チャイティーヨは絶壁の上にある巨大な石の上に作られたパゴダとして有名である。そこは観光地でもあり,ミャンマー人の聖地でもある。パゴダのみならずその下の巨石にも金泥が塗られているので,両者が一体となって崖の上に乗っているように見える。
石の大きさは高さ8m,周囲は24m,重さは630トンもある。この巨石が決して落ちないのは,パゴダに納められたブッダの聖髪の力によると信じられている。パゴダの周囲には参道,門,広場,寺院があり,複合的な宗教施設になっている。
チャイティーヨはミャンマーの大観光地なのでツアーで訪問するのは移動の心配はない。しかし,個人旅行で訪問するのはちょっと骨が折れる。
左の地図でチャイトー(Kyaikto)から北北西に向かう道路か川のような線をたどると,州境のあたりにキンプンの町がある。ここまではバスが運行されている。
そこからチャイティーヨの上り口のヤテタウンまでは地元のトラックを利用しなければならない。当然,ヤテタウンからチャイティーヨまでの帰りのトラックの運行も確認しておかなければならない。
バゴー→キンプン 移動
前日にメインストリートにあるチケット・カウンター(歩道に机が置いてあるだけ)に行って,バスの時刻を確認し,チケット(2500Ky)を入手する。早朝からバス停に向かい,朝食をとりながら待つことにする。
07:00のバスは40分遅れで到着した。この国の路線バスの大部分は日本製の中古バスである。年代物のバスが多く,日本の古いバスの博物館状態になっている。自分の住んでいる地域のバスが見つかるとなんとなく親近感を感じる。道路状態は良好,土ぼこりが少ないので道路周辺の植物はちゃんと緑色をしている。ところどころにため池があり生活用水として使用されている。
バスはチャイトーを過ぎてキン・プンに到着した。足が確保できない個人旅行者にとっては,この小さな村がチャイティーヨ観光の基地になる。客引きに連れられてSea Sar に泊まることにする。
部屋はコテージ形式で4.5畳,1ベッド,T/S付きでまあまあ清潔である。周辺には番犬か野良犬かがたくさんたむろしており,ちょっと恐怖を感じるほどだ。料金は朝食付きで4$と妥当なところだ。
キン・プンからチャイティーヨの登り口になるヤテタウンまではトラックで行くしかない。4トントラックの荷台に8本の横木を渡し,一列6人,合計48人を乗せるという恐ろしい運搬手段だ。
料金は500Kyもする。満席で往復すると48,000Ky(52$)なのでいい稼ぎになる。道中はアップダウンとカーブの多い山道である。トラックは登りに備えて下りも全力で走る。何かにつかまって横Gにひたすら耐えるしかない。写真を撮ろうなどという気には絶対にならない。約1時間でジェット・コースターの終点に到着する。
欧米人の観光客の団体が到着すると・・・
ヤテタウンからチャイティーヨ(ゴールデンロック)までは,山道を1時間ほど歩かなければならない。ヨーロピアンの団体が到着すると,荷物の担ぎ屋とカゴ屋が集まってくる。山頂付近に宿泊施設があるので彼らはそこに泊まるようだ。
彼らの荷物は,担ぎ屋が背負いカゴに入れて上まで運んでくれる。体力に自信の無い人のためにカゴ屋もいる。45分ほど急な坂が続くので,年配者が疲れたら彼らの出番になる。
12時,地元の参拝客と一緒に山を登り出す
僕は道の脇にあるスイカ屋に立ち寄ったり,子どもたちや周囲の写真を撮ったりしてのんびり歩いて行く。巡礼の道を登りきると寺院の領域になる。その少し手前に入域料6$を徴収するチェックポストがあり,ここも逃れる術は無い。
13時,立派な門がありゴールは近いようだ
チャイティーヨの周辺は広い境内になっており,2頭の獅子像に守られた入口の門から先は,履物を脱がなければならない。広場の石畳は熱く焼けており,足の裏が弱い日本人にはつらいものがある。
ゴールデン・ロック
途中でビューポイントがある。ここがゴールデンロックの全景を写せる唯一の場所なので,写真はどれでも同じようなものになる。ここからは周囲の山々も見渡せる。一面緑に覆われた中に,茶色の引っかき傷のように見えるのは,ヤテタウンの広場と道路だ。
