亜細亜の街角
ガンガー源流の聖地
Home 亜細亜の街角 | Gangotri / India / Sep 2004

ガンゴートリー  (地域地図を開く)

ガンゴートリーについてヒンドゥー神話は次のように語っている。その昔,バギーラタ王は,天界を流れるガンガーの浄水を求めて,熱心に祈りと苦行を続けた。それを受け入れたガンガー女神は地上に降りることを承知したが,世界を滅ぼしてしまうことを恐れ,ためらった。

そこで王はシヴァ神に,ガンガーを髪で受け止めてくれるよう願って,激しい苦行を捧げた。シヴァはついに王の願いを聞き入れ,ガンガーをいったんその髪に受けてから地上に流した。ガンゴートリーとは「ガンガーの降下」を意味する。

ガンゴートリーは標高3048m,ヒマラヤの奥深い谷間にある。ここではガンガーはバギーラティ川と呼ばれる。ガンガー女神を祀る寺院の回りにアーシュラム(道場),宿泊施設,土産物屋がとりまいている。

ここからさらに18kmほど上流に行くと,ゴームクとなる。そこは氷河の末端から,ガンガーの最初の水がほとばしり出る本当の源となる。ガンゴートリー氷河は年々後退しており,ガンガー神話ができた頃は,氷河の先端はずっとガンゴートリーに近かったことであろう。

地球温暖化によりヒマラヤの氷河は急速に減少している。ヒマラヤでは氷河の形成がモンスーンの時期の降雪に依存している。亜熱帯地域にありながらヒマラヤの高山だけは夏場でも雪になる。

しかし,地表付近の温度が少し高くなると,雪は雨に変わってしまう。冬の時期にはほとんど雪は降らないので,夏場の雪が温暖化により雨に変わると雪の供給が急速に減少する。すでに,この現象はヒマラヤ全体で発生しており,アルプスに比べると2倍程度の速度で氷河が縮小している。

ヒマラヤ山系の氷河はアジアの水がめとなっている。黄河,長江,メコン,ブラマプトラ,インダスなどアジアを代表する大河はヒマラヤの氷河を水源としている。氷河の減少は将来のアジア各地の水事情の悪化,穀倉地帯の危機を意味している。

すでに,地下水の低下が著しいインドではさらに深刻となる。そう遠くない将来,氷河から水の供給が途絶えると,ガンガーが雨期のみの季節河川になってしまうことも十分に考えられる。

ガンゴトリーを紹介する映像では冬期は交通途絶となるので無人になると紹介されていた。現在は交通事情は多少良くなっているかもしれないが,やはり降雪があれば交通途絶となるのだろう。

そのようなところが聖地となったのはひとえにガンガーの源流であったためであろう。おそらく300年前には氷河の先端がちょうどガンゴトリーあたりにあり,そこからガンガーが流れ出る場所であったことだろう。

そして,生まれ出た流れは小さな滝となって落ち込み,狭い回廊に吸い込まれていく。ガンガー伝説を思わせる地理的条件がそろっていたので,この地にやってきたサドゥーは聖地を感じたのであろう。

現在でも1年中人々が居住する村はかなり標高の下がったところにしかなく,300年前のサドゥーにとってはまさしく巡礼の道の果てにある聖地であったことだろう。現在は夏場に限りアーシュラム,宿泊設備,バザール,土産物屋は立ち並んでいるが,聖地の趣きは失われていない。

聖地の中心にあるのはガンガー女神を祀った寺院である。ここが女神の本家のようなものである。近郊の各村にはそれぞれのガンガーのローカル女神が祀られており,村人はローカル女神を背負ってこの地にやってきて,本家の女神の祝福を受ける儀式を行う。その儀式に立ち会うことができたのは幸運なことであった。

また,ガンガーの聖地で沐浴することは巡礼者にとっては最大の喜びであり,手を切るように冷たい氷河の融雪水の流れに身を沈める。僕などは1分ほど足をつけるだけで耐えられなくなった。その水に浸かる信仰心の強さは僕にとっては美しいものに感じられる。

Goverment Rest House

ガンゴートリーは標高3000m,ガンガー源流の聖地である。僕の泊まった「Goverment Rest House」は8畳,2ベッド,机とイス,T/Sは共同,200Rpと高いのが難点だが,とても清潔で居心地はよい。もっとも,この部屋は290Rpもするのだが,3日間という約束で値引きしてもらった。

標高が高いので真夏でも夜はすごく冷える。おまけに近くに滝があるため,水煙の「打ち水効果」が加わり,夜間の冷え込みは相当なものであり,長袖を2枚,毛布を2枚重ねて寝ていた。

