19:20)→標高1600mの山中(06:00)→昆明(08:00)と夜行寝台バスで移動した。午後6時からBSの待合室で待機する。午後7時を過ぎると乗客は改札を通りバスに乗り込む。かなり古いタイプの寝台バスである。寝具もかなりくたびれ汚れており,どうも寝心地は良くない。

バスは定刻の19:20に出発した。標高150mの河口から雲貴高原に山登りである。道路状態はあまり良くない。振動と狭い寝台にもかかわらず,断続的に眠ることができた。トイレ休憩は特に無いのでバスが停まったら自主的に外に出て屋外トイレとなる。

北京時間の6時になっても雲南はまだ薄暗い。標高が高くなりすきま風が冷たい。掛け布団を体に巻くようにして寒さをしのぐ。この頃から高速道路に入ったらしく所々に料金所がある。7時になると外がはっきり見えるようになる。右側に桃の果樹園があり,少し濃いピンクの花が咲いている。タイ風の寺院も見える。

7時半にガソリンスタンドでしばらく停車する。高速道路には中国石油,中国石化集団のガソリンスタンドをよく見かける。中国では上記2社に中国海洋石油を加えた3大メジャーが寡占体制で石油を供給している。しかし,国内の石油・天然ガス生産は拡大し続ける国内需要にまったく追いつかない。

日本を抜いて世界第2位の石油消費大国になった中国は,1993年から石油輸入国となり,石油の確保は中国のエネルギー安全保障の至上課題になっている。

石油利権を確保するため中国は世界中の産油国に触手を伸ばしている。2005年中国海洋石油が米国ユノカル社の買収を試みたが,米国政界から国家の安全保障を脅かすと強い反発の声が上がり失敗に終わったことは記憶に新しい。

茶花賓館のドミトリー

バスは石林の近くを通る。周りの丘には石灰岩の柱が林立しており,石林見学の疑似体験をしたような気になる。バスは昆明站(鉄道駅)の北側にある大きな汽車站(バスステーション)に到着する。駐車場はひどく混雑しており,ここにバスを入れるのは大変な運転技術を要する。

汽車站の前の北京路を北上し東風東路を東に行くと左側に茶花賓館の門が見える。奥のレセプションで「ドミに泊まりたい」と申し出ると,宿泊カードを渡される。これに記入し,宿代の30元と押金(鍵の保証金)50元を払うと,レシートと電子キーが渡される。押金は何も無ければチェックアウトのときに返却される。

部屋はメインの建物の隣にあるユースホステルである。広さは10畳,2段ベッドが4個の8人部屋である。トイレと洗面所は共同でとても清潔である。シャワールームは古いままでお湯もぬるい。

古い中国と新しい中国が併存している

東風東路を西に行くと中心部の商店街になる

河口で100$しか両替できなかったのでまず歩いて10分の中国銀行に行く。北京路と人民東路の交差点にある中国銀行ではTCをドルキャッシュにも両替できる。

500ドル分のTCを出し,書類に100$はドル,400$は人民元と記載すると30分ほどで手続きは完了した。レートは1$=7.94RMBと2年前に比べると0.2くらい人民元高になっている。

お金ができたのでベトナムから懸案のジーンズを買いに行く。東風東路を西に行くと中心部の商店街になる。店先にジーンズが積んであり,バーゲンをしているので入ってみる。W28で選んでもらうとまあまあのものが見つかった。値段は99元,裾あげは15分ほどで待つことになる。

東風中路の一部は地下を走っている

東風東路と白塔路交差点付近

プーアール茶

宿に戻り移動のため昨日から残っている日記を書く。夕食がてら宿の北側を歩いてみる。プーアール茶の店があり,店先の型押しされたお茶を見ていると,女主人がお茶を入れてくれる。

黒茶は渋みが強く,次のプーアール茶は不思議な甘みがある,緑茶はお湯の中で緑の葉がきれいに開くので土産物によいが味は淡白である。結局,不思議な甘みのプーアール茶をお土産にする。

07時30分にはもう食堂が開いているのでありがたい

ドミのメンバーは朝が遅い。7時に起床し朝食に出かける。宿の東側に路地があり,何軒かの食堂が早朝から開いているので定番の豆乳と油条をいただく。油条は小麦粉を長く伸ばして油であげたもので,はさみで切って出てくる。これを豆乳に漬けていただくのが中国流である。

