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ピナツボ火山は1991年6月に20世紀最大といわれる噴火を起こしました。周辺には大量の火山灰が降り注ぎ,住民に多大な被害を与えるとともに,幹線道路が寸断され地域経済にも大きなダメージを与えました。被災者総数は約460万人に及び,このうち約1,000人の命が失われ,全壊家屋は4万8,000戸を数えました。その後も毎年,台風などの降雨により火砕流堆積物が流出して泥流となり,下流では河床上昇(天井川化)や河道閉塞をもたらして,洪水氾濫による二次災害も引き起こしています。こうした関連災害は噴火から10年以上経った現在でも続いています。

1996年から実施されている「ピナツボ火山緊急復旧事業」は,ルソン島中部のサコビア・バンバン川とパッシグ・ポトレロ川で,河道の浚渫,メガダイク(巨大堤防)の補強と周囲堤の建設などにより,頻発する泥流・洪水被害を軽減し,下流地域における復旧支援を進めて,地域住民の生活環境を向上させることを目的としています。

また,2002年3月から2003年9月の「ピナツボ火山西部河川流域洪水および泥流制御計画調査」は,荒廃した西部地域を,できるかぎり火山が噴火する前の状態に戻すことと,河川の安定確保のために浸食が進む土地の保護を行うことを目標に進められました。

1994報告:「うまい,うまい」と,ラタ(36)はバナナの葉でアモカオをすくいあげては,繰り返しノドに流し込んだ。フィリピンのピナツボ先住民のアエタは,アモカオが大好きだ。アモカオはアケビの実のように,種だらけの野性バナナを絞った天然ジュースだ。甘くてアエタの伝統と生命力の味がした。

ラタ一家を含むピナツボ・アエタ三家族が火山灰河原の一角で生活しはじめて半年が過ぎた。一家四人が横になって眠れる,野性バナナの葉で屋根と壁をふいただけの簡素な小屋が家だ。斜面には野性バナナが群生し,湧き水がでる。ピナツボ火口周辺を除く尾根一帯の植性は予想以上に早く回復した。

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