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マンゴスチン|オトギリソウ科・フクギ属

原産地はマレー半島とされており,現在でも東南アジアを中心に栽培されている。未熟の状態では薄い黄色であるが熟すと赤紫色になる。タイでは5-9月がシーズンとなっている。大英帝国の時代にビクトリア女王が「わが領土にあるマンゴスチンをいつも味わえないのはいかんである」と嘆いたことから果物の女王と呼ばれるようになった。

厚い柔らかい果皮をもっている。両手を組んで左右から力を加えると果皮に亀裂が入るので,二つに割ることができる。果肉はみかんのように6-7個のブロックに分かれており,一番大きなものには種が入っていることが多い。白い果肉をほおばるとさわやかな甘さが口中に広がる。熱帯果物の女王にふさわしい味であり,食べだすと止まらない。

ライチー,レイシ(茘枝)|ムクロジ科・レイシ属

中国南部原産で世界の熱帯・亜熱帯地方で栽培されている。現地語の発音をカタカナ表記するとライチもしくはライチーとなる。これを漢字にすると茘枝となり,その日本語読みはレイシとなる。英語のlychee は現地語の発音を音訳したものとなっている。

果実は直径3cmほどで果皮は赤いうろこ状になっている。枝にたわわに果実がつくので,枝ごと折り取って市場で売られている。果皮を手でむくと乳白色で多汁の果肉があり,その中に黒い大きな種子が1個入っている。上品な甘みと香りがあり,個人的にはマンゴスチン,釈迦頭,マンゴーと並んで最も好きな熱帯産果物である。

ランブータン (Rambutan) |ムクロジ科・ランブータン属

原産地は東南アジアの半島部か島嶼部とされている。果実の大きさは5cmほどで,柔らかい赤みの強い果皮の表面には柔らかい毛のような突起が密生している。マレー語のランブータンは「毛の生えたもの」を意味している。

果皮をむくと乳白色で果汁の多い果肉があり,中心に楕円形の種子が入っている。この構造は同じムクロジ科のライチーやリュウガンと同じであり,風味も類似している。ただし,ランブータンの種子は渋皮のようなものに包まれており,果肉を歯でそぎとるときにこの渋皮が一緒についてくるため食感は良くない。個人的にはライチーやリュウガンの方が好ましいと思っている。

リュウガン(竜眼,ロンガン)|ムクロジ科・ムクロジ属

原産地は中国南部,中国名が竜眼なので英名はドランゴン・アイとなっている。和名はリュウガンと発音するが中国読みのロンガンもよく使用されている。茶色の果皮の内側には乳白色の果肉と丸くて黒い大きな種が入っている。この種と果肉の色彩から中国では竜の眼と呼ばれている。

竜眼はライチの近縁種であり,同じように美味である。直径2cmほどの果実が枝にたわわにつくので,枝ごと折り取って市場で売られている。果皮を少し切り取り,残りの部分をブドウのように押すと,果肉が簡単に出てくる。さわやかな甘みがある果肉は種が大きいために薄く,そこが残念だ。果肉を乾燥させたものは漢方薬として滋養強壮の効果があるとされる。

ザクロ(柘榴,石榴)|ザクロ科・ザクロ属

ザクロはほとんど一科一属一種に近い変わり者の植物である。高さ数mの灌木に濃い朱色の花をつけ,不思議な内部構造をもった果実をつける。乾燥させた根皮や樹皮は古くから条虫の駆虫薬として用いられてきた。果皮は黄色の草木染めの原料としても利用されている。

原産地は西南アジア(トルコあるいはイランから北インドのヒマラヤ山地にいたる地域),西南アジア,南ヨーロッパおよびカルタゴなど北アフリカとする説などがある。歴史の古い果物なので原産地ははっきりしていないようだ。果実は熟すと赤く硬い外皮が裂け,ルビーのような赤い果肉の粒が現れる。果肉一粒ずつに種子が入っているので食べるのは大変である。

メロン|ウリ科・キュウリ属

メロンはウリ科の一年生草本植物である。原産地は北アフリカや中近東地方であり,紀元前2000年頃に栽培が始まったとされている。原産地から西に伝播したものはメロン,東に向かったものは瓜と呼んでいる。日本にも古い時代に伝わっており,マクワウリなどの名を残している。ネットメロンの果皮の網目は果肉の充実により裂けた果皮を保護するかさぶたのようなものである。

果実は多くの場合球形であるが,ハミウリのようにラグビーボール形のものもある。乾燥地域の原産らしく中国の西域では大量に栽培されており,旬になると市場には山積みされる。値段も1-2元と格安である。甘味が欲しい場合はメロン,水分補給がメインならばハミウリがお勧めである。

