Home亜細亜的世界|キルギスとイシククル湖



クルグス






イシク・クル(イシククル湖)

イシク・クルはクルグスタンの北西にある内陸湖である。イスィク・クリとも表記される。ウイグル語でイスィクとは「熱い」,クリとは「湖」の意味である。その名の通り,北緯42度の高地(標高1606m)にありながら冬でも凍結しないが,夏季でも水温は20℃ほどまでしか上がらない。湖は東西方向に182km,南北方向の幅はおよそ60km,周囲は688kmである。湖の最大深度は668m,面積は6,236 km2(琵琶湖の9倍),貯水量は1738km3である。

南と北を天山山脈およびその支脈に挟まれており,盆地状の土地に周辺から河川が流れ込んで形成されたようである。実際,周囲からたくさんの河川が流れ込んでいるがイシク・クルより流出する河川は認められない。水の透明度は20mを越えており,0.6%ほどの塩分を含む。イシク・クル周囲には多数の鉱山が存在するため,ソビエト連邦の時代には外国人の立ち入りは固く禁じられていた。シルクロードに関連する著作の多い作家の井上靖もこの湖を訪問したい切望したが,東西冷戦の障壁にいかんともできなかった。しかし,クルグスタンが独立した後は,貴重な観光資源して開放されている。

イシク・クルの周辺はシルクロードの一部となっていたようで,1300年前にインドに赴いた玄奘三蔵は天山山脈を越え,イシククル湖岸にたどり着いた。大唐西域記には次のように記されている。
「山を行くこと四百余里で大清池についた。周囲千余里,東西に長く南北は狭い。四面山に囲まれ,多くの河川はここに集まっている。色は青黒みを帯び,味は塩辛くもあり苦くもある。大きな波が果てしなく,荒い波が泡立っている。往来する旅人は供え物をして福を祈る。魚類は多いが,あえて漁をして捕獲するものもない」

湖底には多数の遺跡が水没していることが確認されている。湖畔の砂浜には陶器など湖底遺跡から流れ着いたものが打ち寄せることがある。NHKのシルクロードでも湖底の集落の跡が撮影されている。このような集落に人が居住していた頃,湖の水位はもっと低かったのである。その後,何らかの理由で湖の水位が上がり,集落は放棄されたのであろう。