豆乳は独特の匂いを押さえるため備え付けの砂糖を少し入れておくと良い。豆乳はどんぶり一杯なので一時的にけっこう腹は膨れる。いわゆる「水腹もいっとき」という状態である。

金碧路の広場と飾り門

昆明站に行こうと北京路からバスに乗る。昆明の市バスはバス停に路線図が表示されているので簡単に利用できる。バスは北京路をまっすぐ行かず途中から金碧路に入る。広場と飾り門があるので途中下車する。

地図で確認すると金碧広場である。きれいな中国門は新しいものだがちゃんと石造りになっている。この辺が中国文化なのだろう。ベトナムでは新しいモニュメントがコンクリート造りになっており興ざめになったことが何回かあった。

陶器市|中国らしい一品である

陶器市|大きな壺に描かれた中国らしい絵

陶器市|墨絵ではないが山水画の世界である

イスラム地区に移動する

清真寺(イスラム寺院)は純然たる中国風建築

金碧路を西に行くとムスリム地区に入る。中心になっている清真寺(イスラム寺院)は純然たる中国風建築で,内部は見ることができない。住民はイスラム帽やスカーフを被っており一見してムスリムだと分かる。

イスラム地区の子ども

昆明火車站は近代的なデザインでとても立派だ

腹具合に多少異常を感じるようになってのでバスで昆明站に向かう。駅の有料トイレは駅舎から少し離れたところにあり十分清潔である。

駅のチケット売り場には主要列車の10日先までの座席の有無が電光掲示板で表示されている。座席は硬座,軟座,硬臥,軟臥の4種類がある。その他,無座(座席指定なし)という区分もある。

座席区分に分けて表示されるので,日本人なら容易にチケットを買うことができる。出発日,発車時間,列車番号,行き先,座席の種類をメモにして窓口に出すとチケットが発券されるであろう。

駅の建物は近代的なデザインでとても立派だ。一方,駅前広場には大勢の人々が座り込んだり,横になったりしている。待合室は当日のチケットがないと入れない。

駅舎の2階から駅前広場とそれからまっすぐ北に向かう北京路が見える。通りの両側には個性的な高層建築が並ぶ。わずか10年ほどで街の景観は劇的に変化している。広場の少し北側には道路の中央部に安全地帯が設けられバス停になっている。

昆明汽車站は北京路の左側にある

さらにもう少し先に行くと左側に昆明汽車站(長距離BS)がある。ここにも電光掲示板があり,行き先別に全てのバスの発車時間,3日分の空席数,料金が表示されている。バスは毎日400便は出ているので表示が一巡するには7-8分ほどかかる。

僕はメモに明天,六庫,18:00,臥車,下段と書いて窓口に出したら,英語のできる小姐が呼ばれ,翌日の寝台バスのチケットが手に入った。中国ではBSでチケットを買う分には定価販売である。

六庫までは621km,料金は154元である。バスの種類によりかなり値段に差があるが,100kmあたりおよそ15-25元というところだ。

駅周辺には露店の風景も残されている

貴重なネット屋

午後は東風東路と環状東路の交差点にあるネット屋でメールを出す。昆明にはネットショップがたくさんあるが,ほとんどがゲーム専門で,日本語環境があるネット屋は貴重品だ。しかし,一月後に戻ってきて再び行ってみたらすでに建物は取り壊されていた。街の変化はかくも早い。

陸橋下の古い街並みの風景もじきに一新されるのだろう

円通寺,池に囲まれた六角形の寺院

環状東路を反時計回りに歩き,円通街を通り,翠湖公園まで歩いてみた。昆明の街を東西に二分して流れる盤龍江にかかる立派な橋がある。その取り付け道路の下には小さな家が密集し,狭い道には荷車に乗せた移動露店がひしめきあっている。これが中国の原風景である。しかし,大きな通りを歩いている限り,このような風景には決してお目にかかれない。

偶然見かけた円通寺は参拝者が多く,日本からの団体も訪れていた。入口には中国式の華やかな色彩の山門があり奥に池に囲まれた六角形の寺院がある。その前には1mもある巨大な線香が立てられた香炉がある。

その奥の大雄宝殿には2体のブッダ像が置かれている。中央の柱は派手な龍の飾りがあり,空間自体も色鮮やかな装飾に満ちている。日本のわび,さびとは対照的な寺院である。本堂の内部を外から撮影していたら,線香と花を手に持って祈りを捧げていた女学生から「本尊は撮影禁止よ」と注意を受けた。それは失礼しました。

