亜細亜の街角
ラムサール条約
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ラムサールはテヘランの北,カスピ海沿岸にある小さな保養地である。1971年にここで「湿地および水鳥の保全のための国際会議」が開催され,「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」が採択された。この条約は開催地にちなみ「ラムサール条約」と呼ばれ,地球規模で移動する渡鳥を保護するため,国家間で協力して水辺の自然「ウェットランド(湿地)」を保全することを目的とした環境条約である。

湿地とは湖,池,河川,海岸などの浅い開放系の水域およびその外縁部にある湿原,沼沢地,干潟,氾濫原の総称である。湿地は水系の流量調節を行ない,水を浄化させるすばらしい能力を持っている。世界中にある湿地はそれぞれ特有の生態系をもち,多くの生物にとって重要な生息場所となっている。とりわけ,季節ごとに移動を繰り返す水鳥にとっては,必要不可欠の中継点あるいは繁殖場所になっている。

このような湿地は人類の生産活動にとって価値の無いものとみなされ,世界中で大規模な埋め立て,干拓により次々と破壊され,農地,牧草地,宅地あるいは工業地域に転換されていった。湿地のもっていた豊かな生態系が破壊され,人々はその影響を「渡り鳥の減少」という形で気づくことになる。

そこで地球規模で失われつつある湿地,特に国境を越えて旅をする水鳥たちの生息地である湿地の生態系を保全することが必要であるとの認識が高まり,国際的な条約が締結された。ラムサール条約は生物の多様性を保全する手段として,湿地という生態系そのものを保全するという画期的なものである。

ラムサール条約における湿地の保護は「湿地の賢明な利用」を基本原則としている。賢明な利用とは「生態系の自然財産を維持し得るような方法で,人類の利益のために湿地を持続的に利用することである」と定義されており,この考え方はすべての自然保護にも当てはまるものである。