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長谷川裕一

高校在学中から自主制作アニメの制作に関わっていた。高校卒業後に松田一輝のアシスタントを経験し,1983年に「魔夏の戦士」で商業誌にデビューしました。

「マップス」は「SFアニメディア」の創刊号に読み切りとして発表しました。ところが,送られてきた雑誌には「次号に続く」と掲載されており,なし崩し的に長期連載が始まったという笑える話がwikipedia にありました。この作品が長谷川裕一の代表作となるのですから人生一寸先は闇ということですね。もっとも彼の場合は闇ではなく成功ということになります。

私は1980年代には漫画の週刊誌や月刊誌を読むことはなくなりましたので「長谷川裕一」も「マップス」も全く知りませんでした。たまたま古本屋で何冊かを見つけて購入し,残りも書店から購入してしまいました。

今にして思うと,どうしてあのときに衝動的に購入したのかはよく分かりません。絵が特別好きなわけではないし,ストリーもかなり適当なものです。とはいうものの,何回かの処分をまぬがれ,我が家の書棚に20年近く居場所を確保しています。

マップス解説

マップスは銀河系全域を舞台とした壮大なスケールのスペースオペラ漫画です。主人公は地球人の十鬼島ゲンと女性型人造人間のリプミラ・グァイスですが,影の主役というべき「神帝ブアー」と「伝承族」について先に説明しておかなければなりません。

「ブアー」はどこかの宇宙の先史文明が創り出した記憶装置であり,これまでに2兆以上もの宇宙を記録し続けてきました。ここでいう「宇宙」とは私たちの「宇宙」と同じ意味で使用されています。

私たちにとっては宇宙は唯一無二のものですが,この物語の中では宇宙は無限にあって,大きな構造体の一部を形成しているという設定になっています。それは銀河系が集まって大きな構造を形成していることと類似しています。

私たちは「宇宙」の外を覗くことはできませんし,そこから脱出することもできません。しかし,記録装置であるブアーは宇宙から次の宇宙へとやすやすと移動し,訪問した宇宙の生成期から終焉を記録してきました。

造られた当初は手のひらサイズであったブアーは2兆以上もの「宇宙」を記録し続ける中でどんどん巨大化し,それと同時に深刻なエネルギー問題に直面しています。ぼうだいな記録を維持するだけで一つの宇宙に匹敵するエネルギーが必要になってきたからです。

ブアーは自分の中の記録を再現させ現実の宇宙と比べてみてまったく同一であることを確認しました。記録が残されているのであるから宇宙を消滅させてエネルギーに転換しても彼自身としては問題ないわけです。伝承族の異端者であるリングロドの話では過去にもブアーは一つの宇宙を消滅させているとのことです。

物語中にはブアーのサイズは語られていませんが,惑星サイズの伝承族を記録素子としてもっているということから,恒星(太陽の直径は1400万km,地球の約1000倍です)サイズと考えられます。

この程度のサイズで宇宙全体に匹敵するエネルギーを必要とするということはブアーの記録システムが途方もなく非効率的なものいうことになります。太陽は誕生以来46億年間も内部温度は1500万℃,表面温度が6000℃という状態でエネルギーを放出しています。

ブアーのサイズが太陽程度であるならば,太陽程度のエネルギーで十分に記録システムを維持できるはずです。逆に太陽ほどの空間に宇宙全体のエネルギーを集めるとビッグバン直後のような高温・高エネルギー状態になってしまいます。

などという難癖のような物理的解析は止めにして,ともかくブアーは自分の記録し終わった宇宙をエネルギーとして食べながらやってきたということになります。

私たちの宇宙にやってきたブアーはまず記録の収集を行います。ブアー自身は巨大すぎて記録の収集には不向きですので,伝承族がその任にあたっていると考えられます。伝承族はブアーによって創り出された人工生命体です。

伝承族は惑星規模の寿命をもち,幼生体のときは人型をしていますが,三齢になると脱皮し,段階的に急速に巨大化します。成長すると惑星サイズの頭部だけとなり,サイズに比例した巨大な念動力をもつようになります。彼らの頭脳はそのまま生体記憶装置となり,十分な大きさに成長した(記録を収集した)個体はブアーに飲み込まれ一つの記録素子となります。

多数の伝承族を次々と生み出し,彼らの記憶を統合することによりブアーは失われてしまった多くの文明や銀河の貴重な記録を保持する超巨大な記憶装置となっています。伝承族の個体の意識は消滅しますが,彼はブアーの記録の一部なり,記録の中で永遠に生き続けることになります。