ちょっと奇妙な竹の若木

翠湖公園|湖は工事のため半分は干上がっていた

翠湖公園は昆明の見どころの一つである。しかし,僕が訪れたときは工事のため半分は干上がっていた。泥田のようになった池で胸までのゴム長をはいた男性たちが何かを採取している。水のあるところもそれほどの風景ではない。

翠湖公園|湖の女神のイメージかな

世博園の会場はテーマパークになっている

移動が夕方なので,汽車站に荷物を預け,市バスで「世博園」に向かう。世博園は1999年に開催された世界園芸博覧会の会場の跡地をそのまま公園にしたものである。

博覧会の開催期間は5月1日から10月30日まで6ヶ月,テーマは「人間と自然 - 21世紀に向けて」となっている。 95の国や機関が参加し,会期中950万人が来場した。さすがは人口大国の中国である。沿岸の大都市から遠く離れた雲南の博覧会に1000万人近い人が訪れるのである。

この博覧会を機に,日本でも昆明の知名度は相当あがったと考えられる。会場跡地には汽車站の前の北京路から直通の市バスが出ている。

世博園の前は大きな広場になっており,観光バスを連ねて中国人の観光客がやってくる。200人ほどの小学生の一行が先生に引率され,広場で整列しているので写真にする。カメラを向けるとにこやかに応えてくれる。

30人ほどの小学生が世博園を背景に記念写真を撮っている。先生に「僕が撮りましょうか」と言うとお願いしますということになった。ファインダーを覗きながらイー,アール,サンと声を出しながらシャッターを押す。

さて肝心な世博園は入場料が100元もするので,あっさりあきらめた。この「世界」と名の付くイベントは中国にとって国家的なプロジェクトであったことは想像に難くない。

昆明の主要道路沿いの再開発,ホテル等の整備はそれに合わせて行われたにちがいない。世界中からのお客さんに中国の面子をたてるため巨額の資本が投下されたことだろう。

昆明の市内バスは1元均一であり両替はない

昆明の市バスは一律1元,乗車するときに運転手の横の料金箱に現金を入れるか,プリペイド方式のICカード使用する。両替サービスは無いので1元を用意していないと乗れない。

若者は年寄りが乗ってくると自然な形で席をゆずる。儒教の教えはまだ生きているようだ。僕も子どもを背負った女性に席をゆずってあげる。ちょっと気持ちの良い経験である。

東風広場に戻る

バスで東風広場に戻り,その西側にある雲南省博物館に行く。しかし,工事中のため7月まで閉館となっている。3年前に来たときは休館日であった,どうもついていない。 中心街に戻って水餃子とおかゆで昼食にする。中心街は東風東路を地下にもぐらせ,上を公園にしている。そこは高層ビル街にあってほっとするような空間になっている。

東風中路を地下にもぐらせ,上を公園にしている

東風中路を地下にもぐらせ,上を公園にしている

先生に引率された子どもたち

雲南省博物館は7月まで閉館であった

中学生くらいかな

マンションの販売会場を見学する

東塔寺と西塔寺

中心街の南側には東寺街通りを挟むように東塔寺と西塔寺がある。ここも昆明の名所の一つだ。どちらも南詔国時代に建設された13層のレンガ造りの仏塔である。中国独特の形状をしており大理の三塔,西安の大雁塔と共通している。

東塔寺の周辺は公園になっており麻雀卓が並んでいる

東寺塔は庭園の中にある。中には麻雀卓がたくさんあり,人々の憩いの場所になっている。西寺塔は東寺街から少し奥まったところにあり両側には古い造りの土産物店になっている。巨大な城も建設されており,中国得意のテーマパーク化が進んでいる。

東塔寺から西塔寺に向かう道のモニュメント

いったいどんな花が咲くのかな

西塔寺に向かう城門

凧揚げの名人が集まっている

西塔寺と東塔寺の間には20m四方の広場があり,そこには凧揚げの名人が集まっている。イスに坐り直径30cmくらいの大きなリールを操作してはるか上空までカイトを飛ばしている。糸の先をたどっていくと白い雲を背景に4つのカイトが浮かんでいる。

西寺塔は東寺街から少し奥まったところにある

自転車のようにこぐと外側の車輪が回り動く一輪車


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