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2008/03/15

エネルギー効率


地球上の化石燃料は有限であり,もっとも質の高い石油の生産ピークが近いということですので日常生活でも省エネルギーに務めることが大切です。それと同時に一次エネルギーをもっと効率よく利用する必要があります。マクロで見た場合,一次供給エネルギーと実際に工場や家庭で使用される最終エネルギーにはギャップがあります。当然,供給とエネルギー>消費エネルギーの関係にあり,その差分は一次エネルギーから二次エネルギーあるいは石油製品などを作り出すときに発生する損失ということになります。

分かりやすい事例は電力です。火力発電所では天然ガス,石油,石炭などを燃焼させて電力を生み出します。そのときのエネルギーの変換効率は35-40%しかありません。私たちが使用している電力の背景にはその3倍近い一次エネルギーが使用されているのです。原子力発電でも同じです。発電に使用できなかった2/3近いエネルギーは温水の形で廃棄されます。日本の火力発電所や原子力発電所がすべて海岸近くに建設されているのはこのためです。せっかく作り出した熱の2/3を捨ててしまうのはいかにももったいない話です。日本の発電所はその巨大さゆえに都市の周辺には建設することができません。福島県や新潟県の大きな発電所から東京に送電するときの損失も電力の数%に相当します。

発電所が大きいために都市のそばに造れないのなら,都市の中に,例えばビルの中に小型の発電設備を設置し,発生熱を都市に供給するコジェネレーション(Co-generation)という考え方が出てきます。これは大規模・集中に対する小規模・分散の考え方です。すでに,コジェネレーションとしてジーゼルやガスタービン・エンジンが実用化されています。発電容量もマイクロ・ガスエンジンでは10kw未満のものも市販されています。

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コジェネレーションの特徴は総合エネルギー効率70-80%と極めて高いことです。ひとつのビルの単位ならエネルギーコストの低減にもつながります。また,商用電力とコジェネレーション発電を組み合わせることにより停電や設備の故障などが発生しても安定した電力が確保できます。現在,車両搭載用として開発競争の続いている燃料電池は総合効率80%,低騒音,排出するのは水だけという優れたシステムなので,コストが下がれば急速に普及すると考えられています。

小規模・分散化の発電システムは先進国だけに有力な仕組みというわけではありません。世界には20億人もの人々が電気にアクセスできない状況にあります。大規模発電は送電システムのコストが高いため,人口の集中している都市以外の給電は困難になります。これを小規模の分散型システムにすると,必要な地域に必要な量の発電が可能になります。一つの国における発電のための投資額もずっと小さくなるでしょう。

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世界的に見て日本はエネルギー効率の優等生とされています。その理由は生産時におけるエネルギー効率が高いことがあげられます。日本のエネルギー単価は国際的にも高いのでエネルギー効率化が進んだということができます。1974年に起こった石油ショックにより原油価格は1バレル2.5$から一気に11.7$に高騰しました。日本中の工場はエネルギーの効率化に投資しました。国民の間にも省エネルギーの意識が浸透し,日本はエネルギー効率の優等生となったのです。

しかし,日本経済が成長するにつれ家庭のエネルギー支出は相対的に低下し,日本人のこころから省エネルギーは忘れらていきます。自動車はどんどん大型化し,エアコンは当たり前,家電製品も大型化していきます。それに対して産業部門だけは厳しいコスト低減のためエネルギー効率の向上に努めてきました。その結果,民生家庭部門と運輸部門のエネルギー消費だけがじりじりと上昇しています。

特に家庭用電力に着目すると,1980年の770億kwhから2002年には1977億kwhとほぼ3倍に増加しています。大型火力発電所や原子力発電所の設備容量は約100万kwです。この発電所が1年間休みなく稼動すると総発電量は約85億kwhです。つまり家庭用だけで大型発電所25基分の電力を消費しているのです。

もちろんその間に核家族化が進行して世帯数が増えています。それにもかかわらず,一世帯あたりの月間使用電力を求めてみると1980年が185kwh,2004年が302kwhと63%も増加しています。それぞれの家庭でもう一度省エネルギーを思い出し,冷暖房の温度設定を見直したり,照明を電球から蛍光灯型電球に変更するなどの対応をされてはいかがでしょうか。

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