メロン|ウリ科・キュウリ属

パキスタン北部で最初に見たときは南瓜かメロンの仲間なのか識別がつかなかった。市場には砕けた品物があったのでようやくメロンと判断することができた。この風変わりな外観をもったメロンはインド圏から西側に栽培地は広がっているようだ。

ハミウリ(吟密瓜)|ウリ科・キュウリ属

中国新疆ウイグル自治区特産の果物でメロンの一種である。名前の由来は自治区内の哈密(ハミ)地区からきている。現在では中央アジアでもたくさん栽培されている。メロンの原産地はアフリカから中近東にかけての地域であり,西からやってきた品種をこの地域で改良してハミウリを作り出したと考えられる。おそらく,シルクロードの旅人もハミウリで喉をうるおしていたことだろう。

果実は楕円形をしており,大きさは品種により異なり大きなものは5kgにもなる。左の写真のものは長手方向で40cmほどもある。果皮は黄色,緑,縞模様など多彩で,マスクメロンのように網目のあるものもある。水分が豊富で,糖度はメロンより少ないため,スイカとともに乾燥地域における水分補給には最適な果物である。

スイカ|ウリ科・スイカ属

原産地は熱帯アフリカのサバンナ地帯や砂漠地帯である。 カラハリ砂漠の先住民族は野生のスイカを貴重な水分供給源としており,同時に数千年前から栽培もしている。種子は脂肪とたんぱく質を含んでおり原産地では食材となっている。中国でも炒ったものをおやつ代わりに食用にしている。列車で乗り合わせて乗客から分けてもらったが,食べ方はひまわりの種以上に難しい。

中国は世界の7割を生産する,スイカの最大の生産地である。中国から見て西からやってきた瓜ということで西瓜と呼ばれた。同じように伝来地を名前をもつ瓜には胡瓜,南瓜などがある。中国の雲南省では一切れが2角(0.2元)であり,新疆ウイグル自治区でもずいぶん屋台の切り身をいただいた。インドでは氷で冷やしてあるので,やはり躊躇してしまう。

パイナップル|パイナップル科・アナナス属

パイナップル(パインアップル, 英名:pineapple)の原産地は熱帯アメリカである。植物名をアナナス,果実をパイナップルと呼称を分ける場合もある。英名:pine-apple はマツカサを意味しており,パイナップルの形状が類似していることから転用された。英語のapple にはリンゴ以外に一般的な果実という意味もある。

アナナスの仲間なので葉は地下茎から長い剣状の葉が叢生し,その中心部の太い茎に果実ができる。作付後15-18か月で収穫することができる。果実の表面に並んでいる亀甲紋は一つ一つが小果の集まったもので,果実の本体は花托が膨らんだものである。ジューシーな甘さがあり,東南アジアや南アジアでは水分補給に好適な果物である。

ドラゴンフルーツ|サボテン科・ヒモサボテン属

ドラゴンフルーツ(dragon fruit),またはピタヤ(pitaya)は,サンカクサボテンの果実である。太い茎から伸びた緑色の細長い葉の先端部に濃いピンク色の果実をつける。原産地はメキシコおよび中南米である。本来の呼称はピタヤであり,ドラゴンフルーツは中国語をそのまま英訳したものである。

果肉は白もしくは赤いゼリー状で豊富な果汁を含んでおり,多数の胡麻粒のような黒い種子が散らばっている。この種子は小さいのでそのまま食べる。完熟すると甘いゼリー状になるとされているが,私が東南アジアで食べたものはリンゴのような食感であり,甘みも少なく果物のイメージではなかった。その後,沖縄でいただいたものは十分果物といえるものであった。

パパイヤ|パパイア科・パパイア属

原産地はメキシコ南部,常緑性の小高木である。ヤシの木と同じように頂部に成長点をもち,ヤツデのような大きな葉を幹から直接出している。成長とともに下部から葉を落とし,幹には葉痕が傷のように残る。たくさんの果実が頂部の幹からぶら下がるように付いている。この頂部の様子はココヤシと類似している。

パパイアは高さ方向に成長するとともに,幹回りも太くなっていく。しかし,幹は木質化しておらず,草本か木本か議論が分かれている。果実は楕円形もしくは球形,中心部は中空となっており,内側にたくさんの黒い種が入っている。果物というより野菜に近く,東南アジアでは未熟な青いパパイヤを千切りにしてサラダ感覚で食べている。

リンゴ|バラ科・リンゴ属

原産地は中央アジアの山岳地帯あるいはカフカスから西アジアにかけての寒冷地とされている。現在では亜寒帯,温帯はもとより亜熱帯地域でも栽培されている。晩春に白い花が一斉に開花する。中国の宿にあった満開の木を見て,少なからず感動した。

