亜細亜の街角資料
コメを主食にする VS コメを野菜として調理する
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コメをめぐる二つの文化

中央アジアや西アジアを旅しているとポロフというコメ料理をよく見かける。地域によってはポロ,プロフなどとも呼ばれる。簡単に言うと羊の肉とにんじんの細切りなどの入った炊き込みご飯である。世界中で食べられているコメは二つの食文化に区分される。一つはコメを主食として食べる文化で,アジアモンスーン地域はこの文化が主流となっている。もう一つはコメを野菜の一種として食べる文化で,中央アジアからヨーロッパはこちらが主流となっている。

当然,二つの文化ではコメの調理方法が異なる。コメ主食文化ではコメは単独で水で炊くことになる。もちろん,日本の炊き込みご飯のような調理法もあるが,あくまでもコメは主食として扱われ,ごはんプラスおかずの食卓となる。中国のチャーハン(炒飯)は余って冷めてしまったごはんをおいしく食べるために考え出された調理法であり,コメ主食文化の亜流として位置づけられる。マレーシアやインドネシアのナシ・ゴレンはその延長線にある。

一方,コメを野菜の一つをして扱うコメ野菜文化は,コメを他の食材と一緒に(ときには炒めてから)スープで炊き込むことになる。まあ,一種の油を使用した炊き込みごはんであるが,あくまでも料理の一皿として扱われる。この文化の発祥地はインドやイラン地域であろうと考えられている。

「プラオ」や「パラオ」と呼ばれていたコメ料理はトルコに伝わって「プラウ」となり,オスマン帝国の時代にバルカン半島経由でフランスに伝わり「ピラフ」となった。一方,8世紀からイスラム勢力の支配下に置かれたスペインでは中東のコメ料理が伝えられ,東部のバレンシア地方を代表する料理であるパエリア(パエリャ)となる。これがイタリアに伝わるとリゾットとなる。

油を使用した炊き込みごはんの文化は中央アジアを経由して中国,日本にも伝わった。奈良時代の日本では「油飯(あぶらいい)」という料理があり,それは胡麻油を使用してコメを炊く料理だったという。それは現在の中華料理「油飯(ユーファン,ヨウファン)」とほぼ同じものであったことだろう。


チャーハン

中華料理の名前は材料と調理法が組み合わさって表現されることが多い。したがって基本単語を覚えておくとどのような料理が出てくるかをある程度推測することができる。このうち調理方法の基本は炸(油で揚げる),炒(炒める),爆(高い温度の油で炒める),火考(焼く),煮(煮る)などがある。このうち油を使用する調理の決め手は強い火力である。現在は高火力のガスコンロがあるのけれども,石炭が使用される以前はこの「強い火力」はかなりの難問であったことだろう。

チャーハン(炒飯)も中華独特の強火によってカラリ,パラリと炒めることができる。美味しんぼ流にいうと「チャーハンは飯の一粒一粒が互いにくっつき合ってはいけない,飯粒が充分に油を吸っていて,なおかつ一粒ずつがからりと仕上がっていなければならない」ということになる。

この調理に必要な火力は薪ではなかなか手に入らないので石炭の時代を待たなければならないと。中国で薪に代わり石炭が使用されるようになったのが宋の時代(10-13世紀)なので,中華料理の炒め物が発展したのはこの時期と考えられている。宋の時代には南の米食文化が広く普及した時代でもあり,かまど,鉄製の調理器具の改良,普及した時期でもある。


ナシ・ゴレン

ナシゴレンはインドネシア,マレーシア料理のひとつである。ナシは「ご飯」,ゴレンは「揚げる、炒める」を意味する。最近では調味料をあらかじめ調合した「ナシゴレンの素」が製造されており,日本でも手軽に楽しめるようになっている。

(1) 石のすり鉢でニンニク,シャロット,生唐辛子,あらかじめ油で炒めたトラシ(注)をつぶしてサンバルを作る
(2) フライパンで牛肉か鶏肉を香りがよくなるまで炒める
(3) 細切りにした生トウガラシと2センチ角に切ったキャベツを加える
(4) サンバル,エビ,白飯を加えてさらに炒める
(5) 食塩、コショウ、ケチャップマニスで味付けする
(6) 皿に盛った後目玉焼きをのせ、キュウリやトマトなどの生野菜を添える

注)インドネシアのエビ味噌,蝦醤


ポロフ,ポロ,プロフ

鉄の浅い大鍋にコメ,ニンジン,豆,肉を入れ油で炒める。スープを加えかき回しながら煮込む。油をかなり使用するので日本の炊き込みご飯とはかなり異質の味となる。


ピラフ

コメ,刻んだタマネギをバターで炒め,ブイヨンを加えたスープで炊き上げ,更に肉,魚介類,マッシュルームなどの具を加えて炊き上げる。


パエリア,パエリャ

スペイン東部バレンシア地方を代表する料理。かってイベリア半島を支配していたイスラーム文化の影響を色濃く受けた料理で、コメと具をオリーブ油で炒めた後、スープを加えて炊き上げる。パエリア鍋は底が浅く広いパンが理想的で,バレンシアではこの鍋をパエリアと呼ぶ。

(1) ニンニク、たまねぎ、ピーマンの順番にを入れてゆっくり炒める
(2) 鍋の中心部でとり肉を炒め,特に皮の部分を重点に焼き目をつる
(3) トマトを炒め,好みでスパイスを加えるて炒めまる
(4) 水(又は出し汁)、魚介類を入れる
(5) 火を強くしながらお米を2合入れ高さをならす
(6) 塩を入れて味を見ます。この時点では薄味になるようにしておく
(7) 鍋全体に火が通ってきたら徐々に火を強から中へと落としていく
(8) 火の具合と出し汁の量を常にチェックし30分程度炊き込む


リゾット

パエリアはスペインからイタリアに伝わりリゾットととなる。基本的にお米とスープをなじませた料理で米は洗わずに米のぬかでとろみを出す。

(1) オリーブオイルを鍋に入れてニンニクを熱しその後たまねぎを炒める
(2) 香りが油に移ったら米を生のまま入れて油となじませる。
(3) 十分になじんだら、白ワインを入れて蒸発させアルコール分を飛ばす
(4) その後、水またはブイヨンを米の1.3倍ほどいれ煮立たせる
(5) 水分がなくなったら水分を追加し,あまりかき混ぜないようにしてコメがアルデンテの状態になるまで待つ