パイリン (参照地図を開く)
バッタンバンの南西にある小さな町。ベトナムに後押しされたヘン・サムリン政権が樹立された後も,パイリン周辺はポル・ポト派の最後の支配地域であり続けた。この地域で採掘される高品質のルビー,サファイアさらにチーク材が彼らの収入源となっていたためである。
現在,宝石はほとんど産出されておらず,タイ国境近くのカジノが唯一の観光資源となっている。町の中心部には市場があり,それを取り巻くように商店と民家がある。
バッタンバンの南西にある小さな町。ベトナムに後押しされたヘン・サムリン政権が樹立された後も,パイリン周辺はポル・ポト派の最後の支配地域であり続けた。この地域で採掘される高品質のルビー,サファイアさらにチーク材が彼らの収入源となっていたためである。
現在,宝石はほとんど産出されておらず,タイ国境近くのカジノが唯一の観光資源となっている。町の中心部には市場があり,それを取り巻くように商店と民家がある。
バッタンバン(07:15)→パイリン(09:30)と乗り合いタクシーで移動する。ローヤル・ホテルの前からバイクタクシーでテオホテルのかなり南側にある乗り合いタクシーの乗り場に到着する。何人かの運転手が駆け寄ってきて,客のうばいあいになる。バイク・タクシーの運転手の勧めにより車を決める。
パイリンまで200Bと距離からするとちょっと高い。見ているとタクシーの運転手が彼に50B相当のリエルを渡した。これが紹介料だとすると,本当の料金は150Bということになる。実際,パイリンからバッタンバンに戻るときの料金は150Bであった。
乗客が2名の状態でタクシーは出発した。砂利道を時速40kmくらいで走り出す。埃がひどいので窓は開けていられない。エアコンがとてもありがたい。20分ほど走ったところでタクシーは停まる。近くのガケの上とその下に寺院がある。ワット・プノン・ソン・パウというらしい。ここで3名の乗客が加わり,車内はずいぶんきゅうくつになる。
パイリンは小さな町だ。宿泊施設は4軒しか確認できなかった。「Ponlu Pich Pailin GH」は市場の西側にあり,トイレ・シャワーが付いて100B,まあまあ清潔である。ゲストハウスにも水道はなかった。水は天水をため,それを給水タンクに上げている。宿の主人は英語とカタコトの日本語話す。むかし音楽関係の職につき,日本にも行ったことがあるという。
パイリンの町は小さい。家並みが続いているのは大きな道路に囲まれた,200mX300mほどののブロックだけだ。中央部に市場・露店・食堂が集まっている。市場の東側にテントが張られている。それは結婚式の会場で,16:00から披露宴が始まると教えられた。それではと北の方に歩き出す。
夕方,宿に戻る途中,家の前で遊んでいる子どもたちがいた。カメラを取り出すと子どもたちは歓声をあげる。それを聞いて近所の子どもたちも集まってきて,全部で7人になる。モデル代のキャンディーをあげると,さらに歓声がわく。さらに近所の子どもたちが集まり,15人の集合写真になる。
集合写真を撮っっても彼らはすんなり解放してくれなかった。子どもたちは,いろいろなポーズで写真を要求する。ある女の子は妹を抱え上げ,「ねえ,この子と一緒に撮ってよ」と目で訴える。「はいはい,分かりましたよ」と言って撮った一枚はなかなかいい写真になった。
大きな通りを越えるともう草原になっている。丈の高い草が生い茂り,その中を細い道が続いている。ところどころに板壁,トタン屋根の家が見える。その中の一軒の家で5-6才の少女が焼きとうもろこしを食べている。写真を撮ってお礼にフーセンをあげる。
そこに4人の少女がやってきて,自分たちの集落に連れて行ってくれた。地雷でもありそうな背の高い草の中の小道を通り,クツを脱いで水溜りを2度越えてようやく集落に着いた。
高床式,板壁,瓦もしくはトタン屋根の家が十数軒集まっている。子どもたちがたくさん集まってくる。集合写真をとって画像を見せてあげると歓声が湧く。モデル代のフーセンがたくさん必要になった。
結婚式の会場に戻るとまだ始まる気配は無い。テントの後ろに花嫁の家があり,ちょっと覗いて見る。家の中では花嫁さんが親族の女性に手伝ってもらって,着付けとお化粧,さらに髪を結い上げるのに余念が無い。家の裏庭では大きな鍋がかまどにかけられ,食事の支度が行われている。
5時頃からお客さんが集まり結婚披露宴が始まった。新郎は白のスーツ,新婦は淡い色のドレスである。二人はテントの入り口に立って客を迎える。
客が揃ったテーブルに料理が出てくる。僕も一緒にテーブルに坐る。男性客の飲み物は冷えていないカンビールである。飲食がだいたい終わったところで,のし袋代わりの封筒が回ってくる。それにご祝儀を入れて帰るとき渡す仕組みだ。
北側の道路を東に歩いていくと水ガメの製造所がある。パイリンには水道が無いので生活水は天水に頼っている。各家庭には水を貯めるため,コンクリート製で直径1mを越える大きなカメがある。どうやってコンクリートであのような大きなカメを作るのか興味がわいてしばらく見学させてもらった。
まず木組みでカメの側面のおおよその形を作る。上部にも板を渡してふたを作る。この面がカメの底面になる。木組みの外側に粘土を塗り形を整える。粘土の外側にセメントを塗り表面を滑らかに仕上げる。乾燥させた後,慎重に木組みと粘土を取り出す。木組みは再利用する。高さ1m,最大径1.2mの水ガメの値段は370Bである。
草原の小道を歩いていると,大きな木が木陰を作りいい雰囲気である。ここに坐って休んでいると,近くの家から両親と男の子が出てきて,ハンモックを吊ってくれた。ここで休んでくれということのようだ。ありがたく横にならせてもらう。
強い日差しはさえぎられ,風が心地よい。うるさいハエがいなければ眠ってしまいそうだ。大きなチョウが飛んでいる。前の羽は黒で,後ろは赤の混じった黄色,もしかしてトリバネアゲハかもしれないなどとしようもないことを考える。
気持ちのよい30分を過ごすと,来客があり女の子が2人増えている。昼寝のお礼にヨーヨーを作ってあげる。遊び方を教えてあげると,短時間のうちに3人とも上達した。ついでに,オリヅルを教えてあげる。
この家の長女は左手の指が親指を除き付け根からないというハンディをもっているにもかかわらず,立派にツルを完成させた。主人は水浴びをしていきなさいと言ってくれたが辞退し,居心地の良い家を後にした。
パイリンの町の入口付近に丘があり,その上に寺院がある。上までは長い階段になっている。頂上は古いパゴダと古い寺院がある。どちらもビルマ様式で,修繕もされないため,いつ崩れてもおかしくない状況だ。ここからの眺めはすばらしい。パイリンは本当に緑の多い町である。しかし,遠くの山まで見通しても森林と呼べるものはない