果実は品種,手入れ,栽培方法により35-1000gほども大きさが異なる。生産量は世界で6000万トンで中国,米国,フランスが大生産地となっている。2000年前にはヨーロッパで栽培されていた痕跡があり,16世紀に栽培は一般化した。中国のリンゴの品質は日本に比べるとまだまだの感じを受けるが,滞在中はずいぶんお世話になった果物である。

ぶどう|ブドウ科・ブドウ属

ブドウ属の植物は数十種あり,北米,東アジア,インド,中近東,南アフリカにも自生種がある。日本にもヤマブドウなどの自生種がある。一方,栽培種となるとヨーロッパ種と北米種がほとんどとなっている。世界の生産量は約6000万トンで,そのうち80%は加工用(ワイン,ジャム,干しブドウ)となっている。

とはいうものの,ブドウを生食する文化は決してマイナーではない。ブドウは日本のような広い面積の棚で栽培されるものとワイン用のように支持棒に巻きつけたものが一列に並ぶものがある。中国の新疆では多くのウイグル人の家には中庭とブドウ棚があり,その下で食事や踊りが行われる。もっとも,この地域のブドウはほとんどが干しブドウに加工される。

バンレイシ(釈迦頭)|バンレイシ科・バンレイシ属

この果物の正式名称はバンレイシ(蕃茘枝)のようだ。和名では表面の凹凸から釈迦頭と呼ばれることが多い。原産地は熱帯アメリカもしくは西インド諸島とされている。バンレイシ属にはチェリモヤやサワーソップなどの美味な果物が多い。嗜好の差なのか原産地の熱帯アメリカではチュリモヤ,東南アジアでは釈迦頭が主として栽培されている。

英語名がシュガーアップルとなっているように,内部は軟らかくねっとりと甘い果肉と豆くらいの大きさの黒い種が複数入っている。マンゴスチンと並んで最も美味な熱帯果物とされているが,十分に熟さないとそのクリームのような果肉を味わうことはできない。市場で買うときは今日食べれるものということで選んでもらうとよい。

トゲバンレイシ|バンレイシ科・バンレイシ属

正式な和名はトゲバンレイシ(英名:サワーソップ)である。この果物はフィリピンで「グヤバノ」という現地名を教えてもらったが,この名前ではネットで検索しても何も出てこなかった。英名のsoursop は「酸っぱい浸したパン切れ」を意味する。原産地は中南米,熱帯アフリカとされている。同じバンレイシ属の釈迦頭とはごく近い近縁種である。

果実は楕円形で長さは20-30cmほどで,緑色の果皮の表面には少し硬いトゲが一面に生えている。果肉は白く,私が食べたものは上品な甘さと酸味をもっており,繊維質の食感はそれほど気にならなかった。文献ではリンゴ,バナナ,パインアップルを混ぜた様な風味と香りがあると記されている。繊維質が食感を悪くしているのでジュースやシャーベットに加工されることも多い。

アテモヤ|バンレイシ科・バンレイシ属

マレーシアのサラワク州の市場で見かけた。果皮の感じからアテモヤであろうと判断した。アテモヤは同属のバンレイシ(釈迦頭)とチェリモヤを交配して品種改良したものである。釈迦頭はその名のように果皮がうろこ状あるいは亀甲状の凹凸がある。一方,チェリモヤの果皮にもうろこ状の模様はあるが,果皮自体はひとつながりになっている。どちらもねっとりとした甘さが特徴で,チェリモヤは「森のアイスクリーム」と形容されている。

両者を交配してできたアテモヤの果皮はうろこ状というよりは突起状になっている。甘味だけの釈迦頭に比べ程よい酸味と芳香を兼ね備えているため,近年は高級種として栽培されるようになった。ツアーの最中とはいえ買っておくべきだったと悔やまれる。

ブンタン|ミカン科・ミカン属

ミャンマーで巨大なかんきつ類を見かけた。現地ではチュエゴッティと呼ばれているが,日本のサイトにはそのような単語は見つからなかった。日本でいうブンタン(ザボン)の仲間であろう。ブンタンは直径20cm以上にもなるが,果皮は異常に厚く,手でむくことは難しい。現地ではナイフで果皮をむいており,むき終わったものはまるで毛刈りの済んだ羊のようになる。日本では果皮をシロップで煮込み,ザボン漬けにしている。

日本では果汁が少なく独特の風味をもっているが,ミャンマーのものは果汁が豊富であっさりした適度な甘みがあり,水分補給に向いた果物であった。フィリピンでも同じようなものを食べたが,こちらは果汁が少なく,酸味も強くて全部を食べることはできなかった。