伝承族はブアーにより創られますが,それは通常の高等生物に伝承族の遺伝子を注入することにより生み出されます。この遺伝子注入によりその生物はそれまでとはまったくちがう成長を遂げるようです。

50億年前に私たちの宇宙にやってきたブアーは伝承族の評議会とともに太陽系のある銀河系をターゲットにし,その外側にバリアーを張ります。

ブアーや伝承族の時間概念は地球生命体のそれとは桁がちがいます。50億年かけて記録を収集し,生命体を育て,いよいよ銀河系を弾倉にして宇宙を破壊してエネルギーに転換する計画を発動する時期となります。

銀河系を弾倉にするとは銀河の生命体を生贄砲として使用することを意味します。この兵器は生物が死ぬ時に発する断末魔の叫びをエネルギーに変える装置であり,もっともエネルギー効率が高い兵器という設定になっています。

しかし,ブアーも伝承族も宇宙の内部に存在する状態で宇宙を破壊したら自分たちも巻き添えになると思うのですが……。また,宇宙を破壊してもそのままではエネルギー源としては使用できないのであまり意味が無いようにも思います。

ともあれ,この計画のため「青き円卓」と呼ばれている辺境文明の地球が起爆薬として選ばれました。この物語の中には多くの高等生物が登場しますが,その相当部分は人間型の宇宙人です。地球人と同じような生命体が地球以外の星系も存在する理由は伝承族が生物の種を銀河系内に植え付けたことによります。

そのために伝承族により製造されたものがリープタイプの宇宙船です。この宇宙船は船体と頭脳体のペアで構成されます。頭脳体はビメルダーと呼ばれ,日本語では半有機合成人間となり,通常の人類は自然人として区別されています。

ビメルダーは金属骨格と遺伝子により生み出された有機物質を組み合わせた人型生命体であり,物語の中では探査や戦闘員など自然人では難しい任務が与えられています。リープタイプではビメルダーが船体の頭脳と同期する頭脳体となっており,船外からでも脳波により船体を動かすことができます。

船体は通常の宇宙船のような形状ではなく頭脳体を模した人型の外装となっています。大きさは全長(身長)320mといったところです。ジェット戦闘機の離発着が可能なアメリカ海軍の最初の「超大型空母(スーパー・キャリアー)」であるフォレスタル級は全長325mですから,リープタイプ宇宙船はそれとほど同等の大きさということになります。

この人型の宇宙船は頭脳体としてのビメルダーと船体の頭脳で制御されるようになっているので,乗組員は必要ありません。船体に備え付けられている兵器もすべて自動化されています。

船体とビメルダー頭脳体は相互補完の関係にあり,宇宙船が破壊されると頭脳体が自分の中の設計図をもとに船体を再生することができますし,頭脳体が破壊されると船が数年の時間をかけて船の中で新たな頭脳体を再生します。つまり,船体と頭脳体の双方が同時に破壊されない限り,完全な死にはなりません。

頭脳体が船体を再生(再建造)するときは頭脳体の性格や戦法,周囲の環境,あるいは新しく取得した技術などを新しい船体に反映することができますので,少しずつ,場合によっては革新的な進化をとげることになります。20万年前には同一仕様で生産されても,時間とともにそれぞれが進化の道を歩み,個性的な船体となります。

一方,船体が頭脳体を再生するときは以前の記憶を持ち越すことはできません。作品中ではリプミラがニードルコレクションのゼルとルゼの発する特殊な電磁波により記憶を消去されます。

しかし,デニーとレニーにバックアップされていた記憶により無事に記憶を取り戻すことができました。船体は頭脳体の人格や記憶を再生できませんが,適当な補助者がいれば記憶のバックアップと再生頭脳体への移転が可能ということになります。

リプラドウは20万年前からの記憶を保持していますので一度も頭脳体が破壊されたことがないか,補助者がいて記憶をバックアップしていたということになります。

リープタイプ宇宙船は10万機ほど生産され銀河系の多くの星に生命の種を植え付けました。しかし,その計画は銀河系を生命の楽園にするものではなく,ブアーの最終計画である銀河生贄砲のエネルギー源とすることでした。

そのことに気付いた伝承族の一部はブアーから離反し,リープタイプの宇宙船で逃亡を図ります。リプミラは同行者のカリオンを失い,記憶を引き継ぐことなく海賊船として恐れられる存在となっていました。物語はそのような時点から始まります。

もっとも,ブアーや伝承族による銀河破壊計画という物語の真の骨格が明らかになったのは物語の最終段階であり,それまでの話はどのように決着させるのか見当がつかないほどさまざまな方面に広がっていました。また,生身の人間やビメイダーがほとんど不死身のようにふるまっていることや兵器の性能や破壊力がその場の都合で変わるという難点もあります。

