亜細亜の街角
■黄河とシルクロードが交差する大都市
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蘭州(ランジョウ) (地域地図を開く)

甘粛省の省都蘭州は前漢時代に防衛拠点が築かれたから,黄河とシルクロードが交わる拠点として発展してきた。現在は人口260万人,この地域最大の工業都市である。

町は黄河に沿って東西に長く,南側に市街地,北側には白塔山がある。黄河をまたぐケーブルカーが白塔山と結んでおり,黄河と蘭州の街の景観を眺めることができる。市内の移動は市内循環バスが便利だ。蘭州駅が起点となり,黄河沿いの中山路を経由して駅に戻ってくる。

西安→蘭州移動

西安汽車站(09:15)→蘭州汽車站(19:30)と676kmをバス(110元)で移動する。西安汽車站は西安駅前にある。前日に汽車站(バスターミナル)でキップを購入したら何と当日のものであった。

早めに汽車站に行って退票窓口でキップの日にち変更をお願いした。日本語的中国語は何とか通じたらしく,共産党員の身分証をつけた汽車站の主任(站長)が骨をおってくれたので同じ時間のバスに乗ることができた。顧客サービスの質は格段に良くなっていることに「感謝」である。

西安→蘭州の道路はほとんど高速道路になっている。西安近郊では両側が広い麦畑になっていたが,しだいに山が近くなり巾1kmほどの回廊になる。時には山道になり,また次の回廊が表れる。

細い道のブラインドカーブに麦を山積みしたトラクターが止まっており,それを避けようとしたトラックがこちらの車線にはみ出し,バスは急ブレーキで止まった。相手との距離は5mほどである。

駅前の貨朕賓館

蘭州駅(火車站)はなかなか立派である。駅舎の上には「蘭州」の文字看板が掲げられている。ただし,蘭の文字はくさかんむりの下に横棒二本に簡略化されている。これではちょっと元の字を想像することは困難だ。駅前は広場になっており,その向こうの通りにバスは停車した。

駅前でひときわ目立つ建物が貨朕(本当は耳へん)賓館である。30元のドミのベッドは清潔でセキュリティもしっかりしている。TVもあるし文机も備え付けられている。2階の豪華なレストランも高くはない。主菜1品にスープ,ごはんをいただいて10元程度だ。蘭州のお勧め宿である。

蘭州駅前広場の風景

砂鍋は残念ながら食べる機会はなかった

翌日は6時に起床した。北京→西安→蘭州と西に移動しているので同じ時間に起きても明るさが変わる。駅前の天水路には朝食屋が少ない。最初にみつけた店で包子1蒸篭(2元)とおかゆ(1元)を注文する。しかし,包子は10個も入っておりとても食べきれない。

駅前から市内循環トロリーバスが出ている

バイク荷車で大量の荷物を運搬する

中学校の標語

子どもたちと一緒に小学校を見に行く

パンもなんとなく西域のものになってきた

黄河第一橋

駅前から市内循環トロリーバスが出ており,停留所の名前をチェックし,黄河第一橋(中山橋)を確認してから乗り込む。1/3周したところで黄河が見える。2本の橋の横を通過し,3本目が中山橋である。橋はあいにく工事中のため通行不可であった。工事現場に看板があり橋の由来が書かれていた。

漢字から意味を読み解くと,1909年清朝政府により「蘭州黄河鉄橋」として建設された,全長は233.5m,当時の金で白銀30.6万両が投資された,1928年に「中山(孫文の別名)橋」と改名された,なるほどそうであったか。また,黄河に架けられた最初の橋なので黄河第一橋とも呼ばれる。

橋の下半分は工事用の覆いで隠されていたが,橋の構造は良く分かる。橋の下には黄河が流れている。乾期なので水量はそれほど多くはない。水は濁ってはいるものの,まだ黄土高原を通過していないので,黄河本来の色ではない。

中学生の隊列

近くを中学生の一団が通りかかった。服装はジャージの上下,中にはジーンズの子もいる。経済発展により食糧事情が改善されたせいか,子どもたちの体格は日本の中学生といい勝負である。その反面,小学校でもたくさんの肥満児を見かけた。

西遊記の登場人物の象もある

黄河の対岸は白塔山となっており,左には山に向かうロープウエイが見える。橋の隣には大きな亀の背に「黄河第一橋」と印された石碑があり記念写真スポットになっている。また,反対側には西遊記の登場人物の象もある。孫悟空は筋斗雲に乗り小手をかざしている。

羊皮筏子

「羊皮筏子」とは羊の皮に空気を吹き込み,それを複数個組み合わせて作った筏のことである。遠い昔,黄河には橋が無く,人々はこのような筏を使って黄河を渡ったという。現在は蘭州の観光用として生き残っている。

値段交渉をして1回20元ところを15元にまけてもらう。救命胴衣を着けて筏に乗るとムスリムの船頭が櫂を使って200mほど上流までこぐ。岸辺の水は少し臭うが,川の中ほどになると臭いも消える。船頭が筏を反転させると,筏はゆっくりと元の場所に流されていく。