マンダリンオレンジ|ミカン科・ミカン属

wikipedia ではミカン類(柑橘類)は下記のいくつかのグループに分類されている。
(1)オレンジ類(バレンシアオレンジ,ネーブルオレンジ)
(2)グレープフルーツ類(グレープフルーツ)
(3)香酸柑橘類(ユズ,ダイダイ,カボス,レモン)
(4)雑柑類(夏みかん,ハッサク)
(5)ブンタン類(ブンタン,ザボン,晩白柚)
(6)みかん類(マンダリンオレンジ,温州ミカン)

オレンジはみかん類に近い種であるが,別物として分類されている。マンダリンオレンジの原産地はインドのアッサム地域とされ,交雑により多くの栽培種に分かれている。オレンジの原産地もアッサムとされているので,遠い祖先は同じ可能性は高い。

レモン|ミカン科・ミカン属

原産地はインド北部のヒマラヤ山麓とされている。花は白もしくは薄いピンクであり,香りは強い。果実は紡錘形で尾端に乳頭と呼ばれる突起がある。ただし,栽培環境で果実の形は変わり,左の写真のように球形に近いものもある。みかん類と同じように未熟果は緑色をしているが,熟すと黄色になる。

レモンはほとんどの場合,絞った果汁を利用する。レモンの果汁は非常に酸っぱく,pHは2(強い酸性)を示す。ただし,炭酸が酸っぱくないようにph が低いから酸味が強いという関係にはない。レモンには運動により生じる疲労物質の乳酸を減少させるクエン酸(酸味のもととなる)物質やビタミンCも豊富に含まれている。

ドリアン(榴蓮,durian)|アオイ科・ドリアン属

原産地は東南アジアのマレー半島である。ドリアンはマレー語で「とげを持つもの」を意味している。学名の「Durio zibethinus」は「じゃ香の香りをもつ」を意味しており,じゃ香かどうかは別にして,強烈な匂い(臭い)をもっている。自生の樹木は高さ20-30mにもなり,大きさは20-30cm,重さは1-5kgほどになる果実をつける。

灰緑色の外皮は革質で全体が硬い大きな棘に覆われており,果物というイメージではない。果実の内部は5室に分かれており,各室に2-3個の薄茶色の種子の入った黄色の果肉がある。果肉はねっとりとしたクリーム状であり,個人により好き嫌いがはっきり分かれる。食べ慣れると匂いも気にならなくなり,やみつきになる。最近は匂いを抑えた品種も出回っている。

マンゴー(芒果,Mango)|ウルシ科・マンゴー属

原産地はインドからインドシナ半島周辺と推定されている。マンゴーの木は常緑高木で樹高は40m以上に達する。枝の先端に萌黄色の複総状花序を多数付け,小さな花が房状につく。wikipedia には開花後に強烈な腐敗臭を放って受粉を助けるハエを引き寄せると記載されているが,花はずっと高いところにあるのでそのような臭いはかいだことはない。

果実は扁平な楕円形であり,長さ3-25cm,幅1.5-15cmと種類により大きさの差異がある。原産地では数千年前から栽培されており,そのほとんどは果皮が黄色のものである。果肉も黄色から橙紅色であり,ねっとりとした甘さである。中心部に扁平な楕円形の大きな種子がある。未熟果は非常に酸味が強いが,それに軽く塩をふっておやつにする文化も広く見られる。

青マンゴー|ウルシ科・マンゴー属

青マンゴーという品種があるわけではない。普通のマンゴーの未熟果を識別のため青マンゴーと呼ばせてもらっている。東南アジアやインド圏ではこの時期の固く酸味が強いマンゴーがよく店頭で売られている。緑色の果皮をむくと半分黄色く色づいた果肉が現れ,食べるとけっこう酸っぱい。酸味を抑えるために軽く塩をふることもある。

アップルマンゴー?|ウルシ科・マンゴー属

南インドのクンバコーナムでマンゴーに似た果物を買った。1kgで50Rpで売られていた。近くで売られているマンゴーより少し安い。形はまったくリンゴと同じであり,熟すると果皮の色は黄色から薄い赤に変わっていく。果物屋のおじさんは「ウマニ」と呼んでいた。これは日本ではアップル・マンゴーと呼ばれているアーウィン種のマンゴーなのかもしれない。今までインド圏で出会ったマンゴーは一様に扁平な楕円形であり,このような形のものは初めてである。

球形なのでリンゴと同じようにして皮をむく。果肉もマンゴーと同じように黄色であり,匂いも同じである。リンゴと同じようにかじってみると味はそのままマンゴーであった。種子は楕円形のマンゴーと同じ形であり,少し小さい。食べるところが多いのでお買い得だ。