そのように広げきった風呂敷を(かなり強引なところはあるものの)きれいにまとめ切った力量はなかなかのものと評価できます。

登場人物紹介

マップスは17巻(外伝を入れると19巻)の大作であり,登場人物も多岐に渡っていますので登場人物をまとめておくことにします。初出とは最初に登場した時の単行本の巻数を表しています。

名前 組織 初出
リプミラ・グァィス 宇宙船リプミラ号の頭脳体,ビメイダー1巻
十鬼島ゲン 地球人,宇宙放浪者「風まく光」の末裔1巻
君塚星見 地球人,十鬼島ゲンのGF1巻
ニュウ・エイブ スペース・パトロールの隊長1巻
伝承族 頭部だけの惑星サイズの生命体1巻
ツキメ 高重力星の生物,通常重力では怪力を発揮1巻
ジャルナ 惑星ベニュアスの王女,平和使節団2巻
ガッハ・カラカラ カミオ星人,ケイ素生物,リプミラの宿敵2巻
スソクホウ エイブの妻,子だくさん2巻
流星 医療船,兵器として亜高速弾にされてしまう2巻
ザザーン・クロマミス 女性比率の高い惑星ドドーの破壊騎兵3巻
ガタリオン 二齢の伝承族,人間の姿をしている3巻
アババ・バドゥターシャ 惑星ドドーの第一元帥,ザザーンの上官3巻
リプダイン 5人の幽霊船,リプミラと相似形3巻
リプラドウ 5人の幽霊船,リーダー的存在3巻
リプリム 5人の幽霊船,ロリっぽい雰囲気3巻
リプシアン 5人の幽霊船,騎士道精神をもつ戦士3巻
リプレイン 5人の幽霊船,もの静かな美少女3巻
惑星リングロド 伝承族の異端者,銀河生贄砲計画を伝える4巻
ダード・ライ・ラグーン ライ族により造り出された男性型宇宙船6巻
オルシス ビメイダー連合の女王6巻
神帝ブゥアー 評議会の長,伝承族の長,超巨大記録装置6巻
空間生物 星宇宙を放浪する生物,花形をしている6巻
ウディナ・ブイア 惑星ドドー軍の男性兵士6巻
ニブー 伝承族の評議員8巻
トゥルー・ラドウ 伝承族の遺伝子をもつ再生頭脳体8巻
チュリオム通商圏連合 ドドーを中心とした約10億の惑星文明群8巻
未確認宙域連合 テュリオム以外の約10億の惑星文明群8巻
アマニ・オーダック 伝承族最古かつ最大の機械学者8巻
キャプテン・ヒー 先史銀河文明の生み出した頭脳体型宇宙船9巻
シスター・プテリス 植物生命体,2枚の羽をもつ9巻
ヘクススキー教授 未確認宙域連合軍司令官9巻
鈴木としお ゲンの同級生,地球時間は13年間進んでいた9巻
クローン・ラドウ再生体 地球で破壊されたラドウの再生頭脳体,多数9巻
ラドウ再生体1101 ラドウの再生頭脳体,ダードと行動する9巻
ギャダ 伝承族反乱軍,地球上で脱皮9巻
スガラ・リップ ニードルコレクション(NC),リーダー10巻
バオン・リップ NC,流体内の戦闘が得意10巻
ゼルとルゼ NC,電子記憶を消去する電磁波を出す10巻
ソフティカ・リップ NC,宇宙船を自由変形できる10巻
ハーザン・リップ NC,非常に頑丈な宇宙船,体当たりが得意10巻
ギツアート 伝承族反乱軍,流刑処罰星の主11巻
デニーとレイン ルプミラ号のオプション頭脳体11巻
キャプテン・ヒーの弟 恒星に居住するエネルギー生物11巻
片キバ 銀河系外文明の巨大宇宙船の船長11巻
ファーストボーン リープタイプの生産と修理を行うマザーシップ13巻
デニー リプダインの遺伝形質をもつ再生頭脳体13巻
レイン リプレインの遺伝形質をもつ再生頭脳体13巻
ジェンド・ラドウ クローン・ラドウ再生体の指令機15巻

ストーリー|最初はほとんどプロローグです

物語は日本の都市に現れた巨大な天使型宇宙船が下校途中の十鬼島ゲンと君塚星見をさらうところから始まります。巨大な宇宙船が地球の重力圏で浮かんでいられるのは重力を相殺できる半重力エンジンによるものです。

