亜細亜の街角
■光の祭りで町は騒乱状態
Home 亜細亜の街角 | Ootacamand / India / Nov 1999

ウータカマンド  (地域地図を開く)

西ゴート山脈に連なるニルギリにある標高2300mの避暑地で,別名は「ウーティ」と呼ばれる。ここまでの交通手段はバスまたは列車,どちらを利用してもすばらしい車窓風景を楽しめる。

僕の訪れたのは11月7日,この日は「光の祭り」が行われていた。タミールバドゥ州政府観光局主催のツアーがあり,郊外の見どころを回るには便利である。


トリチュール→ウータカマンド移動

トリチュール(09:00)→コインバトール(12:00)(13:00)→ウータカマンド(17:00)とバスで移動した。トリチュールのバス・スタンドでは英語がほとんど通じず,ようやくセーラム行きのバスに乗ることができた。コインバトールは大きな町なので,途中下車は難しくはない。

コインバトールからしばらく行くと山道になる。道路の周囲は豊かな森になっている。ときおり森が途切れると谷側に下界の風景が見える。ビューポイントと呼べるところから風景を撮ろうとしたが,走行中のバスからではとても無理だ。この景色を見るだけでもウーティに行く価値はある。

ウータカマンドはイギリス人が作った避暑地である。今は11月なのでこの季節は空いているだろうと考えていたら見事に裏切られた。バス・スタンドからリクシャーでゲストハウス街に向かう。

料金が合わなかったり,満室のため断られたりして,3件目の「Anand Inn」でようやく部屋を確保することができた。部屋(300Rp)は6畳,2ベッド,T/S付き(お湯は出ない),まあまあ清潔である。避暑地だけあって,部屋のランクに比べて料金は高い。

今朝出発するときはTシャツ姿だった。2200mの高原に着くと長袖が必要になる。町の市場をのぞいてみると,完全に冬の服装をしたおじいさんが,しばらく僕の相手をしてくれた。町を歩く人々も冬の装いである。さすがに夜はひどく寒かった。長袖の上下を着て,毛布を2枚被っても寒さがこたえた。


紅茶の産地ニルギリ

ニルギリはダージリン,アッサムと並ぶインドの3大紅茶生産地である。ここには中国種のお茶の木が導入され,多くの苦労を経てニルギル茶が誕生した。ニルギリとは現地の言葉で「青い山」を意味する。

そこからここの上質の茶葉は『紅茶のブルーマウンテン』と呼ばれたりする。しっかりした味で、新鮮な花の香り,クセのない飲みやすい茶葉である。地理的にスリランカに近く,農園によってはセイロン茶に近い香りをもつ茶葉もある。

ツアーの中で茶園を見る機会があった。しかし,11月は茶葉の収穫シーズンではない。日本と同じように丈の低い茶木が等間隔に斜面を埋め尽くしているだけだ。しばらく茶葉が摘まれていないため,葉の色は濃い。茶園で働く人々の家屋も見えず,まったく消化不良の訪問であった。

おまけに,カメラのシャッターの具合が悪く,ツアーの途中で撮った写真はほとんど真っ黒で全滅であった。日本に帰ってきてから,この事実が分かり,とても悲しい思いをした。幸い,残りのフィルムの被害は1割程度で,何とか旅行記も作成できた。


光の祭り

インドでは10月末から11月中旬頃にかけて,富と幸運の女神ラクシュミーを祀る光の祭り(ディワリ,ディパーヴァリー)が行われる。人々はギーや油が入れられた灯明皿に明かりを灯したり,色とりどりの豆電球のイルミネーションで戸口を飾り,ラクシュミー女神を招き入れる。

人々は近くの家を挨拶に回る。各家庭では甘いお菓子が作られ,挨拶に来た人達にふるまわれる。子どもたちや若者達は花火を楽しみ,女性は御馳走をつくって神様に供える。ご馳走を食べ,来るべき新しい年を迎えるというのが「光の祭り」である。

さて,僕が泊まった日はウータカマンドの祭りの日であった。道路には多くの露店が出ており,何やら赤いきれいな箱に入ったものを売っていた。夕方になると宿の周りでは子どもたちが花火を始めた。あちこちできれいな火花が見える。なかなか風情のある祭りだと思っていたら甘かった。インドでは本当によく期待が裏切られることがある。

宿の下は斜面になっており,一番低いところは競馬場になっている。その反対側の斜面は商店街になっている。そこから連続的に爆竹の音が聞こえる。爆発の光がこちらからも見える。音はまったく途切れることがなく,町中がその音に包まれる。この小さな町でどれほどの花火が消費されるのであろう。静かな町なので音はよく響く。

懐中電灯をもって商店街に行く。近づくにつれて音は大きくなりなり,それには2種類あることが分かる。一つは連続する爆竹の音,もう一つは単発だがより強力な音である。現場に到着して分かった。強力な音は丸いちょっと大きめの爆弾(のような花火)であった。これは強力で足元で爆発したらケガをしそうな代物であった。さすがはインドである。


朝の静寂

喧騒の一夜は明けた。斜面に広がる町は昨日の騒ぎで疲れ果てたように,静かなたたずまいをみせている。長袖を着ていても寒く,ようやく差し込んできた春の陽光(まだ冬至前だけれど)が心地よい。あと3ヶ月もすれば,日差しはますます強くなり,この町は避暑地としてにぎわうだろう。

町の人々はまだあまり外に出てきていない。外にいる人々は思い思いの防寒着を身に付け,僕と同じように日の当たる場所で暖をとっている。太陽の恵みが唯一の暖房器具なのだ。人々は自然に逆らうことはない。自然のサイクルに従って,悠然と生きている。



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