タマリンド|マメ科・タマリン属

アフリカから南アジアにかけての比較的乾燥した熱帯が原産であり,南アジア,東南アジア,中南米の亜熱帯および熱帯各地で栽培されている。英名はTamarind,学名(Tamarindus indica)はアラビア語の「インドのナツメヤシ(デーツ)」に由来している。樹高は20m以上になる常緑高木であり,季節になると長さ10cmほどのソラマメようなたくさんの果実が枝からぶら下がる。

黄褐色のマメのさやはもろく,中には複数個の種子が入っている。可食できるところは種子の周りについているペースト状の暗褐色の果肉である。ねっとりして柔らかく,適度の甘みと酸味があり,外観からは想像できないおいしさである。市場ではさやのまま,もしくは果肉をまとめてボール状にして売られている。

ジャックフルーツ(パラミツ)|クワ科・パンノキ属

和名のパラミツよりも英名のジャックフルーツの方が通りがよい。原産地はインドからバングラデシュにかけての地域である。雌雄同株であり,雄花は枝先につくが,雌花は幹生花と呼ばれ幹に直接つく。幹から複数個ぶら下がる長楕円形の果実は巨大であり,長さは70cm,重さは40-50kgにもなる。

果実の表面には数mmの突起で覆われている。熟すと甘い匂いを出す。果実の内部には繊維状の組織にくるまれるように多数の黄色の果肉が入っている。果肉の中には種子が入っており食用になる。市場や街中では解体して果肉の単位で売られている。あっさりとした甘みの果肉は1個数円程度である。現地では果肉は生食以外にも料理の材料としても使用される。

チェンペダック?

形状からしてジャックフルーツの仲間であろうと推測される。しかし,ジャックフルーツの仲間はずいぶんいろいろあるようだ。中には左の写真よりさらに長楕円の形状でドリアンのような強い匂いを出すものもある。

パンノキ|クワ科・パンノキ属

パンノキ(Artcarpus altilis)はクワ科の常緑高木であり,大きな葉は7-9裂の掌状となっている。パンノキ属の学名はパン(artos)と果実(karpos)を組み合わせてものとなっており,そのままパンの木ということになる。英語名も「Breadfruits tree」である。果実は直径10-30cm,枝先に2-3個ずつ着生する。果肉にはでんぷんが多く,蒸し焼き,直火焼きなど加熱調理して食用にされる。また火であぶって乾燥させ,ビスケット状にして保存することもできる。

原産地とされるポリネシアはおおむねハワイ諸島,イースター島,ニュージーランドを結ぶ三角形の広大な地域を占めている。有用な食料となるパンノキは海洋民族であるポリネシア人の拡散とともに分布域を拡大していったと考えられている。

すもも(酢桃,李)|バラ科・サクラ属・スモモ亜属

サクラ属にはモモ亜属,スモモ亜属,サクラ亜属,ウメ亜属などが含まれており,分類は確定していないようだ。スモモ亜属にはプルーン,ウメ,スモモ,アンズなどが含まれている。果実は核果であり,果皮は柔らかくて果肉の中心に固い核子に包まれた種子がある。原産地は中国(ニホンスモモ)西アジア(ヨーロッパスモモ)とされている。

日本には中国から弥生時代に渡来したと考えられている。英名は「Japanese plum」となっており,これは明治時代に日本在来種のスモモが米国に持ち出され,現地の西洋スモモと交配してプラムとなったことによる。果皮の色は赤,黄色,緑と多彩であり,果肉は黄色,白色のものが多い。中国の市場で仕入れたスモモは新鮮であり,酸味と甘みのバランスがとれていた。

イチジク(無花果,映日果)|クワ科・イチジク属

原産地はアラビア半島南部とされている。メソポタミアでは6000年前から栽培されていたことが知られている。ヨルダン渓谷では1.1万年前の炭化した実が出土しており,農耕文明の始まりの時期から栽培化されていた可能性もある。漢字の「無花果」は花を咲かせずに実をつけるように見えことに由来している。イチジクの花は花軸が肥大化した花嚢の内面に無数の花をつける。自然界では花嚢内部にはイチジクコバチが生息しており,受粉を媒介する。

葉は三裂または五裂掌状で大きい。エデンの園で禁断の果実を食べたアダムとイブは自分たちが裸であることに気づいて,イチジクの葉で作った腰ミノを身につけたと旧約聖書の創世記には記されている。中国西域のものは甘くねっとりとしており,日本のものとはだいぶ異なっている。

アボカド(Avocado)|クスノキ科・ワニナシ属

正式和名は「アボカド」であり,「アボガド」ではない。私もずっとアボガドを使用してきたがこの機会に正式名称を使用するようにしたい。原産地はメキシコ,中央アメリカであり,現在では世界中の熱帯,亜熱帯地域で栽培されている。アボカドの最大の特徴は果物では考えられない高い栄養価である。果肉には16%もの脂肪が含まれており,「森のバター」の別名がある。また,たんぱく質,ビタミンA,C,Eも含んでいる。