従業員が集められ体操の後に上司の説教があった

白塔山眺望

中国では顧客サービスの質の向上が大きな課題になっている。一昔前の国営企業の「売ってやる」体質からは信じられないほどの大転換である。黄河沿いの高級レストランでは従業員が集められ,体操の後に上司の説教があった。このような努力により僕のような個人旅行者もたいしたトラブル無しに中国を旅行できるようになったことはとても喜ばしい。

このレストランから白塔山にケーブルカーが運行されている。往復16元で,なぜか料金は行き(登り)が10元,帰りが6元と異なる。ゴンドラの眼下には黄河と黄河沿いに近代的なビルの立ち並ぶ蘭州の街が広がる。

大気汚染のせいか街がかすんでいる。対岸の山は黄土高原のように水の浸食に弱そうだ。斜面を守るため等高線に沿った狭い道を作り植林が行われている。

このゲームはよく分からなかった

ゴンドラで町側に戻り,名物の「牛肉麺」を食べに行く。近くにいた人と同じものを注文すると,食券売り場で食券を買わされ,さらにセルフサービスで取りに行かされた。中に入っている具により値段が異なり,僕のものは5.2元とこの国の水準からするととても高い。

豪華なトッピングの牛肉麺はさすがにおいしい。しかし,いつものように自分の食べるものの写真を撮り忘れてしまい紹介できないのは残念である。同じテーブルの客にこの地域独特の巨大な揚水水車である「左公車」の場所を聞いて出かける。

左公車

黄河第一橋からバスに乗るとたった2駅で左公車公園に到着する。このような巨大な水車は明代からあったという。普通の水車の羽の部分に斜めになった樋が取り付けられている。

水車が川の水流により回ると,水中では樋に水が入り,最高地点で水が流れ出るようになっている。流れ落ちた水は木製の水路に導かれ,灌漑などのために利用された。川の水流を利用した優れものの自動揚水機である。水路の高さを得るため水車はこのように巨大になった。

黄河の水は中流域で広大な農地を灌漑するために使用され,その下流域では水が無くなる「断流」という現象が日常化している。ひどいときは年の半分以上も水は流れず,深刻な農業被害が出ている。

黄河周辺の灌漑農地で大量に使用される農業用水のかなりの部分は地下水に頼っており,地下水位の低下も中国農業のアキレス腱になっている。地下水という水の貯金を食いつぶしながら食糧自給を達成した中国では,経済発展とともに肉食文化が急速に普及し,穀物需要は急増している。

また,工場用地や道路用地のため農地が減少しており,中国が食糧の大輸入国に転じるのではと危惧されている。そのような事態が起こった場合,世界の穀物貿易は大混乱に陥ることは必至である。

慢性的に水不足に陥っている黄河流域に長江水系から水を送ろうという巨大な構想(南水北調)が研究されている。中国南部の長江流域とその南側は中国の水資源の80%を占めているが,黄河流域およびその北部は12%に過ぎない。

このアンバランスを解消するため,長江の上流,中流,下流からそれぞれ取水し華北に送水することが考えられている。1400年前の隋の時代に長江と黄河を横断し,杭州と北京を結ぶ2500kmの大運河を完成させた国である。北部の水環境がさらに悪化したら,この構想を実行に移すかもしれない。

ブドウの回廊は西域の風物詩である

古刹の雰囲気がある

寄存処とはなんだろう

駅前広場横の古い住宅地の子どもたち

蘭州駅のすぐ横に庶民のための高層アパートがある。その近くでは古い平屋の家屋が取り壊されており,その土地にも同じようなアパートが建てられるようだ。

古い町並みを見に行ったら,子どもたちが周辺を案内してくれた。子どもたちの服装は日本とたいして変わりない。写真のときのポーズは決まってピースサインである。子どもたちにはお礼に日本から持参の水ヨーヨーを作ってあげた。

チャイナドレスの子も写真に入ってくれた

ゴミを収集する

集合住宅の景観

生活雑排水はたれ流し状態である

社会主義は中国では死語に近い

小学校でのイベントを見学する

朝の散歩のとき小さなイスを抱えた小学生を見かけた。後を付いていくと小学校にたどり着いた。大勢の子どもたちが校庭でイスに坐っている。子どもたちの服装はジャージ,私服とまちまちである。いずれもずいぶんこぎれいである。国歌が流れると子どもたちは起立し右手のこぶしを肩に上げる。ありがたいことに写真は自由に撮れたので,たくさんの笑顔が僕の写真集に加わった。

何のイベントなのかよく分からない

国旗掲揚

靴などの修理屋

駅前の交通標識

とてもリアルな銅像

おそろいのファッション

立派なモスクもある

街角点描

ビザの延長に感謝する

蘭州ではビザの延長ができる。ガイドブックを紛失しウルムチの地図がないため,滞在最終日に公安外事処に行ってビザ延長をお願いする。

まだ中国に入ってから10日しか経っていないのでウルムチで言われたが,事情を説明すると受け付けてくれた。さらに,出来上がりは明日のところをその日のうちに受領できた。ここでも感謝である。

道具屋

靴などの修理屋

はい,こんにちわ

このネギはどこを食べるのであろうか

駅前から出る市内巡回バス

なんとなくいい雰囲気だね


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