ゴールデンロックはミャンマーを代表する観光名所であり,同時に多くの参拝者を引きつける聖地でもある。今にも絶壁からころげ落ちそうな巨大な岩の上にパゴダを造ろうとした発想は秀逸である。
人々は岩とパゴダを金色に塗り信仰の対象にした。バゴー→キンプン(標高60m)→ヤテタウン(780m)→巡礼の道を経由して,ようやくここ(1055m)に到達することができた。しかし,ここも改装中でパゴダは竹で囲われている。どうも乾季の2月は工事の時期にあたるようだ。
近くによると金色の巨石はより大きな岩の上に乗っている。広場と大岩の間に小さな谷があり,小さな渡り廊下でつながっている。金色の巨石は大岩から1/3ほどはみ出している。
大岩の上は平らになっており,人々はそこに坐って祈りを捧げている。小さな金箔を手の届くところに貼っている人もいる。2本の竹ひごで紙幣を挟んだ供物が巨石の下に並べられている。
男性は渡り廊下を通りゴールデンロックに触れることができる。しかし,女性はゴールデンロックに近づくことができない。女性の参拝者は,少し離れたところで手を合わせている。
門の両側にある巨大な獅子像にご挨拶してふもとに下る
17時,キンプンの宿で一休みして散策に出かける
キンプンはチャイティーヨからだいぶ離れている田舎の集落である。ここからチャイティーヨ行きのトラックが出ているので,観光客や参拝者が集まる。そのため,お土産屋や食堂が並ぶ一種の門前市になっている。
とはいっても商店の端から端まで歩いても200mほどしかない。観光地だけあってこの界隈の物価は高い。ゆでとうもろこしが200チャットと近くの村の市場とは比較にならない。
商店街の前は広場になっており,その向こうに村の集落がある。広場は子どもたちの遊び場になっている。カメラを向けると笑顔で応えてくれるのでありがたい。デジカメの画像を見せてあげると大歓喜である。遊びを中断してカメラの前でポーズを決める。夕陽が沈みあたりが暗くなっても,子どもたちの遊びの時間は続いている。
翌朝,まずバスの運行を確認に行く
暗くなってから宿に戻るときはその辺にたむろしている犬たちを横目で監視しながらようやくコテージに到着する。僕が寝ようとしていると犬たちは一斉に吠え出した。誰か怪しげな人を見つけたのかもしれない。幸い犬たちはじきに静かになり,朝までよく眠ることができた。
緯度の低いミャンマーでも冬の朝6時はまだ薄暗い。トースト,目玉焼き,コーヒー,果物の朝食をいただく。仏教信仰の篤い国では,このような小さな村にも寺院があるようだ。目の前を托鉢に向かう僧侶が一列になって歩いていく。
このようなシャッターチャンスを逃さないため,いつもカメラを手元に置いている。光が足りないのでちょっとはっきしない写真になったが,よいシーンをものにすることができた。
朝の村を歩く
商店街から広場を横切ると村の入口がある。広場の周辺の商店では,僧侶たちがいくつかに別れて托鉢を受けている。ここでは小さな少年僧も年長者と同じエンジ色の僧衣を身につけている。村は東側にあるため入口では木漏れ日が田舎の村の平和な朝を象徴する光景を演出している。
村の通りには屋台が出ており,人々は焼きそばとお茶で朝食をとっている。小さな露店の市場もある。肉,魚,野菜と豊富な食材が並んでいる。花屋もあり黄色,赤紫の菊が切花になっている。きっと仏像に供えるためのものであろう。子どもたちも手伝っているので何枚か撮らせてもらう。観光客が訪れ,写真慣れしているのか,大人も子どももちゃんとフレームに収まってくれる。
子どもたちは学校に出かける
村の家屋は高床,板か竹を編んだ壁,ヤシの葉葺きである。そこでは子どもたちが学校に行く準備をしている。10才くらいになると自分で鏡を見ながら,タナカというこの国独特の日焼け止めといおうか化粧品を塗る。タナカは男女問わず使用されているが成人男性は使用しない。
その塗り方は千差万別,ファンデーションのように顔全面に塗る人もいれば,ほおと鼻にだけ塗る人もいる,模様を書く人もいる。でもこのくらいの塗り方では日焼け止め効果は薄いと思うのだが...。何人かの子どもに写真のお礼としてヨーヨーを作ってあげる。子どもたちはそれを持って学校に出かける。