東南アジアや南アジアではほとんど一年中市場にある。ただし,日本のように完熟シールが貼られているわけではないので,食べごろをちゃんと見分ける知識が必要である。私は果皮を軽く押して少し柔らかさを感じるものを選んでいるが,固すぎたり,腐っていたりとけっこう失敗もある。

ベルノキ/Beal / Stone Apple|学名:Aegle marmelos|ミカン科

大きさはグレープフルーツほどもあるこの極めて固い果皮をもった果物はインドやバングラデシュでよく見かけた。高さ数mに満たない小高木にたくさん実をつけていたのがこの果物だと思われる。近縁種の「ゾウノリンゴ(Foronia limonia)」と酷似しているが,バングラデシュや北インドで良く見かけたので「ベルノキ」であろうと判断した。ヒンディー語では「Bel」であり,路上のジュース屋で「Bel」ですかと話しかけると受けることだろう。

果皮は木質化しており,ナイフ程度ではまったく歯が立たない。現地ではコンクリートの道路にたたきつけて割っていた。内部はねっとりしたオレンジがかった黄色の果肉が入っており,生食はしないでジュースにする。現地の男性たちは元気になるよとコップを空けていた。確かに,インド世界では伝統的に薬として使用されているようだ。

ココヤシ|ヤシ科・ココヤシ属

ヤシの仲間ではもっとも有名であり,一般にヤシというとココヤシを指す場合が多い。ココヤシの原産地は西太平洋の島々からアジアにかけての熱帯・亜熱帯地域とされており,現在では世界中の熱帯地域で栽培されている。ココヤシの木は幹の太さが上から下までほぼ同じで,高さは30mにもなる。幹の最上部に成長点があり,長さ5mほどもある新しい羽状複葉の葉を広げるとともに古い葉は脱落していく。

成長点からは花穂が伸びたくさんの実をつける。実は固い殻に包まれており,海水に浮くため容易に海流に乗って他の場所に分布域を広げることができる。実の内側にはコプラと呼ばれる白い固定胚乳と液状の胚乳が入っている。液状胚乳はそのまま飲用することができる。固形胚乳は乾燥後,粉末にされココナツ・ミルクとして料理などに使用される。

オウギヤシ(パルミラヤシ)|ヤシ科・パルミラヤシ属

原産地は熱帯アフリカであり,東南アジアからインド東部にかけて栽培されている。幹の感じは異なるが,ココヤシのように直立し高さは20-30mにもなる。頂部には扇のように放射状に広がる葉をたくさん付ける。wikipedia には「燃える線香花火を逆さにしたような容姿」と表現されており,これはなるほどと思う表現である。乾燥に強くインドの内陸部の乾燥地帯でもよく育っていた。

花柄を切断すると樹液が浸みだしてくるので,これを容器で受けると翌朝には自然発酵して「ヤシ酒」になる。果実は直径15cm程度,ブドウのように多数の果実の集合体となる。果実は3室に分かれており,そこに半透明の柔らかい果肉(胚乳)が入っている。この果肉はそのまま食べることもできる。ほんのりと上品な甘味が楽しめる。

サラック|ヤシ科・サラカヤシ属

最近までサラック(サラク)がこのようなトゲだらけのヤシの仲間の果実であるとは知らなかった。サラック(Salacca zalacca)の学名はインドネシア語・マレーシア語の「Salak」からきているようだ。原産地はインドネシアあるいはマレーシアであり,現在の自生地域も両国となっている。

サカラヤシは茎が短く,1本の茎から1本の葉柄が出ている。葉柄の下部には長い鋭いトゲが密生しており,果実は葉柄の下のところにかたまって実る。この果物はサラックと呼ばれており,外皮は赤褐色で鱗状になっているためスネークフルーツともいわれる。この外皮は手で簡単にはがすことができ,内部には白い果肉がある。酸味や渋みがあり個人的にはさほど好きな果物ではない。

ナツメヤシ(デーツ)|ヤシ科・ナツメヤシ属

ナツメヤシは北アフリカや中東で広く栽培されており,その果実(デーツ)は地域の主要な食品の一つとなっている。ナツメヤシは非常に古くから,おそらく5000-6000年前から栽培されてたと考えられている。原産地は北アフリカかペルシャ湾沿岸と推定されている。

5年目くらいで樹高は数mに達し,実をつけ始める。果実は多数の固体が集合した房状になっており,大きさはぶどうの房より2回り大きい。デーツは6ヶ月ほどで完熟する。通常は熟して軟らかくなったものや干したものをそのまま食べる。干したものは糖度が高く,干し柿を濃厚にしたような甘さがある。カロリーも高く,かつ保存もきくので非常に有用な食料にもなる。

