キワタ(Bombax ceiba)
科名:Malvaceae(アオイ科)
属名:Bombax(キワタ科)
和名:キワタ
英名:cotton tree,tree cotton
キワタ(木棉)は、アオイ科(クロンキスト体系や新エングラー体系ではパンヤ科)キワタ属の落葉高木である。和名のキワタは「木に生る綿」の意味であり,漢字では木棉となる。原産地が熱帯アジアということでインドキワタ,インドワタノキなどとも呼ばれている。
原産地は熱帯アジア,樹高は20-30m,幹は直立することが多く,円錐状の突起に覆われている。枝は水平に伸びる性質がある。この枝が水平に伸びる樹形が識別の一つの決め手になる。落葉樹でありサクラのように赤い花が葉よりも先に開くのでこの時期のものはとても目立つ。花は5弁で大きさも形も椿の花に似ており,花弁が基部でつながっているため花が落ちるときも椿のように花弁全体がぽろっと落ちる。
花の後には20-30cmほどの緑色の細長い紡錘形の果実がたくさんつく。この状態のキワタもとても目立つ。実が熟すと表皮は茶色に変わり,内部に詰まっている白い繊維質がはじける。この繊維質が綿花と似ているので「キワタ」という名前が付けられた。実際,集められてクッションなどの詰め物に利用される
本家のワタと同じように,この繊維質の中に種子が入っている。ワタはこの種子を風に乗せて運搬する役目をもっているようだ。繊維が切れて小さな塊になると,十分に風に乗ることができる。それに対して大きな塊のままだとそのまま下に落下してしまう。
この木の根元にはそのような繊維質の塊がたくさんあり,内部の種子を見ることができた。あった,あった・・・あずき大の黒い種子である。繊維質はワタに比べるとずっと柔らかく,短い。そこには小さな塊になって飛距離をかせごうとする戦略が見てとれる。
枝にぶら下がっている実は表皮がきれいにはじけて内部の繊維質が出ているものと,一部しか出ていないものがある。内部の圧力がうまくかからないときれいに開裂しないようだ。
キワタを調べていて Ceiba pentandra(パンヤノキ)と Bombax ceiba(キワタ)が日本のサイトではずいんぶん混同されていることが分かった。パンヤノキ(Kapok)の原産地は熱帯西アフリカおよび熱帯アメリカ,樹高は60-70mにもなり巨大な板根をもつ。枝全体ににサクラのように白い花を咲かせ,15cmほどの紡錘型の果実を付ける。種子は白い繊維質の中にくるまれている。
キワタとパンヤノキが混同された原因は学名にある。「 Bombax ceiba」の学名が先にリンネにより付与されているにもかかわらず,「ceiba」という名称が異なる植物の属名に使用されたことが混乱をまねいた。同じ名称を学名の属名と種小名の両方に使用した植物学者の罪が重いようだ。