ガンガー女神にご挨拶

何はともあれガンガー女神の祀られている寺院に参拝する。女神は二本の竹ざおの上に腰を下ろした人の形に見えないでもない。日本のお神輿の文化に近いような印象を受ける。もっとも,日本のお神輿の源流は遠くインドにあるというのが定説になっている。

沐浴の風景

ここではガンガーは灰色の急流になっており,身を切るほど冷たい。コンクリートのガートは所々で川に対して凹字になっている。巡礼者はそこで氷のような氷河水で沐浴する。

手桶や銅の容器で聖なる水を体にかける。日中でもふるえるような寒さであろう。意を決して水の中に一瞬体を沈める。すぐに岸に上がり,乾いたタオルで体をふいて着替える。

しばらく震えが止まらない。僕もガンゴートリーの記念に足だけでもと思い,灰色の水に浸してみた。冷たいというより痛い,1分ともたなかった。まさに氷を入れた水である。

川岸の巨大な岩の上で行を行う

巡礼もしくは夏季居住者の子どもたち

ガンゴトリーの風景

ガンガー女神とローカル女神(その1)

ガンゴトリーにはガンガー女神を祀った寺院がある。それとは別に近郊の村にはローカル女神が祀られている。この日はローカル女神が,ガンガー女神の祝福を受けに来ていた。二人の男性が肩に担いでいるのがローカル女神である。

この儀式によりローカル女神は,ガンガー女神のパワーを授けられ,村の中の問題を解決してくれる。女神の首が傾く方向に問題や解決の糸口があるという。たしかに音楽に合わせて女神の首は左右に揺れ出した。

ガンガー女神とローカル女神(その2)

ローカル女神の儀式を大勢の見物人が見ていた。彼らは翌日にはいなくなったので,ローカル女神が祀られている村の人々であろう。ローカル女神の首振りが一段落すると,男性と女性に別れ,背中越しに肩を組んでステップを踏み出した。

参加者はみんな晴れ着で着飾っている。ローカル女神と村人たちの儀式は延々と続けられた。きっとこの村のローカル女神は十分な祝福を受けたことであろう。

ガンガー女神とローカル女神(その3)

ガンガー女神とローカル女神(その4)

夕暮れが近い聖地

早朝の聖地の風景

本家のガンガー女神がどこかに向かう

ガートの上で濡れた服を乾かす

早朝のガートで出会った人々

聖なる水に感謝する

振り向いた瞬間の表情

本家の女神はプージャのためにここにやってきた

聖地を後にする人たち

聖地で働く人たち

上流側に巡礼の道を辿ってみる

北には氷河が削った急峻なヒマラヤの雪山がそびえている。ここから本当の源流になるゴームクまでは,距離18km,標高差1200mの巡礼の道が続いている。

僕も試しに歩いてみたら100m上るだけでそれなりにハードであった。幸い国立公園のゲートがありそこで中断する理由ができた。

欧米人がネパール人のポーターに荷物を担がせてやってきた。ポーターに日当を聞くと1日120Rpだという。この日当で25kgの荷物を背負わせるのは酷というものだ。

国立公園入口のところで散歩は終了する

お昼時の聖地の風景

峡谷を刻む

女神の寺院を過ぎるとバギーラティ川は滝となって落ち込む。滝から水煙があがり空気を冷やすので周囲は特に寒い。なぜこの地が聖地になったのか考えてみた。深い峡谷の道をたどってくると滝があり,その上流は少し谷が開けており,氷河の先端から源流が流れ出している。

谷の向こうには雪を頂いた山々がそびえている。そのような地理的条件が,神話を生み,人々を惹きつけたのではないだろうか。夏の間にぎわう聖地も冬期は雪に閉ざされ無人になる。

滝の下流で川は深い峡谷を刻んでいる。川は固い岩盤を削るとともにその上部を磨いたため,岩は非常に滑りやすくなっており,移動には気を使った。上から覗き込むと垂直の岸壁の下は激流になっている。思わず足がすくみ早々にその場を離れる。

谷の斜面はヒマラヤ杉の森になっている。ほとんど岩だらけの斜面に根を張り,すばらしい景観を作り出した。対岸の森の上部には聖地と下界を結ぶ一筋の道がある。

谷が開けると雪山も眺望できる

昼下がりの聖地の風景

ガンゴトリーから戻る時の写真は少ない


ガンガー源流への道   亜細亜の街角   バンコク経由→成田