アブラヤシ(オイル・パーム)|ヤシ科・アブラヤシ属

生食用果実ではないがマレー半島やボルネオ島では広大な農園が広がっており,この地域を旅行したら必ず目にする植物なので紹介する。一般的にアブラヤシといわれる植物は西アフリカ産のギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)であり,植物油を採取するため中部アフリカの熱帯雨林地帯で広く栽培されていた。

成長すると樹高は20mほどにもなるが,農園では果実の採取を容易にするため,一定の高さ以上になると伐採して更新する。幹の先端部に成長点があり,ここから十数枚の3-5mほどの羽状複葉の葉を広げるとともに古い葉は脱落していく。実は大きな球状となり重さは40-50kgにもなる。表面に多数の小さな果実が密集している。果肉と種子(核子)は油分に富み,それぞれ搾油されて植物油として広く利用されている。

スターアップル|アカテツ科・オーガストノキ属

この果物の名前は少し自信がない。ベトナムではミルクフルーツと呼ばれているが,正式名称ではない。いくつかの文献を調べて,スターアップルであろうと判断した。和名はスイショウガキ(水晶柿)となっている。果実を横に切ると断面に星形に種が並ぶので英名の由来となっており,半透明の果肉が水晶柿の由来である。ベトナムの呼称ミルクフルーツは果皮に傷をつけると乳白色の果汁が出てくるためである。

原産地は中米,西インド諸島であり,現在では世界中の熱帯地域で栽培されている。東南アジアでは縦に半分に切って,スプーンですくって食べるのが流儀である。味はクセの無い甘さで2個くらいは難なく食べ切ってしまう。ミルクフルーツは2個で30円ほどであった。

カシューナットノキ|ウルシ科・カシューナットノキ属

インドの東海岸,プリーにある世界遺産のスールヤ寺院でこの木を見つけた。原産地はブラジルで,現在は世界中で栽培されている。カシューナットノキの果実は特異な形態をしている。

果実に見える緑色の部分はカシューアップルと呼ばれる花托が肥大したもので,本物の果実はその先に付いている灰褐色の部分である。この本当の果実の中にある勾玉形の仁の部分がいわゆるカシューナッツである。映像では見たことはあるが,現物は初めてなので記念写真にした。

レンブ(ジャワフトモモ)|フトモモ科・フトモモ属

正式な和名はジャワフトモモであるが,レンブ(蓮霧)のほうが通りがよい。英名もWax Apple,Rose Apple など多彩である。原産地はマレー半島,東南アジアでは広く栽培されている。レンブの木は常緑小高木で白い花が開花する。フトモモ科の花に美しいものが多い。中にはレンブのように花弁が退化し,その代わりに長い雄しべが多数ありとてもよく目立つものもある。

果実は熟すと赤もしくは白くなり,表面はワックスを塗ったような光沢があり,とても美しい。これは英名のWax Apple の由来であり,芳香がすることからRose Apple とも呼ばれている。果実は果皮をむかずそのまま生食する。残念ながらできの悪いリンゴのようで,歯ごたえがなく,味も酸味が主体で買って食べようとは思わない。

カカオ|アオイ科・カカオ属

カカオは「カカオノキ」、「ココアノキ」とも呼ばれる。樹高は4.5m-10m程度である。カカオの生育には規則的な降雨と排水のよい土壌,湿潤な気候が必要である。原産地は中央アメリカから南アメリカの熱帯地域とされている。

幹に直接多数の花をつけ(幹生花),そのごく一部のみが結実する。果実は長さ15-30cmの紡錘形で幹からぶら下がってつく。果実の中にはパルプと呼ばれる白いねっとりした果肉に包まれ20-60個の種子が入っている。これがカカオ豆である。カカオ豆の胚乳部分は40-50%の脂肪を含み,すり潰したもの(カカオマス)はココアやチョコレートの原料となる。

バナナ|

実の付き始めたバナナは下は赤紫色の大きな花序(複数の花の集合体)が突き出ている。バナナの花序は複数の果房(果段)からできており,各果房には10-20本の果指(花)が付き,一つの果指が一本のバナナに成長する。 果房(果段)は3段から7段くらいにもなり,茎はその重さに耐えられなくなって曲がってしまう。巨大な葉といい,重すぎる実生といいバナナは本当に変わった植物だ。

バナナの学名は旧約聖書の「エデンの園」に出てくる名前が当てられている。料理用バナナは「楽園の木の実」,生食用は「知恵の木の実」となっている。原産地はマレー半島辺りだというのが定説である。原種のバナナの実には小豆大の種がある。1万年ほど前に人類には都合のよい種子無しの変種が出現し,世界の熱帯・亜熱帯地域で広く栽培されている。