地球上の物体はすべからく重力に支配されており,地球の重力を振り切るためには非常に大きなエネルギーが必要です。スペースシャトルの本体である宇宙船は全長37m,離陸時の最大重量は109トンですが,この宇宙船を地球軌道上に打ち上げるためには二つの推力を必要とします。

一つは外部燃料タンクの両側に取り付けられている二体の固体燃料ロケットで合計1000トンの燃料が入っています。もう一つは外部燃料タンクであり,この中には735トン(液体酸素629トン,液体水素106トン)の燃料が入っており,宇宙船のエンジンで燃焼させられます。

つまり,積荷を含めて109トンの宇宙船を地球周回軌道に投入するためには1629トン(宇宙船の約15倍)の燃料を30分足らずのうちに燃焼させ,高速の燃焼ガスを連続して放出することにより必要な推力を発生させています。

スペースシャトルの軌道周回速度はおよそ8km/sec(時速2.9万km)ですが,地球の重力から脱出し他の天体に向かうためにはさらに大きな速度(約11km/sec)が必要となります。この速度(時速4万km)は地球上では途方もないものですが,光速(30万km/sec)の3万分の1に過ぎません。太陽系外宇宙はもちろんですが隣りの火星まで(最小距離7000万km)到達するのに1750時間(72日)かかる計算です。

このように地球周回軌道に宇宙船を投入するためには宇宙船の15倍以上もの質量の燃料が必要になりますので,有人火星飛行飛行などは現在の技術では非常に難しいうえに,巨額の費用がかかります。リプミラ号のように反重力エンジンがなければ人類はそう簡単には宇宙に進出することはできません。

宇宙船の額にあるブリッジに連れてこられた二人は女海賊のリプミラと対面します。リプミラはゲンを「マップマン」と呼び,ゲンがかって宇宙を放浪した「さまよえる星人」の子孫であり,彼らが2万年前に地球に隠した秘宝「風まく光」のありかを示す人間地図であると説明します。ゲンと星見には何のことか皆目分かりません。

リプミラはゲンの全身のホクロの位置からお宝は南極にあると判断し,南極のさまよえる星人の遺跡に向かいます。遺跡はゲンの脳波に反応し地球の時間を一時停止(凍結)し,地球は2つに割れます。地球中心部から回収されたものは半径6億光年の星図でした。

ここまでは「ACT.1」のストーリであり,物語の骨格やリープタイプ宇宙船の再生の方法などは明らかにされていません。作者は一話読み切りのつもりで執筆しましたので先のことなどはまったく考えていなかったことでしょう。連載が始まりとりあえずは「ACT.2」では地球上の話と堅気の星間商人の話でつなぐことになります。

ストーリー|伝承773 風まく光

ACT3でようやく作者も物語の方向性を見出したのか,次のような「伝承773 風まく光」の予言が出てきます。もっとも,予言は物語の進展に合わせて少しず(話しに合わせて)つつぎ足されていき,最終章が完成するのは物語の最終話です。

時 凍てつく時 大地に 間(はざま)ある時
白き地図… …人 ”風まく光” を示す……

風は翼に乗り 翼は風に乗る
かの地 4枚の地表を持つ星に至りし時
"苦しみの刃(やいば)" 翼割ることあれば・・・
注意せよ 風は光をもってその印を 銀河になすであろう……

三枚の星図 そろう時 静止し 月の背 見つめる
青き円卓に 風に呼ばれし 十の魔物 七つの軍団
光をもって 印たるものに集う
すなはち 地図たち(マップス)

十の翼 そろいしとき
千の翼 集いきて
姿見えざる者と 見えし者の間を結ぶ
千の翼は 千の千倍の 見えざるものを動かし
千の千倍の見えざるものは
その千倍の軍団を目ざめさせる

されど…… 白に還りし地図に刻む……
千の旅路の 最初の一歩!
百の冒険の 最初の一つ…・・・

ストーリー|生贄砲と青き円卓

惑星バドマスにおけるガッハの生贄砲実験はその威力を十分にみせつけます。最大出力の那由多分の1(10-60)の砲撃によりリプミラ号は破壊されます。バドマスに出現した伝承族との戦いでゲンは伝承族の精神攻撃が自分には通じないことを知ります。

惑星ドドーでゲンは銀河障壁の話を聞き,リプミラ号の修理の合間に銀河障壁をすり抜けることのできるリングロドの調査に向かいます。銀河障壁の手前で宇宙船を止め,ゲンは単身で障壁を越え,銀河障壁は伝承族のまやかしであることを証明します。