グアバ|フトモモ科・バンジロウ属

和名はバンジロウ,蕃石榴(バンザクロまたはバンセキリュウ)ということもある。私はずっとグアバの果皮は緑色だと思っていたので,どうして和名が蕃石榴なのか疑問に思っていた。wikipedia を見るとザクロに似た画像があり,熟したものは必ずしも緑色ではないことが分かった。フトモモ科なので花は長くて白い雄しべが目立つが,白い花弁も一応付いている。香りの強い果物で薄い果皮の内部にはたくさんの小さくて固いた種子を含む白あるいはピンク色の果肉がある。

桑の実|クワ科・クワ属

クワ(ヤマグワ)は蚕の飼料としてかっての日本では重要な栽培作物であった。葉を利用するため幹が一定の高さになると枝を切り葉を取っていた。そのため栽培されているクワの木は大きく成長できなかったが,放置すると15mほどに成長する。

果実は桑の実(英語名はMulberry) と呼ばれ,生食あるいは果実酒の原料となる。熟した実はアントシアニン系の色素をもつポリフェノールが含まれているので,濃い赤あるいは紫色となり,甘酸っぱくておいしい。かっての日本の山村では子どもたちのおやつであったが,養蚕の衰退とともに桑の木もジャマもの扱いとなっている。

グーズベリー|スグリ科・スグリ属

正式和名はセイヨウスグリであるが,北海道の田舎で子どもの頃に覚えた英語名のグーズベリー(gooseberry)の方がなじみ深い。原産地はヨーロッパから西アジアにかけての地域とされている。ヨーロッパでは広く栽培されており,果実をジャムなどに加工している。

木は高さ1.0-1.5mほどの茂みを作り,枝には鋭いトゲが付いている。子どもの頃はこのような茂みがあちらこちらにあり,つまみ取っては食べていた記憶がある。それほどおいしいという記憶はない。温帯あるいは亜寒帯の植物にもかかわらず,インドネシアで見つけたときはちょっと驚いた。

タマリロ(ツリートマト)|ナス科・ナス属

タマリロ(学名:Solanum betaceum、英名:Tamarillo)はナス属の常緑小木で,果実は食用として利用される。原産地は南米・ペルーの高原地帯である。同じナス科のトマトの近縁であり,ツリートマト,木立ちトマトとも呼ばれる。wikipedia によると,タマリロはニュージーランドでマウリの言葉を元に作られた造語であると説明されていた。

写真の果物はスマトラ島のブラスタギで見かけたものであるが,名前を知る手掛かりは皆無であった。たまたま,「熱帯果物紀行」のサイトを見ているときに,似たようなものがあることに気が付いた。このサイトは熱帯の果物にかけては日本でもっともよく整理されたものの一つである。果実の大きさは5-6cm,完熟すると深紅色または暗紅色になり,果肉はゼリー状でやや酸味が強いと報告されている。

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モリンダ・シトリフォリア(ノニ)|アカネ科・モリンダ属

モリンダ・シトリフォリア(Morinda citrifolia)は学術名であり,和名はヤエヤマアオキ(八重山青木)となっている。一般的には「ノニ」と呼ばれることが多いようである。ノニはポリネシアの呼称であり,同地域では伝統的食品として利用されている。原産地はインドネシアのモルッカ諸島あたりとされており,ポリネシア人の先祖がこの植物を携えて太平洋に乗り出すことにより,南太平洋に広まったとされている。

果実ははジャガイモほどの大きさで表面がでこぼこしている。この凹凸は花の咲いた痕跡である。未完熟の果実は無味無臭であるが,完熟すると白くなり,半液体状にまで柔らかくなり,チーズの腐ったようなえもいわれぬ悪臭を放つようになる。花は一年中咲き,3か月ほどで果実は熟すので年間を通して収穫することができる。

サポジラ|アカテツ科・サポジラ属

サポジラ(学名:Manilkara zapota )の原産地はメキシコであり,スペインが植民地にしたことにより世界各地に移入された。東南アジアではフィリピンが起点となっているようだ。樹高は30-40mまで達し,樹皮にはチクルと呼ばれるチューインガムの原料となる白く粘り気のある物質が含まれているので,和名はチューインガムノキとなっている。

葉は厚い照葉樹であり,季節に関係なく開花し果実をつける。果実の外観はジャガイモに似ており,とても地味である。おそらく,果物の屋台などで見かけたことがあるはずであるが,記憶には残っていない。ということでまだ食べたことはない。食べた方の感想は非常に甘くキャラメルか綿菓子のような風味,あるいは甘柿を更に甘くした感じと記されている。

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