そこでゲンはリングロドとリープタイプの幽霊船に遭遇し,リングロドに不時着します。リングロドは伝承属の異端者であり,彼からかって伝承族が銀河生贄砲により一つの宇宙を消滅させている映像を伝えられます。リングロドは幽霊船により破壊されゲンは行方不明となります。

ガッハの本拠地であるカミオ星が幽霊船に襲われ,厳重な防御システムは破壊され,カミオ星人は全滅の危機に瀕しています。頑丈なガッハの箱船が破壊されたところにリプミラが現れ,さらにザザーンとエイブの宇宙船が到着します。幽霊船との戦いの直前に死んだと思われていたゲンとリムが登場し,リプミラ号はラドウ号を破壊します。

惑星ヨッペでリプミラはダードに襲われます。ダードはライ族がリプミラの設計図から造り出した男性型宇宙船です。強さではとても太刀打ちできません。最終兵器「星の涙」もあっさり受け止められてしまいます。リプミラは捕えられダードの本拠地惑星に連れて行かれます。そこはオルシスに率いられたビメイダーの星であり,ダードはその救世主とされています。

脱出のためダードを死闘を繰り広げているとき,ザザーンの艦隊とシアンの一行が到着します。しかし,そのとき伝承族による銀河の殲滅宣言が発せられ,銀河は一気に戦闘モードになりつつありました。その情報を受けてザザーンは一刻も早く本国惑星に帰還することにします。

銀河系には約20億の文明惑星がありその半数は惑星ドドーを中心とするチュリオム通商圏連合としてまとまり,残りの半数は未確認宙域連合としてまとまりつつあります。そのとき,銀河中心部からブアーのテレパシー映像が届き,1年後に銀河のすべての生命を生贄砲として使用することを宣言します。銀河の危機ということで二つの連合は内部の小異をすててまとまっていきます。

ブアーの映像と一緒に「青き円卓」と呼ばれる地球の映像も届けられ,銀河の二つの連合は地球域に全軍を集結させます。ザザーンとゲンはワープ周期を計算し,1時間後に出発する決断を受け入れます。

リプミラとダートの死闘はエナジー・フォールダウンでも決着がつかず,そこにゲンが現れます。ゲンは「青き円卓」に急ぐことよりリプミラを選択したのです。宇宙船同士の戦いとなり,周辺の建造物と思えわれていた宇宙船はいっせいに飛び立ちます。ビメイダーの大船団は再び放浪の旅に出ます。ダードとの戦いを制したゲンとリプミラはダードの開いたブラックホールの道を通り銀河を縦断し青き円卓に急行します。

ブアーの銀河生贄砲宣言が出された頃,伝承族反乱軍のガタリオンはラドウに伝承族の遺伝子を注入し,究極のリープタイプ宇宙船「真のラドウ号」を完成させます。その念動力は伝承族の評議員たるニブーをあっさり破壊します。ガタリオンとラドウは青き円卓を破壊するため行動を開始します。

地球の周辺にはチュリオム通商圏連合と未確認宙域連合の戦闘艦170億隻あまりが集結します。リプミラ号が遅れて到着したとき,伝承族反乱軍ののアマニが不気味な姿を見せます。彼は50億年間の兵器コレクションを繰り出して乱戦となります。ガタリオンの狙いは地球の破壊であり,ラドウ機は地球を破壊する体制に入りますが,その直前にリプミラ機により深刻なダメージを受けます。

アマニのコレクションと銀河の二つの連合軍は一進一退の戦いとなりますが,そこにエイブのスペースパトロールとリングドロが登場します。彼らの総攻撃によりアマニの表層は破壊されます。リプミラはダインの死とリプリム号の破壊と引き換えにラドウを倒します。アマニの本体を破壊したシアンはキャプテンヒーに連れられて戻ってきました。シスタープレテスは地球の大気成分を調整してくれます。ゲンはラドウ機から生贄砲の照準を探し出し,その中から星図を取り出します。

危機が去り地球では銀河統一会議が開催されます。円卓に現れたダイナック(ゲン)のところに集まったのは予言通り10人でした。

@リプミラ
Aツキメ
B星見
Cガッハ
Dヘクススキー校長
Eシスター・プラテス
Fザザーン
Gキャプテン・ヒー
Hリングドロ
Iエイブ

ここまでは単行本の物語は第9巻までのあらすじですが,物語はさらに17巻まで続き,最終決戦でガタリオンとラドウは消滅し,ブアーは銀河系から離脱しはるかな宇宙区間で自爆し,銀河障壁は消滅します。戦闘に参加した戦闘艦やリープタイプ機の大部分は帰還しましたが,ブアーからの脱出に手間取ったリプミラ号はひどく傷ついたまま銀河系の外宇宙を漂います。